異性をめぐる争いは武器形質の進化を促します。カブトムシの角やシオマネキの鋏脚は、オス同士がメスをめぐって戦う際に用いられる典型的な武器形質です（Emlen 2008）。相手への攻撃に用いられるという点で武器形質の機能は共通していますが、興味深いことに、その形態は極めて多様です。例えば、カブトムシの角はフォーク状から槍状まで種によって様々な形態を示します（McCullough et al. 2014）。

形態の多様化プロセスを解明するために、環境が形態の進化に与える影響について私は調べています。とくに、機能的アプローチ（Irschick et al. 2007）を駆使して、「かたち」が繁殖や生存にどのように役立っているのか検証しています。

カブトムシ T. dichotomus は優れたモデル生物です。低コストで大量入手可能で飼育が容易であり、通年研究や正確な発生観察が可能です。ゲノム解析も進んでおり、23,987の遺伝子が同定されています。これらの特性により、発生生物学、生態学、行動学、バイオミメティクスなど幅広い分野で活用されています（Morita et al. 2022）。 

本種は優れたモデル生物でありながら、野外観察が容易です。そのため、観察と実験を組み合わせた探索的研究に適しています。進化生態学における新たな知見の獲得を目標に、探索・仮説検証の両側面から本種の生態調査に励んでいます。

依頼に応じて、昆虫観察会や標本作成教室で講師を務めます。参加者に昆虫の生態や観察技術をレクチャーするのが主な役割です。自然と触れ合う機会が減った昨今、この活動を通して子どもたちに自然へ関心を持ってもらえれば幸いです。社会へ研究成果を還元することを意図しています。

カブトムシの生態や飼育方法に関する専門的な情報を提供します。過去には、テレビ番組のフィールドワークに同行し、無線追跡など専門的な観察を行いました。波及効果の高いメディアへ露出することで、生物学の魅力や自然の不思議さに関心を持ってもらうのが狙いです。