[日本WS DAY3
亀沢・錦糸町]

テーマ:地域コミュニティから考える住商工混在地区の再設計

 亀沢・錦糸町が位置する墨田区は、住商工が混在した土地利用が特徴である。そして、このような多様な人々が近い距離で生活している地域では、長い年月をかけて強い地域コミュニティが形成されてきた。こうした地域の特徴をふまえ、近年再開発が進み、若年層や子育て世代、外国人の流入も多くみられる錦糸町駅周辺において、どのようなまちづくりが必要であるかを考えるのが当日の最終的な目標であった。

〇キークエスチョン

①住商工の機能が混在していることのメリット・デメリットとは?
→亀沢・錦糸町のまちあるきを踏まえて各自まちあるき中にワークシートに整理した。

 ②現在の錦糸町は何が魅力となっていて、何が不足しているのか?
→亀沢や他地域と錦糸町を比較しながら「暮らす」「働く」「訪れる」視点から考えた。
→「暮らす」「働く」「訪れる」で区切ったワークシートにメモしながらまちあるき をした。

③(★Final Discussion)
錦糸町駅周辺の特徴を活かしながらより「暮らし続けたいまち」「働き続けたいまち」「訪れたいまち」にしていくために必要な取り組みとは?



亀沢・錦糸町 概要

墨田区など東京の住商工混在地区では、歴史的に他地域よりも強い地域コミュニティが維持されている。江戸時代には“長屋”と呼ばれる集合住宅が密集しており、炊事や洗濯を行う人々が井戸の周りに集まることで地域の情報が共有された。また、木造の建物が密集していて火事が多く、燃え広がりやすかった江戸では、“町火消し”と呼ばれる町人による自治消防組織が設けられた。こうした地域コミュニティは近代化とともに“自治会”や“町内会(町会)”へと名称を変えた。墨田区には 2023 年 3 月現在で 171 の町会があり、防災・防犯・環境美化活動や祭りなどのイベントが行われている。

 亀沢地区(亀沢一丁目~四丁目)は墨田区南部、JR 総武線の両国駅と錦糸町駅の間に位置する地区である。江戸時代に整備された碁盤の目の町割りの上に、比較的小規模な住宅・工場・商店が混在しているのが特徴である。近年では、都心に近接しているなど生活利便性が高いため、移転・廃業した工場の跡地にマンションの建設が進んでいる。亀沢地区のまちづくり団体は 2005 年に設立された「北斎通りまちづくりの会」である。地域住民が主体となって北斎通りの街並みづくりと活性化について考え行動し、誇りと愛着を持てる地域とすることを目的とし、講演会やまちを盛り上げるイベント・祭り、まちあるきなどを行っている。 

 錦糸町は墨田区の南部に位置する地域である。錦糸町地区の中核をなす錦糸町駅には東京都と千葉県を結ぶ JR 総武線と、渋谷・永田町・大手町といった都心部と墨田区を結び、直通運転により神奈川県・埼玉県へも乗り入れる東京メトロ半蔵門線が接続し、2022 年度には 1 日平均で約 12 万人以上が乗車している(JR 東日本・東京メトロ HP より引用)。 駅周辺にはテルミナ(駅ビル)やマルイ・PARCO といったファッションビル、アルカキット錦糸町・オリナス錦糸町といったショッピングモールに加え、雑居ビルに商店や飲食店が軒を連ねる東京 23 区東部有数の商業地となっている。また、駅南側には場外馬券売場(WINS 錦糸町)、スナック・バー、キャバクラ、ラブホテルなどの娯楽施設が集積する歓楽街が形成されている。対して駅北側では 1990 年代以降の再開発によるオフィス・商業ビル・高層マンションの開業が相次いでいる。

訪問場所

ギャラリーMOMO

すみだ北斎美術館

・Co-lab墨田

・石原4丁目会館

大横川親水公園

・タワービュー通り 

・錦糸町PARCO

・ニュー錦糸町ビル

・すみだ産業会館

ギャラリーMOMO

概要・当日の様子

新たな視点から建物の価値を再発⾒した美術ギャラリー

▪集合住宅への建替えが進む中、古い⽊造の倉庫をモダンアートのギャラリーに転⽤

▪新旧の対⽐、時を刻んだ空間の中で美術作品が輝いて⾒えた

すみだ北斎美術館

概要・当日の様子

亀沢のランドマーク。⼊りやすさを重視した設計。津軽上屋敷跡地に建つ 美術館

▪柵のない広場のような公園、⽣活の中に美術を取り込んだ

▪敷居の低い、どこからでも⼊ることができる美術館、美術への距離感を近づけている

▪市井の⼈であった葛飾北斎の美術館としてみて議論した

▪津軽とのつながり、北斎が津軽ねぷた絵に影響を与えたことがわかった


Co-lab 墨田

概要・当日の様子

ものづくりの新たな拠点として印刷会社が始めたシェアオフィス

シェアオフィス、地域ネットワークを活かした新たなモノづくりを考える 

▪他業種とコラボした商品も見ることができた

石原四丁目会館

概要・当日の様子

蔵をイメージした集会所

▪亀沢地区の景観まちづくりの特徴を学んだ 

▪歴史的な建物や街並みもない。特徴的な⾃然の⾵景もない。普通の町の景観まちづくり

▪⾃分の町の歴史や暮らしを⾒つめ直し、⾒えてくる⽣活景

▪多様な⽣活者の中に地域への愛着と誇りを育て、景観を切り⼝に地域⼒を⾼める活動

▪普通の街で取り組む景観まちづくりから⾒えてくること

▪景観、防災、緑化、⾼齢化、⼦育てなど、都市が抱える課題が⾒えてくる

▪⽣活景を⾒つめ直し、協議を重ねることからコミュニティの再構築へ


大横川親水公園

概要・当日の様子

大横川親水公園は、東京スカイツリーにほど近い墨田区吾妻橋から錦糸町エリアの墨田区江東橋まで続く全長約 1.8km の区立公園である。大横川の大部分を埋め立てて 1993 年に開園した造られた親水公園であり、北端では北十間川、南端では堅川に接続している。

・大横川一帯は周辺の工場などからの地下水の汲み上げにより地盤沈下が激しく。低い土地では川から水が溢れると浸水する危険があった。そのため、大横川の北部を堰き止め、常時排水することにより水位を下げ、埋め立てることによって親水公園として整備された。  

タワービュー通り

概要・当日の様子

錦糸町駅北口から東京スカイツリーへと続く、スカイツリーが真正面に見える通り。2008 年からは区による街路整備が行われ、電線類の地中化や歩道の拡幅、バリアフリー化などが進められた。

 沿道沿いには国際化が進む錦糸小学校も見られ、新たな拠点となった北部の押上へと繋がる象徴的な道路を歩いた

錦糸町PARCO

錦糸町 PARCO は渋谷や池袋、名古屋、福岡など日本の大都市の中心市街地に店舗を構える若者向け商業施設「PARCO」が 2019 年に出店した店舗である。建物は長年錦糸町で娯楽施設を運営してきた「楽天地」が所有しており、約 100 店舗がテナントとして入居している。

客層の主なターゲットを定め、昼間は錦糸町のオフィスワーカー、夜間は周辺地域の居住者が利用する場所として、ファッション・美容・コスメの店舗や子ども向けのスペース、クリニックなどが入居している。また 1 階には墨田区の人気飲食店が集まっており、地域の文化を反映させた施設づくりを行っている。実際に訪れた際も人が多く様々な要素が集まる商業施設であった


ニュー錦糸町ビル

ニュー錦糸町ビルは、江東橋地区の歓楽街に位置する共同ビルである。錦糸町では戦後、「ヤミ市」と呼ばれる露店が多く建ち並び、住民の生活を支えた。これらの露店の多くは道路を不法占拠していたため、GHQ の指示により露店の整理が進められた。東京都は、店舗経営を続けたい業者に対し、協同組合を結成し共同店舗を建設する場合には資金の融資や都有地の提供を行った。錦糸町では都電の車庫の敷地が提供され、長屋の共同店舗が建設された。

その後、共同店舗は建替えられ、現在のニュー錦糸町ビルになった。建替えの際に2階以上は共同住宅になったが、一階部分は店舗であり、建設当時と同じ屋号で営業を続ける店舗もある。 

周辺にも同時代からある建物が立ち並び、再開発された地区と比べると暗く、一人では歩きづらい空間となっていた。


すみだ産業会館

墨田区まちづくり調整課の立野さん並びに斎藤さんによって錦糸町まちづくりに関する説明がなされた。

 錦糸町の概要と歴史について触れた後、近年の都市計画上で述べられている錦糸町の位置づけや将来的な地下鉄第8号線の沿線に関して、近年の公共交通変化による街への影響を述べた。その後、錦糸町の現状の課題とポテンシャルを指摘し、錦糸町の今後を考えていくために2023年7月から計2回ワークショップを現在まで開催してきたことを述べ、サマリーディスカッションへと繋がる内容として、ワークショップで集まった意見の一部を紹介していただいた。


 サマリーディスカッション

 〇目的

・亀沢及び錦糸町のまちあるきを経て、住商工のまちづくりの特徴と課題を確認する。

・今後の錦糸町における変化をうけて、錦糸町のまちづくりをどのようにしていくべきか議論する。


〇ディスカッション結果まとめ

まちあるきで訪れたエリアを中心に錦糸町駅周辺のまちづくりに関して、暮らす要素と働く要素、訪れたい要素に分けて意見を出し合うことができた。まちに訪れた者として、外国人として、住んでいる人の身になって考えるなど様々な視点で多角的に議論することができた。働く人や観光客のための場所としてだけではなく、子育てを行う人など住環境に関しても、直前に訪れた亀沢の特徴を振り返りながら意見を出し合うことができた。発表後は、訪れた場所全体の特徴を整理するために亀沢と錦糸町両方の特徴に関して議論し合い、意見を整理することもできた。実際の様子を写真として以下に記す。