私たちは、生化学・分子生物学を基盤として、生命現象の分子機構を解明し、獣医療・医療への応用を目指しています。
がん治療、糖脂質生物学、機能性素材の探索という3つの研究領域を中心に、細胞から個体レベルまで幅広い研究を展開しています。
がん治療には、放射線療法、化学療法、免疫療法など、さまざまな治療法が用いられています。しかし、治療抵抗性や正常組織への障害など、克服すべき課題が残されています。私たちは、放射線や抗がん剤による細胞応答、酸化ストレス、細胞老化、腫瘍免疫に着目し、がん治療の作用機構と治療効果を左右する要因について研究しています。
また、がん細胞だけでなく、血管内皮細胞や免疫細胞などの腫瘍微小環境を構成する細胞にも注目し、治療効果の向上と副作用の軽減につながる新たな治療戦略の開発を目指しています。
xCT阻害剤であるスルファサラジン(SAS)の放射線治療増感作用
腫瘍組織ではxCT発現が増加し(A)、SASの投与により腫瘍内グルタチオンが減少し(B)、X線によるDNA損傷が増加する(C)。その結果、放射線の抗腫瘍作用が増感される(D)。
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0195151
糖脂質による生命制御機構
Glycosphingolipids in the Regulation of Biological Functions
糖脂質は、細胞膜を構成する重要な生体分子であり、細胞間の情報伝達や細胞の分化・増殖など、多様な生命現象に関与しています。しかし、その生理機能や疾患との関連には、いまだ解明されていない部分が多く残されています。私たちは、特にガングリオシドと呼ばれる糖脂質に着目し、細胞分化、造血、骨格筋の再生などにおける役割を研究しています。
遺伝子改変マウス、細胞培養、脂質解析などを組み合わせ、糖脂質が細胞機能や組織の恒常性を制御する分子機構の解明を目指しています。
糖脂質欠損マウスの肥満細胞における形態異常
糖脂質を有しない肥満細胞は、炎症性サイトカインなどを活発に放出するため、アレルギー性皮膚炎マウスモデルの病態が増悪する。
https://doi.org/10.1111/febs.16806
新規機能性素材の探索・応用
Discovery and Application of Novel Bioactive Materials
自然界や生体内には、これまで十分に解明されていない生理活性を持つ物質が数多く存在しています。こうした物質の機能を明らかにすることは、新たな疾患予防・治療技術の開発につながる可能性があります。私たちは、天然物、微生物由来の生分解性高分子であるポリヒドロキシ酪酸、低温プラズマ活性化溶液、幹細胞培養上清などに着目し、それらが生体に及ぼす作用を研究しています。
特に、代謝、免疫、酸化ストレス、細胞老化などへの影響を細胞・動物モデルで解析し、がんや加齢関連疾患をはじめとするさまざまな疾患への応用可能性を検討しています。
海洋細菌由来のポリヒドロキシ酪酸による抗肥満作用
肥満マウスにPHBを給餌すると、摂餌量を減らすこと無く、脂肪酸代謝が活性化する。結果として、腹腔脂肪の減少や脂肪肝による肝障害が抑制される。
https://doi.org/10.1096/fj.202301191R