人間中心主義を超えて
公益財団法人トヨタ財団50周年記念助成プログラム助成プロジェクト
「人間中心主義を超えて:動物・AI・サイボーグから考える未来の人間社会像」
公益財団法人トヨタ財団50周年記念助成プログラム助成プロジェクト
「人間中心主義を超えて:動物・AI・サイボーグから考える未来の人間社会像」
人間社会はこれまで、「人間」の幸福を追求し、技術革新や経済活動を進める一方、その代償を自然環境や動物に押しつけてきた。
しかし、公害や気候変動、パンデミックなどの問題が示すように、人間中心の価値観による影響は、最終的に人間自身にも跳ね返っている。この現状から、人間以外の存在の犠牲を正当化する「人間中心主義」を見直す必要性が高まっている。
人間中心主義が疑問視され始めたのは、今から約50年前である。その発端となった論者であるP.シンガーは、この価値観が前提とする「人間」の特権性を批判し、その議論は動物倫理学として発展してきた。現代では、遺伝子技術やAI技術の進展によって、「人間」の特権性がさらに揺らぎつつある。これは、未来の人間社会を考える上で、「人間」のあり方そのものを再考することが不可欠であることを示唆している。
本プロジェクトでは、動物・AI・サイボーグの三つの視点から、50年前・現在・50年後の「人間」のあり方を通時的に再検討し、新しい人間像と多種共生社会の構想を提示することを目指す。
多種共生・多様知性・多様身体に向けて
本プロジェクトは、50年後の社会を「人間だけの社会」ではなく、「人間以外の存在と共に生きる社会」として構想する。その際、社会の基盤となるべき三つの理念がある。それが、「多種共生」「多様知性」「多様身体」である。
動物は、もはや人間社会の外部に位置づけられる存在ではない。感情や文化的行動をもつ多くの動物は、すでに人間と空間を共有し、相互に影響を与え合っている。50年後の社会では、人間と動物が共に生きる制度や都市環境が整備され、「他種との共生」が倫理的・制度的前提となることが求められる。
AIの進展により、「知性」は人間に固有のものとは言えなくなってきている。未来の社会では、人間・AI・動物といった異なる知性が、それぞれ異なる仕方で「理解し、応答する存在」として認識される。教育や労働、公共的対話といった社会の営みも、多様な知性を前提として再構築されなければならない。
サイボーグ技術や遺伝子編集の進展により、「人間の身体」はかつてよりもはるかに多様化する。義肢や人工臓器にとどまらず、身体機能の強化や変容が可能になるなかで、「自然な身体」と「人工的な身体」の境界は曖昧になる。未来の社会は、いかなる身体であっても尊厳ある生を可能とする社会でなければならない。
これら三つの理念は、もはや空想的な理想ではなく、すでに始まりつつある現実的変化に対応するためのビジョンである。本プロジェクトは、それらの理念を倫理・制度・哲学の観点から構想し、実装可能なかたちで提示することを目指している。