はらななか試展(Ⅰ) 小作品展

はじめに

「はらななか試展(Ⅰ)小作品展」では、作家、はらななかがこれまでに製作した絵画作品のなかから、F8号未満の小さなキャンバスなどに描かれた作品を展示します。愛着を持つ動物や風景等のモチーフを、優れて独特な色彩感覚で描く、はらななかの小作品との出会いを、ぜひお楽しみください。

表紙作品:ハーティー【4】(128×180mm/アクリル,パステル/2023)

概要

はらななか試展(Ⅰ) 小作品展


会期|2024年7月5日(金)~8月31日(土)

              上記会期中の金・土のみ開館(日曜休館)

開館|金:16:00~20:00

          |土:12:00~20:00

会場|フリースクールラック/新潟県加茂市駅前4-14 1F

            (コーヒー&レストラン ピノキオのビル1F)

   ※駐車場はありません。近隣の駐車場等をご利用ください。


入場料|無料(予約不要)


出展者                      |はらななか
プロデューサー|長澤慶太



はらななか在廊予定日|

・毎土曜 13:30〜14:30  (他日程未定・決定次第随時更新)


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プロフィール|はらななか

 

2003年生まれ。幼い頃から学校に馴染めず小学校時代に不登校となる。同時期に通った適応指導教室にて指導員から水彩画の指導を受け、以降、主に水彩画での創作を続ける。中学校在学中に統合失調症を発症し、新潟県長岡市の精神科に入院。病状が落ち着かず、高校卒業までに閉鎖病棟で3度の隔離を経験する。中学校を卒業した2017年以降、一切の創作をやめるが、2022年頃から再び創作活動を開始。

軽度の知的障害や発達障害のほか、統合失調症をはじめとした精神疾患を抱える障害当事者であり、妄想や解離等の症状の渦中で絵画作品を創作することがある。作風は、製作された時期や、それを描く際の症状によって異なるが、はら自身は、症状の最中に描いた絵に過度な意味づけをされることを嫌い、症状のない状態で描かれた絵を〈自分の色で描かれた絵〉と自認し、障害の有無から自身の作品を評価・批評されることを嫌う。

絵を描くことついて|はらななか(作家)

 

私はとっても最高な絵をたくさん描いています。

どんな絵を描いているかというと、私が大好きで大切にしているものとか、キラキラしているけど、もっとキラキラ輝かせてあげたいものとかを、大好きな色でかわいく描いています。とっても大事に飼っていた動物とかが多いです。

どうしてその絵を描いているかというと、また会いたいからです。

大好きだったしんじゃったペットとか、大切にしていたけどもうなくなってしまった遊具とかも、私が描けばまた会うことができちゃうし、これからはずっと紙の上で生きていけるからです。そして描いていると、たまーにだけど、いいね! って言ってくれる人があらわれます。そしたらもっと紙の中の子たちは、キラキラ生きることができちゃうから、それは、とっても素敵なんです。

私はこれから、ずーっと楽しく描き続けていきたいです。

絵を描くことは、とっても楽しいです。

もっとみんな描いてほしいです。

私が使っている絵の具たちも最高なんです。なにが最高かというと、紙の中の絵をとってもキラキラ輝かせてくれます。水彩絵具はたくさん重なれば重なるほどきれいになるし、かさねた色が下の絵の具の色であわさって、どんどん大好きな子たちが生きていきます。絵の具は絵を描くときの大切な仲間です。


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はらななかの作品について(抜粋)|長澤慶太

 

はらななかは、新潟県加茂市に在住する20歳の画家である。軽度の知的障害や精神疾患、学生時代のいじめ等を理由とした不登校の経験からくる「学校嫌い」を理由に他府県の芸術大学等へは進学せず、独学での絵画製作を続けながら、現在は関東や関西での個展の開催を準備している。


作品の特色は、優れて特徴的な色彩にあり、それは大学病院を含めた複数回の診察において診断された独特な色覚異常に由来する。作品のモチーフのほとんどは自身が愛着をもつ動物や風景であり、観念的な抽象に傾くコンセプチュアルな作風は好まない。一方、精神疾患に由来する希死念慮や解離の状態において、幻視として見られた人物の肖像や風景などを描くいくつかの作品では、抽象的かつ誘惑的に幻視の対象が表現されることも多く、ある種の実験的な作品がもつ印象に似たものを鑑賞者に感じさせる。症状下で描かれた作品は、希死や幻視への抵抗として無我夢中で描かれているためか、創作の過程の記憶が残らないことも度々であり、作品の質や内容は平時と症状時と比較して様々に異なる(なお、言うまでもないが、それは過去に「障害者アート」「アウトサイダー・アート」「生の芸術」などと呼ばれることで社会に利用されてきたある種の活動とはどこまでも無縁である)。


生来的な疾患や過去の経験による、今日的な言葉でいわれる「生きづらさ」への抵抗、そして精神疾患を由来とした希死念慮や解離、自死を促す幻聴や幻視への抵抗として、これまで創作を続けてきた彼女は、作品をつくる理由を「生きるため」であり「死なないため」であると語ったことがある。そのつぶやきは、精神科医である中井久夫のエッセイにて紹介された荒川修作の言葉「俺は、死なないためにやっているのだ。芸術? そんなのんきなものじゃない」を思い出させる。

彼女の作品の素朴なモチーフや前時代的なマテリアルによる創作は、おそらく現在の現代芸術における言説の上では評価の対象になりづらいだろう。しかし「死なないため」であり「生きるため」にある彼女の創作は、そもそも同時代の流行や今日の言説の風土による批評を必要としていない。自身の目によってのみ捉えられる独特で豊かな色彩と戯れながら、現在の潮流における言説とは無縁の創作を続ける彼女は、その意味における「アウトサイダー」として自身の表現を追求しながら、生きるためであり死なないためという意味においてのみの「生の芸術」を模索している。




動物【5】プレゼント(297×420mm/水彩/2023)

風景【1】C1小児病棟(190×268mm/水彩,パステル/2023)

自画像【2】(364×515mm/パステル/2023)

動物【1】うさぎ/ぱんちゃん(364×515mm/水彩,青墨,アクリル/2023)

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