文学研究科プレFDプログラムには、京都大学文学部 文学研究科に属する6つの学系全て(東洋文化学系、西洋文化学系、哲学基礎文化学系、歴史基礎文化学系、行動・環境文化学系、基礎現代文化学系)が参加しており、それぞれが提供するゼミナールとリンクする形で提供されています。非常勤講師として任用された参加者(講師)たちはゼミナールをリレー形式で担当し、さらに「事前ミーティング」、毎回の授業後の「授業後ミーティング」、「事後研修会」に参加することで、大学教員にとって必要な知識や技術に関する知見を養い、講義を担当するための心構えなどを総合的に身につけていきます。
小林敬・藤貫裕・田口真奈「授業実践と自己分析を核とする自主運営型プレFDプログラムの開発」『日本教育工学会研究報告集』2023 年2023 巻 3 号 より
事前ミーティングはプログラム参加講師全員とコーディネーターである文学研究科の教員、運営スタッフが参加します。
全員の最初の顔合わせの場であると同時に、参加者はプロジェクトの概要、授業の構成の仕方、授業の構成を手助けするためのツール「授業デザイン用ワークシート」などの各種ワークシートの使用法などについて学びます。
授業は他の参加者に対して公開されており、所属学系に関わらず自由に他の参加者の授業を参観することができます。したがって授業には授業担当講師以外に他の参加者(参観者)および運営スタッフが出席します。
講師は授業前に「授業デザイン用ワークシート」を作成し、メーリングリストで他の参加者に共有した上で授業に臨みます。授業の様子はは運営スタッフによって録画され、講師には授業後にその動画が渡されます。
担当授業が全て終わると、講師は1週間以内を目安に「リフレクションペーパー」を作成し、自身の行った授業について簡単なまとめと振り返りを行います。
また、講師は事後研修会前に自分の授業録画を視聴し、「授業振り返り用ワークシート」を作成します。
文学研究科のプレFD用に教育工学の専門家によって開発されたワークシートを用いて授業デザインを行います。
担当授業全てが終了した後1週間以内を目安に、授業直後の自身の手応えなどを踏まえて振り返りを行います。
毎回授業後に行われる授業後ミーティングでは参観講師と運営スタッフが授業についての意見を述べたのち、学生のリフレクションシートの紹介がされ、それらに対して担当講師が応答をします。検討会後半にはディスカッションの時間が設けられ、授業スキルから授業内容に関わる専門的議論に至るまで、幅広いトピックについて意見交換が行われます。
授業参観者は参観しながら「参観者用フィードバックシート」を作成します。また受講学生には授業後に「リアクションペーパー」(匿名)を作成してもらいます。講師はフィードバックシートやリアクションペーパーに書かれた学生の意見を授業にフィードバックすることで、インタラクティブに授業の改善を進めていきます。
他の講師の授業を参観しながら作成します。授業の構造や課題の出し方など、参観する際の視点を示す項目があらかじめ設けてあります。
授業評価アンケートに範をとり、授業の形式面と内容面で一定の評価を行う形のリアクションペーパーデス。受講生に匿名で記入してもらいます。
事後研修会では、参加講師が一同に会し、それぞれの講義を振り返り、経験を共有します。ディスカッションやグループワークを通じて、大学で講義を行う際の様々な課題を取り上げ、その解決方法について意見を交換し合いします。
グループワークでは、自身の授業の振り返り(録画視聴や振り返り用ワークシートの作成)を通じて見えてきた自分自身の課題などを共有したり、今回の担当授業とは異なる受講者層を想定した授業デザイン(コースデザイン)などを行います。
事後研修会の最後にプログラムを修了した参加講師に京都大学大学院 文学研究科長での文学研究科プレFDプログラム修了証が授与されます。
授業直後の振り返りと異なり、担当授業から一定時間を経てから自身の授業をより客観的視点で振り返るためのワークです。自身の授業の録画を視聴しながら、授業振り返り用ワークシートを作成します。
自身の授業実践を通じた課題や、今後授業で挑戦してみたいことなどをグループ内で共有し、今後の授業のアイデアを出し合います。
授業の規模や配当、学習者の意欲や難易度を設定し、学習目標や評価方法を設定したコースデザインを行うことを通じて、授業設計や評価方法について意見交換をし合います。
京都大学大学院教育支援機構が提供している大学院生向けのプレFD科目「教育能力向上コース」と連携し、希望者が高等教育専門の教員による「教授法」や「評価法」等のオンデマンド講義を視聴できるようにしています。
大学院教育支援機構教育コースのホームページは こちら
(2023年度参加者の事後アンケートによる)
・次年度から本格的に非常勤の仕事が始まるため、良い予行演習になった。様々な先生方の意見や工夫を伺えたのもよかった。
・自分で授業でできたこと、できなかったこと、全体の流れを振り返る形でリフレクションを行う機会はありますが、録画を見ることはなかなかないため、自分の癖に気づく機会となったと感じています。
・グループワークを通じて、さまざまなバックグラウンドやご経験をお持ちの先生がたのお話をうかがうことができ、今後に向けて、自分の引き出しが増えるような気がした。
・普段の授業実践の中では日々の実務に終われてしまい、振り返りの機会が持てないこともある中で、専門の授業に関して少しでもじっくりと振り返る機会をいただけて、とてもよかったと感じています。
・他の先生方の授業見学にも行けたらよかったのですが、なかなか余裕がなく参加できなかったことが悔やまれます。