概念的・実証的・倫理的・社会構想的アプローチ
本プロジェクトは、「人間とは誰か?」という根源的な問いに、多角的かつ実践的に応答するために、以下の4つの柱からなるアプローチを採用している。
人間中心主義が前提としてきた「人間」という概念そのものを問い直す。動物・AI・サイボーグといった存在を手がかりに、「知性」「身体」「関係性」といった基本概念の再定義を試み、人間性の構造的特徴とその限界を哲学的・歴史的に明らかにする。
近年の科学的知見や技術の進展が、「人間観」にどのような変化をもたらしているのかを分析する。動物認知、AI技術、遺伝子編集などの最新動向を踏まえた実証的調査や市民意識調査を通じて、社会の変化を具体的に捉える。
人間以外の存在とどのように向き合うべきかという倫理的課題に応答する。動物の権利、AIにおける責任主体、サイボーグと優生思想といった論点を扱い、共生に向けた倫理的原理と制度的配慮の可能性を探る。
再定義された人間像をもとに、50年後の共生社会のビジョンを構想する。多種共生・多様知性・多様身体をキーワードに、制度・都市・教育・福祉といった領域における新たな設計の方向性を提示し、社会的実装の可能性を検討する。
文献調査・技術分析・倫理的議論・市民対話をつなぐ
本プロジェクトでは、「人間とは誰か?」という問いに立体的に応答するため、文献調査から市民対話に至るまで、段階的かつ相互補完的な研究手法を採用している。
まず初めに、哲学・倫理学・科学技術研究などの文献を精査し、動物・AI・サイボーグに関する思想的背景と問題構成を整理する。とくに1970年代以降に展開された人間中心主義批判の系譜をたどりながら、「人間性」の前提がいかに形成されてきたかを明らかにする。
次に、動物認知や人工知能、身体改変技術といった先端的な技術動向を分析する。最新の研究や事例に基づいて、これらの技術が既存の人間観に与えている影響と、その実質的含意を明らかにする。
そのうえで、哲学的・倫理的な観点から、動物の権利やAIの責任性、サイボーグ技術の是非といった論点を検討し、共生のための倫理的枠組みを構築する。
さらに、こうした理論的検討にとどまらず、公開講座や市民参加型イベントを通じて、社会との対話を重ねる。オンライン調査や市民討議を通じて得られる直観や懸念の声を、研究にフィードバックすることで、制度や理念の構想をより公共的なかたちへと開いていく。
これらのステップは単なる順番ではなく、相互に行き来しながら展開される。理論と現実、専門知と市民感覚を架橋することこそが、本プロジェクトの大きな特徴である。