イベント

人工主体との共存・オンラインセミナー 

2023年秋シリーズ(2023年9月〜11月)

第1回 立花幸司(千葉大学)「人工主体と共存する社会に生きる人間を見つめ直す

2023年9月11日(月) 16時半〜18時、登録はこちらから

要旨:人間と人工主体の共存は、人工知能の発達により今後の社会で本格的に実現されていくと考えられる。このとき私たちは、社会の構成員となる人工主体の望ましいあり方や、そうした人工的な知的存在者たちとの望ましい関わり方を考えざるをえなくなる。この講演では、そうした将来を見据え、人工知能の社会実装に関するいくつかの具体な議論をみながら、人工主体を人間に役立つよう上手く社会に位置づけようとする取り組みが見落としていると思われる両者の隔たりを、徳倫理学の観点から検討する。そして、この両者のあいだの隔たりを自覚しながら共存する道を探ることが重要であることを指摘する。

第2回 成原慧(九州大学)「人工主体との共存に向けた法的課題」

2023年9月29日(金)10時半〜12時、登録はこちらから

要旨:AIやロボットなど「人工主体」となりうる存在との共存に向けた法的課題について概観する。まず、法学における「主体」の意味と条件について概観し、AIやロボットが「人工主体」となる可能性について検討する。次に、AIやロボットなど「人工主体」となりうる存在と人間との共存のあり方について、AI研究や法学、そして哲学のキーワードとなってきた「自律」という概念を手がかりに考察する。最後に、「人工主体」となりうる存在と人間との共存のための法とアーキテクチャのデザインのあり方を青写真を示したい。

第3回 西條玲奈(東京電機大学)「バーチャル美少女は女性ではない」のか?— 人工物のジェンダーについてのフェミニスト存在論的な考察」

2023年1013日(金)16時半〜18時、登録はこちらから

要旨:AI・ロボット製品やアバターなどの人工物女性的デザインに対するフェミニズムから批判がおこなわれてきた一方で、性的マイノリティの実践に立脚した、二次元キャラクターやアバターの例をもって「バーチャル美少女は女性ではない」という主張が存在する。これらは一見「人工物にジェンダーを帰属する」「人工物にジェンダーを帰属すべきでない」という対立する主張が同時に述べられているように見える。本発表では、インターセクショナルなフェミニズムの立場から、「バーチャル美少女が女性ではない」がなりたつとすれば、それは、あるコミュニティで、社会の支配的なジェンダー規範とは異なるジェンダー規範が成立する場合だとする分析を行う。

第4回 堀内進之介(立教大学)超高齢社会におけるイネーブラー技術の意義:ヒューマン・エンハンスメントの視点から」

2023年10月24日()16時半〜18時、登録はこちらから

要旨:先進的なAI技術の発展は、人々の認知能力や身体能力を補助する可能性を秘めている。特にイネーブラーAIロボットは、社会的タスクから私秘的な活動まで幅広い分野で補助者としての役割を担うことが期待される。本講演では、超高齢社会におけるこれらの技術の意義を中心に議論する。特に、生活のサポートが必要な人々を優先的に支援すべきだという立場から、第一に、イネーブラー技術の適用の必要性と限界を探る。そして、第二に、ロボットを人間と同等の地位に置くことのリスクと倫理的問題を考察する。この講演を通じて、技術の進歩と超高齢社会におけるそれらの適切な利用についての理解を深めることを目指す。


第5回 竹下昌志(北海道大学)「AIと一緒に道徳的に考える:AIを用いた道徳的意思決定の可能性」

2023年117日(火16時半〜18時、登録はこちらから

要旨:私達は道徳的に理想的な生活をしているわけではない。意志の弱さ、道徳について考える時間の少なさ、そして道徳という問題自体の難しさなど、私達の道徳的意思決定を損なう要因は多数ある。近年のAIの発展によって、道徳的な判断を出力するAIが登場しつつある。本発表では、既存のAIや将来登場するであろうAIが、私達の道徳的意思決定をサポートすることについて、AIと哲学の両方の観点から検討する。AIの観点からは、現状のAIの技術レベルについて紹介し、今後の発展について検討する。そして哲学の観点からは、どのようなAIが道徳的意思決定をサポートする上で望ましいのか、またそもそもAIによって道徳的意思決定がサポートされること自体が望ましいのかを検討する。

6回 西真史・Wenzel Menhert(Austrian Institute of Technology)「TechEthos:先端技術の社会的影響・倫理的課題をいかに協働して解決するか」

2023年11月21日(火)17時〜18時半、登録はこちらから

要旨:身近になりつつある先端技術(人工知能・仮想現実、ニューロテクノロジー、気候工学)は私たちの心理的、社会的な生活に影響を及ぼしうる。将来、技術の実際の応用が未だ不確実な中で、どんな社会的影響・倫理的課題が出現するのかを考え、研究開発倫理や科学技術政策に反映することは喫緊の問題である。しかし、技術の影響を最も受けることになる市民がこのプロセスに参加する機会は少なかった。分野や知識の垣根を越えて技術倫理を考え、実際に反映されることがTechEthosプロジェクトの目的である。この講演ではプロジェクトがいかにこの課題について協働的、そして創造的に取り組んできたのかを具体的な例を用いつつ紹介する。