参 考 書
随時,追加します。それぞれの本に対するコメントは近々に掲載します
解析学
解析入門,田島一郎,岩波叢書
大学に入って間もないころ,ε-δが理解できなくてショックを受けたのだが,誰からか田島一郎先生の『イプシロン-デルタ』(共立ワンポイント双書)がわかりやすいと聞き,購買部で購入した。大学生用の本でも,こんなに噛み砕いたものがあるということに安堵しつつも,なにか気恥ずかしい思いがした。上に記した『解析入門』も『イプシロン-デルタ』と同様にとても丁寧に書かれている。高校からの接続を意識しながら,スムーズに大学数学に移行できるよう配慮された良書であると思う。もちろんε-δだけでなく,積分,一様収束あたりまで書かれている。
直観世界からの微・積分入門,大森英樹・吉岡朗,遊星社
微分積分読本 1変数 / 続 微分積分読本 多変数,小林昭七,裳華房
軽装版 解析入門 Ⅰ/Ⅱ,小平邦彦,岩波書店
数学科に入学して間もない頃,数学科の学生なら皆,『解析概論』(高木貞治 岩波書店)を読むべきだ,という話を聞いたのだが,その流れでこの本も買ったような気がする。教室で指定されていた教科書は『微分・積分教科書』(占部実 他 共立出版)で,やや簡素な本であったので,実数の連続性など深く掘り下げたい箇所にであったときにお世話になった。上記の教科書も含め,易しめの本では省かれていることも,本書では丹念に書かれている。日本語で書かれた解析学の本の中では,最も手厚いものの1つだと思う。
線型代数学
線型代数[改訂版],長谷川浩司,日本評論社
線形代数学(新装版),川久保勝夫,日本評論社
線型代数入門,齋藤正彦,東京大学出版会
学び始めた頃は,抽象性の高さに戸惑ったが,幾何学的な色彩を感じるようになってから好きなった分野である。本書は,学生時代,教室で指定されていた教科書である。記述に無駄がなくスマートな反面,丁寧というわけではないので(具体例はたくさん載っているけれど),腰を据えて読む必要はあるだろう。ある程度,俯瞰できるようになってから再読すると,構成がすっきりしている点に美しさを感じたりする。上に挙げた『線型代数』(長谷川浩司 日評)のような親切さはないのだが,付録(多項式,ユークリッド幾何学の公理,群および体の公理)が充実している点はありがたい。
幾何学
曲線と曲面の微分幾何,小林昭七,裳華房
初めての自主ゼミで使用した本。後の指導教官・大森英樹先生が付き合ってくださった。大森先生は研究者として一流であったが,教育者としても慧眼の持ち主であった。この本は微分幾何の初歩が丁寧に書かれており,初学者にとっての好著である。幾何に興味のある学生は一度手にとってみてほしい。改訂の際に直されたか確認していないが,はじめの方の証明に誤りがあった。大学の教科書には時々誤りがあり,それは大学進学後に驚いたことの1つであった。本書の誤りを見つけたのはゼミに参加していた同級生で,大いに刺激をもらったことを覚えている。
多様体の基礎,松本幸夫,東京大学出版会
トポロジー:柔らかい幾何学,瀬山士郎,日本評論社
幾何学の見方・考え方,大森英樹,日本評論社
座標幾何学―古典的解析幾何学入門 ―,竹内伸子・村山光孝・泉屋周一,日科技連出版社
解析幾何学,矢野健太郎,朝倉書店
ベクトル解析と幾何学,坪井俊,朝倉書店
時空の幾何学,キャラハン,シュプリンガーフェアラーク東京
その他の数学の本
大学数学の教則,矢崎成俊,東京図書
数学と方法,野崎昭弘,東京図書
本質から理解する数学的手法,荒木修・齋藤智彦,裳華房
プロの数学,松野陽一郎,東京図書
線形代数と解析の初歩を中心とした本。非常に丁寧でわかりやすく,かゆいところに手が届く。線形代数や解析の本はもう自分には必要ないかなと思っていても,この本を立ち読みしたら買わずにはいられなかった。こんな授業ができたらどんなにいいか。「なるほど! とわかる線形代数」,「なるほど! とわかる微分積分」,「総合的研究 記述式答案の書き方―数学I・A・II・B」も買ってしまった。
このような先生が勤めているのが開成学園の凄みと言えよう(栄光学園にもいるけれど)。
数学の作法,蟹江幸博,近代科学社
物理数学の直観的方法,長沼伸一郎,講談社ブルーバックス
この本を読んだときは衝撃的だった(こういうタイプの数学書を読んだのは初めてだった)。何に衝撃を受けたのか。1つは出版に至った経緯(詳細は本書をお読みください),もう1つは,著者が自分の直観世界をさらけ出していることに対して,である。自分の頭の中をさらけ出すことは,大変に勇気のいることだと思う。論理というオブラートで包んだうえで公開するのが普通だろう。数学が理解できたというのは,その数学的対象のイメージや例示ができる状態かと思う。この本には,著者の直観世界を通してではあるが,それらが直接書かれている。一般的な教科書の論理を追うことはできても,イメージができないという状態の人の助けになると思う。当初,通商産業研究社というところから出版されていたが,いまではブルーバックスの電子版にもなっていて手に入りやすくなっている。
数学教育関連
数学教育学研究ハンドブック,日本数学教育学会,東洋館出版社
教育工学を始めよう: 研究テーマの選び方から論文の書き方まで,S.M. ロス , G.R. モリソン 他,北大路書房
数学教育の恩師,清水克彦先生が翻訳の一部を担当している。博士課程時代,厳しく指導していただいたと思うが,その厳しさが嫌になることはまったくなかった。指導力を受け継いで県立大の学生に還元できたらと思う。タイトルの通り,教育工学がベースになっているが,広く「アカデミック・スキル」を学ぶ本としても有用であると思う。初歩から丁寧に書かれているため,学部生にぜひ読んでもらいたい。研究室に設置する予定。内容に比して非常に安価である。
統計・ソフトウェア
Rによる統計解析,青木繁伸,オーム社
リメディアル
装版 数学読本 1~6,松坂和夫,岩波書店
数学以外の本
喜嶋先生の静かな世界,森博嗣,講談社文庫
はじめに,短編集「まどろみ消去」に収録されている「キシマ先生の静かな生活」を読んだ。美しくて切なくて透明な物語。50歳を過ぎて大学に転じたが,この本を読んだときからアカデミック・ポストに就くことが頭のどこかにあったのかもしれない。長編化されて文庫になっていると知り,急いで買った。どちらもよいです。
うまく言語化できないけれど,切なくて目を瞑りたくなる。
栄光学園OBの養老孟司さんが文庫本の解説を書いています。
ライフハック大全,堀正岳,KADOKAWA
ブラックホールと時空の方程式,小林晋平,森北出版