今週のニュース Weekly News

10月7日 榊 晋太郎

季節も秋になってだんだんと涼しくなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。秋になると僕は、何となく博物館に行きたいなあと思うことがしばしばあります。博物館というとテーマがいくつかあると思いますが、僕が好きなのは恐竜博物館ですね。(小さい頃は恐竜が大好きな少年でした。)

そんな恐竜に関連してこんな報告があったので、ご紹介します。

記事URL:https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/clip/20210929_g01/

掲載論文;A new carcharodontosaurian theropod dinosaur occupies apex predator niche in the early Late Cretaceous of Uzbekistan

掲載誌:Royal Society Open Science

恐竜といえば真っ先に思いつくのはティラノサウルスかと思いますが、彼らとその仲間が生態系の頂点に君臨していたのは恐竜が地上を支配していた白亜紀の8000万年のうちの最後の2000万年ほどだといわれており、それより前の時代はカルカロドントサウルスというあまり聞きなれない恐竜の時代だったようです。この記事の研究ではカルカロドントサウルスからティラノサウルスへ覇権がどのように移り変わったのかを明らかにするということを目的としているようです。

さて、今回は恐竜に関する研究を紹介しましたが、恐竜の話もそうですが、古代の生き物の研究にはロマンがありますよね。恐竜たちがどんな環境で、どんな生態系の中で生きていたのか、今は存在しない生き物たちだからこその研究の楽しさがあるんだろうなと思います。皆さんも、恐竜博物館に行って数千万年前の世界に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

6月14日 久保田壮哉

はじめまして、12月から本研究室に配属されたB4の久保田です。

最近、引っ張ると頑丈になり、離すとすぐに元の状態に戻る高分子の「自己補強」ゲルを開発した、と東京大学の研究グループが発表した。というニュースが報じられました。

https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20210610_n01/

このゲルは強い力が繰り返し働くとだんだん元に戻りにくくなる、という難点があった従来の高強度とは異なり、強靭性と回復性を兼ね備えているため、繰り返し強い力が働く人工靭帯・関節といった人工運動器など、広い応用が期待できるそうです。

今後の展開にも注視していきたいです。

5月31日 松田佳保里

こんにちは、12月から本研究室に配属されたB4の松田佳保里です。

5月26日に皆既月食という一大イベントがありましたね。残念ながら名古屋から観測することはできませんでした。ということで今回は天文学に関してのニュースです。124億年前の観測史上最古の渦巻き構造をもつ銀河が5月21日に発見されました。

今観測されている銀河が124億年前のもの、つまり今この瞬間に同じ宇宙には観測されているものの124億年後の銀河が存在するって本当にスケールの大きな話ですよね。向こうからはまだ太陽もまだできていないものに見えるわけで。(太陽ができたのは50億年前)

宇宙が誕生したのが138億年前なので、少なくとも宇宙が生まれて14億年あれば渦巻き銀河ができるということが分かりました。従来は「渦巻きは星が生まれた後に後々にできる」と考えられてきたため、星が活発にできる前から銀河が渦巻き状になるというのはとても大きな発見だそうです。この銀河を継続していくことで銀河がどのように成長していくかも分かるかもしれないと考えるとワクワクしますね。私も頑張ってあと60億年くらい生きて変化を見てみたいです。

https://www.nao.ac.jp/news/science/2021/20210521-alma.html

5月10日 野村隼平

カリフォルニア大学のチームがほぼ完全に生分解されるポリエステルの開発に成功したという論文がNature誌に載っていました。

マイクロプラスチックやナノプラスチックは現在深刻な環境問題であり、微生物によって分解される生分解性プラスチックの利用は解決策のひとつとして期待されています。しかし、これまでのものでは、産業用の堆肥化施設が必要であったり、完全には分解されず結局マイクロプラスチックが形成されたりという問題があったそうです。今回開発されたものでは、標準的なコンポストで数日のうちに分解され、マイクロプラスチックの形成もかなり抑制されるとのことです。

マイクロプラスチック・ナノプラスチックの問題はゼブラフィシュなどを用いた論文でも度々目にします。プラスチック汚染解決への取り組みがより一層進むといいなと思います。

https://www.natureasia.com/ja-jp/nature/highlights/107402

https://www.nature.com/articles/s41586-021-03408-3

4月26日 仲井理佐子

最近、コロナウィルスの感染防止のため家にいる時間が長くなり人々の飲酒量が増えたというニュースを目にします。

アルコールを摂取すると、肝臓でALDH2という酵素によってアルコールが分解され、代謝物が生じます。その代謝物に含まれる酢酸塩が血流を介して脳に運ばれ、GABAを介したシグナル伝達によって運動機能障害が起こると言われています。

しかし、2021年3月に発表された論文では、マウスにおいてアルコールを分解するALDH2が小脳のアストロサイトという細胞にも存在していて、脳中のALDH2を除去するとアルコールを摂取しても酢酸塩レベルが上昇せず、運動障害が起こらなかったとのことです。

もしヒトでも同様の仕組みでアルコールが代謝されているとすると、アルコールによる運動障害の治療方法を見いだせるかもしれません。

コロナ禍で状況が変わってしまったとはいえ、お酒は楽しくほどほどにしましょう。

参考文献 Brain ethanol metabolism by astrocytic ALDH2 drives the behavioural effects of ethanol intoxication | Nature Metabolism

4月19日 勝田哲史

M1の勝田です。

先週頃から授業やセミナーが始まってきました。オンラインだったり対面だったりで、少し慌ただしい感じです。

徐々に新型コロナウイルスワクチンの接種が始まってきているようです。僕の祖父母や、部活周りの医学生達は来月接種するらしく、接種会場がどうたらとかの話をしていました。

そんな中、新型コロナウイルス流行下で10歳未満のライノウイルス検出率が増加したという論文がでていました。

https://doi.org/10.1111/irv.12854

ライノウイルスはいわゆる「風邪」を引き起こすウイルスとして知られています。宿主細胞膜由来のエンベロープをもたないことから、アルコール消毒が効きにくいです。対してエンベロープをもつインフルエンザウイルスの検出率は大幅に低下しています。

基本的な感染対策はどのウイルスに対しても有効であると思っていましたが、感染様式やウイルスの安定性が異なると話が変わってくるのでしょうか。データが2020年9月分までのものなので、これ以降どうなっていくか気になります。

2021.4.12 吉田純生


春から動物形態学研究室に参加しました D1 の吉田です。

春になり農作も盛んになってきました。

農作物にとって大きな天敵に害虫がいます。

植物はこの自身を捕食する害虫に対して、代謝産物の一部使い毒として対抗をし、害虫はこの毒を無毒化する形質を獲得するという共進化を長い間行ってきました。

今月初めの Cell 誌で、害虫であるコナジラミは毒を分解する酵素の遺伝子を捕食する植物から水平伝播で獲得していることが明らかになりました。

毒を作る植物から毒を無効化するための遺伝子を貰って利用するとは、植物からすれば「してやられた」とも言える適応のメカニズムですね。

https://doi.org/10.1016/j.cell.2021.02.014

2021.4.5 飯田敦夫

令和3年度最初のWeekly Newsの更新です。

動物形態学研究室では、とあるアイデアの実証のためにデンキウナギを飼育しています。現時点では60cm水槽に1匹飼育で。

一見して悠々自適な一人暮らしを満喫しているデンキウナギですが、実は自然下では複数匹の協力プレイで狩りを行うことが報告されました。

Ecology and Evolution誌に掲載された論文によると、2-10匹程度のデンキウナギが浅瀬に小魚を囲い込み、一斉放電で一網打尽に捕獲するとのことです。

このような社会的捕食(Social predation)は哺乳類ではよく知られるものの、魚類では稀な戦術とのこと。

飼育下では決してわからない、フィールドの面白さも常に意識して生き物に接していきたいと考えています。

https://doi.org/10.1002/ece3.7121

2021.3.25 飯田敦夫

博士1名、修士2名、学士3名が学位を取得して卒業しました。

4年生の3名は修士課程に進学し、引き続き研究に取り込みます。

令和3年度も動物形態学研究室をよろしくお願いします。

2021.2.1 飯田敦夫

卒論シーズンに突入し、ホームページの更新が鈍くなっています。

研究室では本道教授の釣ってきた魚や、卒業生から送ってもらった食材で滋養をとりつつ、このシーズンを乗り越えようと研究に励んでいます。

また落ち着いたら、科学ニュースの紹介も再開しようと思っています。

2020.11.30 飯田敦夫

新型コロナウイルスの感染が広まり、SARS-CoV-2に関する研究が取りざたされて久しいですが、英国ブリストル大学の研究者(名古屋大学招聘准教授)による、感染メカニズムに関する論文がScienceに掲載されました。

https://science.sciencemag.org/content/370/6518/861

内容が革新的なのは当然ですが、この論文の報道が世に出た時、私は別の視点で釘付けになりました。

おそらく責任著者の一人は、私が名古屋大学在学時に所属していた同好会活動の先輩です。

当時の知り合いにも話題を振ったところ「おそらくホンモノだろう」ということで、約20年ぶりにコンタクトを取ってみようかどうか、決めきれないまま1ヶ月弱が経過しています。。。

ちなみに同好会のOBOGでは、古巣でもある京都大学の医学系研究所の講師と、関東の芸術系大学の准教授(物理)になった同期が把握できています。

今になって、案外とアカデミック志向の強い集団だったのかと思うような、そうでないような。

かと言って、理系でもなんでもなく(当時は)弱小音楽サークルでしたけど。


もう一つこじつけるなら、前職でゼブラフィッシュを使った血管形成に一環で、VEGF受容体としてのニューロピリン1に関心を持ったことが一瞬だけあり「ああ、あのNRP1か」とちょっとノスタルジックな気分にもなりました。

その取り組みは、論文にならず(できず)にお蔵入りしているので。。。

2020.11.16 野村隼平

海底に堆積した泥からDNAを抽出し、DNA量と漁獲量に対応関係があることがわかった、という記事がありました。

https://www.sankei.com/west/news/201105/wst2011050011-n1.html/ (産経新聞)

https://www.ehime-u.ac.jp/data_relese/data_relese-136525/ (愛媛大学)

環境DNAから水域にどういう種が生息するか調べるという話は聞いたことがありましたが、DNA量と漁獲量の対応関係を示したのはこれが初めてのようです。安定的に泥が堆積する水域であれば数百年単位でのモニタリング情報が迅速に得られるようです。

マイワシの漁獲履歴は300年以上前から記録が残っているらしく、当然このような利用の意図はなかったでしょうが、古くから記録を残してきた人たちは偉大だなと思いました。

2020.11.9 仲井理佐子

今まで、哺乳類は中生代末(約6600万年前)まで単独性の生活だったと考えられていましたが、同じ穴に複数世代の個体が棲んでおり集団生活をしていたとみられる中生代(7550万年前)の化石が見つかりました。

https://www.asahi.com/articles/ASNC25WSBNC1ULBJ001.html?iref=sp_tectop_feature5_list_n

これまで考えられていたよりも1千万年ほど前から社会性のある生活をする哺乳類が存在した可能性が示唆されたことになります。

この化石に含まれていた種はすでに絶滅していますが、恐竜が多く生きていた時代に体の小さな哺乳類が社会性のある生活をしていたことは、哺乳類が生き延びることができた一つの要因なのかもしれません。今後、中生代以前にも社会性のある行動をしていた痕跡のある化石が発見されたら面白いと思います。

2020.11.2 勝田哲史

秋になり、日が暮れるのが早くなってきました。

秋といえば、予防接種の季節です。というわけで、10/1よりロタウイルスワクチンの定期接種が始まったお話です。

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20200928-OYTET50006/

ロタウイルスはレオウイルス科のRNAウイルスで、感染すると急性の胃腸炎を引き起こします。

大人は感染を何度も経験しているため、免疫ができており殆どの場合症状が出ませんが、乳幼児では激しい症状が出ることが多く、日本における5歳未満の急性胃腸炎の入院の4~5割程度がロタウイルス由来だそうです。

日本では10年前くらいからワクチンの導入が始まり、副作用や費用対効果(厚労省のHPにお金の計算が載ってます)を検討して定期接種に至りました。色んな人の負担が減るといいですね。

ロタウイルスはインフルエンザウイルスと同様に分節ゲノムを持つので、他ウイルスとの分節ゲノムの交換がおきます。

(https://doi.org/10.1038/nrmicro.2016.46)

今後このウイルスがどのように変化していくのか気になります。

2020.10.26 山田 紗恵子

オランダの研究チームが人の喉の奥に未知の臓器を発見したという10/22配信のニュースです。

https://www.cnn.co.jp/fringe/35161316.html

鼻腔と咽頭がつながる部分の頭蓋骨の中に、未知の腺が隠れているのを発見し、詳しく調べた結果、解剖学的にも機能的にも新しい器官であることが裏付けられたようです。

これは前立腺がんの転移を調べる先端のスキャン検査で初めて見つかったようで、まだまだ人体には未知の部分があるのだと実感しました。今後も、さらなる技術の発展により、未知だった生物の機能が発見されていくのだろうと思うとワクワクしました。

2020.10.19 仲田 雛乃

日本で新種のエイが発見されたニュースです。

https://www.nishinippon.co.jp/item/o/648487/

鹿児島県の水族館で20年近く"トンガリサカタザメ"として飼育されていたものが

研究員の観察により実は別の種であると分かり発見されたそうです。

新しくついた名前は"モノノケトンガリサカタザメ"だそうです。


長らく染みついた考え方や思い込みを脱却するのはとても難しいと思うので、

既存種との違いに気づき、さらにその違和感を

「こういう個体もいるのだろう」という思い込みで処理しなかったのが

今回の新種発見のすごいところだと思います。

2020.10.12 飯田 敦夫

秋学期の開始に伴って、ウェブサイトでの論文紹介も再開します。

腸内細菌叢が宿主の様々な生理機能と関わっていることが知られて久しいですが、哺乳類の発生において最初の細菌叢がどのように発達するかは不明な点が多くあります。

帝王切開で生まれる子供では経膣分娩の場合と比べ、腸内細菌叢の発達に相違点が多く、様々な疾患リスクとの関わりが大規模コホート研究から示唆されていました。

2020年10月1日付でCellで発表された論文では、帝王切開で生まれた子供であっても、母親の腸内細菌(を含む少量の便)を移植することで、腸内細菌叢の発達が経膣分娩と同じようになることが報告されています(https://doi.org/10.1016/j.cell.2020.08.047)。

経膣分娩により腸内細菌が子供に受け渡される経路はまだよく分かっていませんが、帝王切開による将来の疾患リスクを軽減できる手段として、腸内細菌の移植が有用であることは大きな発見と言えるでしょう。

2020.8.24 飯田 敦夫

先日、本道教授から釣果のおすそ分けがあり、ラボに来ていたメンバーで解体して美味しく戴きました。

冷凍を経ていないマグロは味が濃く、刺身、丼、煮物、竜田揚げetc.の全てが最高でした。

食べきれなかった分は各々が持ち帰り、家族共々ご相伴にあずかりました。

2020.8.10 飯田 敦夫

先週、研究室で本道教授のお誕生日祝いでケーキを食べました。

夏休み期間のラボセミナー等のお休みに加え、昨今の感染対策で研究室には限られた室員だけが実験に来ている状況ですが、大学院入試や研究成果の発表に向けて少しづつ活動を進めています。

9月には院試も終わり、その時点での感染状況を見てラボセミナーの再開を検討する見込みです。

農学部の卒業研究の配属や、来年度以降の大学院受験や研究員としての参画の問い合わせは、いつでもメール等でお問い合わせ下さい。

2020.8.4 Atsuo Iida

Our colleague Ronald Tarigan has successfully presented a defense of his phD thesis.

His thesis is about a immune system against viral infection in bat cells.

He published the study in a specialized journal as first author .

https://doi.org/10.1016/j.bbrc.2020.04.060

He will graduate NU soon.

We wish his continued outstanding success.

2020.7.27 Thachawech Kimprasit

The epidemic of SAR-CoV-2, the virus that causes Covid-19 is still increasing over the world. Researchers in several countries are conducting several experiments to develop methods to rapidly detect the virus.

Taq DNA polymerase is one of the most commonly used enzymes in a polymerase chain reaction (PCR), but actually the enzyme is in the same family as the reverse transcriptase of some viruses in murine. In the right condition, Taq can also work as a reverse transcriptase enzyme (copying RNA into DNA).

The researchers of the University of Texas, U.S.A. found suitable conditions for using Taq as both DNA polymerase and reverse transcriptase. Then use the enzyme to modify a new qPCR technique, which is simpler, because it uses only one Taq enzyme. This type of qPCR can detect the RNA of the Covid-19 virus.

https://doi.org/10.1101/2020.05.27.120238

2020.7.20 Ronald Tarigan

The novel coronavirus, SARS-CoV-2, has caused a global pandemic of COVID-19 since its emergence in Wuhan, China in December 2019.

Even though the horseshoe bats (Rhinolophus spp) is considered to be the natural host of SARS-CoV, no isolation of SARS-CoV has been reported from bat cell lines.

A research group from the University of Hong Kong succeed to develop intestinal organoids from horseshoe bat (R.sinicus) and success to isolate SARS-CoV2 from human stool samples.

This first organoid culture of bat intestinal epithelium might help scientists all around the world to isolate more coronaviruses possibly SARS-CoV-2 from bats.

https://www.nature.com/articles/s41591-020-0912-6

2020.7.13 飯田敦夫

動物形態学ではデンキウナギを飼育しています。もちろん研究面のアイデアあってのことですが、まだまだ妄想段階で海の物とも山の物ともつかない状態です。

そんなデンキウナギ、長きに渡りデンキウナギ属に1種のみ(Electrophorus electricus)だと考えられていました。ところが2019年に、形態的にも遺伝的にも3種に分類できるとする研究成果が、Nature Communicationsに報告されました(https://www.nature.com/articles/s41467-019-11690-z)。

それはそれでいいとして、困ったのは研究室の個体は3種のうちどれなのか?頭の痛い問題の発生です。麻酔で眠らせて身体測定をするか、ヒレの一部からゲノムを抽出してDNA配列で同定するか。研究構想が順調に進捗した場合、いつか直面する問題に(ワクワクした表情で)頭を悩ませています。

2020.07.6 青山明日菜

じめじめとした日が続きますが、梅雨が開ければいよいよ夏本番となりますね。

夏と言えばやっぱり海。海と言えば魚……ということで、現生する魚類の中で最大の種である『ジンベエザメ』についてのお話です。

ジンベエザメは100歳くらいまで生きる可能性があるそうです。放射性炭素(炭素14)による年代測定を用いて、あるジンベエザメの死骸が50歳まで生きていたことが確認され、4月6日付けの学術誌「Frontiers in Marine Science」に論文が掲載されました(https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmars.2020.00188/full)。100歳には届きませんが、それでも十分長生きですね。

ただ、長寿故に、漁業や海水温の上昇といった脅威に対し影響を受けやすいそうです。実際に個体数も減少しているらしく、長寿も良いことばかりではないのかもしれないと考えさせられますね。


もう一つ、6月29日付けの科学総合誌「PLOS ONE」に掲載された論文で、ジンベエザメには『目の表面に大量の鱗がある』ことが発表されました(https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0235342)。片目だけで2900枚もあるらしく、目に鱗を持つ脊椎動物はこれが初の事例だそうです。白目の周りに生えていて、人間の歯の様な素材・構造でできているのだとか。表面がぶ厚く摩耗に強い構造になっていることから、けが防止など物理的な刺激に抵抗する役割だと考えられるそうです。

ジンベエザメはこれまで視覚にあまり頼らないと考えられてきたらしいのですが、近年の説では逆に目が重要であるとも言われているそう。この研究結果は目を厳重に保護していることを示しており、近年の説を支持する結果と言えるようです。


目の鱗の研究には、沖縄の美ら海水族館で飼育されているジンベエザメが用いられています。まだまだ学術的によく分かっていないことも多いジンベエザメ。日本国内では四か所の水族館で飼育展示されているようですので、夏休みに実際に見に行ってみるのも良いかもしれませんね。

2020.06.29 野村隼平

冬になると寒いのが苦手な人が「暖かくなるまで冬眠したいよ」というような冗談を口にすることがありますが、将来、私たち人間も"冬眠"をすることができるようになるかもしれません。

筑波大学の研究グループがマウスを冬眠に似た状態に誘導できる新しい神経回路を発見し、その研究成果が先日Natureでオンライン公開されました。

https://www.nature.com/articles/s41586-020-2163-6

http://www.tsukuba.ac.jp/attention-research/p202006111800.html

マウスは本来冬眠をしない動物ですが、脳の一部の神経細胞群を刺激すると、冬眠のように体温や代謝が著しく低下するとのことです。また、この冬眠様行動の前後で特に行動や組織に異常は見られないそうです。

この発見は医学はもちろん、食料や酸素の消費を減らせるという点で宇宙開発への貢献も期待できるようです。

「人工冬眠」なんてSF的でかっこいいと思います。

2020.06.22 仲井理佐子

雌のカリフォルニアヤリイカは外套膜の縞模様を透明にしたり白色にしたりできることに 着想を得て、制御可能で可逆的に透明にすることができるヒト細胞の作製を行ったという 論文が 6/2 に公開されていました。(Nature Communication, June 2, 2020)

ヒト胎児由来腎臓細胞でカリフォルニアヤリイカのタンパク質を発現させ、塩化ナトリウ ム溶液の濃度を変えることで細胞の透明度を変えることができたそうです。もしもヒトの 皮膚全体を必要なときだけ痛みもなく透明にすることができたら、動いている内臓や筋肉 の様子を気軽に観察することができて面白いのではないかと思いました。

また、カリフォルニアヤリイカの遺伝子を利用していると聞いてジュラシック・ワールドに 出てくるインドミナス・レックスを思い出しました。インドミナス・レックスは他の様々な 恐竜やアマガエル、ヘビ、そしてコウイカなどの DNA を利用して作られた人工の恐竜、と いうよりキメラ生物なのですが、急激な成長に耐えられるようにと加えられたコウイカの DNA によって皮膚表面の色を変える擬態能力を持ってしまい、捕獲しに行った部隊が奇襲 されるというシーンがあります。他の生物の DNA を取り入れて新たな形質を獲得するとい う点で同じ実験が現実で行われていると思うと、映画の中の出来事がいつか現実に起こり そうでわくわくします。

2020.6.15 勝田 哲史

カメムシ大量発生で兵庫県に注意報。(news.yahoo.co.jp.July 6

兵庫県立農林水産技術総合センター(愛知県でいう農業総合試験場)が、果樹類の病害虫であるカメムシの発生が例年よりきわめて多いということで県下全域に注意報を発令しました。設置した「フェロモントラップ」により誘殺されたカメムシを数えることにより発生予測を行っているようです。

このようにモニタリングをしっかりとやってくださる機関があるので、農家の方々も早急に対策をして被害を抑えることができるのだなと感じました。

余談ですが、このニュースの見出しを見た時ついついポケモンを連想してしまいました。

エメラルドにて、普通はなかなか出会えないポケモンが特定の地域に大量発生するというイベントがあるのですが、いつ発生するか分からないので定期的にゲーム内のTVでニュースをチェックする必要があります。そのニュースの内容とこの記事の見出しが似ていたので、そんなに戦闘では使えないアメタマやエネコ大量発生のニュースを待ち続けていた頃を思い出しました。


というのは前置きでして、本題は「バッタの大量発生」です。(FAO locusts

バッタがアフリカで大量に発生し、農作物に甚大な影響を与えています。大群はインドにまで到達しており、もっと被害が出る恐れがあるそうです。

バッタは個体群密度に応じて「相変異」をおこします。密度が高い状態ではより飛翔能力に優れた形態である「群生相」に変化し、群れで長距離移動して畑を荒らします。とにかく数がものすごいので大群が通る畑は草一つ残らないそうです。(バッタ 大量発生 で調べると動画がたくさん出てきます)

このバッタによる被害を抑えるために、より強力な殺虫剤を開発することもある程度必要ですが、一番重要なのはさっきのカメムシでのような「モニタリング」ではないかと思います。実際に現地では、地域の人々による携帯電話でのネットワークでイナゴの動きを監視していますが、範囲が広大であることや、周辺地域の紛争などによりカバーしきれない部分が出てきます。その解決策として、ドローンの導入が期待されています。(FAO, April14

バッタ研究についてと言えば「バッタを倒しにアフリカへ」という本が面白いです。日本の研究者がアフリカのモーリタニアでバッタの研究をする姿が描かれており、その苦労がうかがえます。

2020.6.8 山田 紗恵子

昨日6月7日に配信されたニュースに、食虫植物の祖先が、少なくとも1億年前から虫を捕らえて消化する遺伝子を持っていた可能性があるというものがありました。

食虫植物のモウセンゴケ科に属するコモウセンゴケ、ハエトリソウ、ムジナモに着目し、これらの遺伝子を調べたところ、虫を捕らえて栄養にする能力をうみ出す遺伝子が共通していることがわかったそうです。

また、過去の化石などからみて、虫を捕らえる能力は少なくとも1億年前には備わっていた可能性が高いようです。

大抵は捕食される側の植物が、虫を食べるという補食側にまわるユニークさに惹かれ、植物園で発見すると好んで観察していました。

そんな食虫植物の特徴が一億年前から遺伝子の中に備わっていたと思うと、自分がちっぽけに思えるくらい大自然の壮大な時の流れを感じられる気がします。

研究成果は基礎生物学研究所などが確認し発表したもので、米科学誌カレント・バイオロジー電子版(https://doi.org/10.1016/j.cub.2020.04.051)に掲載されています。

2020.6.1 仲田 雛乃

昨日5月31日、アメリカのベンチャー企業スペースX社の宇宙船が国際宇宙ステーション(ISS)とのドッキングに成功しました。

民間企業による有人宇宙飛行の成功は史上初だそうです(National Geographic, May 30, 2020)。

今回打ち上げられた有人宇宙船「クルードラゴン」は同社が運用中の無人宇宙船「ドラゴン」の後継機であり、そちらは2010年12月8日には飛行を成功させていたようです。

余談ですが、宇宙船の名前(ドラゴン)の由来となった童謡「パフ(原題:Puff, the Magic Dragon)」が今朝6月1日のおかあさんといっしょで演奏されたようです。

このニュースとの関連は分かりませんが、教育テレビなりの計らいだとすれば粋だなと感じました。

2020.5.25 Thachawech Kimprasit

As you know, SAR coronavirus-2, the virus that causes the Covid-19 has distributed over wide areas. Not only infected to humans, but domestic and wild animals have also been reported to infect with the virus.

Tigers and Lions at the Bronx Zoo in the U.S.A. have tested positive for the virus (National Geographic, April 22, 2020).

It is still unclear that why these animals are susceptible for the virus.

Because this event is new, there are a lot of unanswered questions including whether these animals are more susceptible to coronavirus than other animals.

Further studies should be conducted to provide insight knowledge for this phenomenon.

2020.5.18 Ronald Tarigan

The COVID-19 pandemic affect people life all around the world.

Many scientists hypothesized this virus came from bats and infect human through other animal as intermediate host, in the same way with SARS outbreak in 2002.

Many highly pathogenic zoonotic viruses have been detected in bats, such as SARS, MERS-CoV, Marburg, Ebola, Nipah, and Hendra virus.

Experimental infection of those viruses to some bat species showed limited clinical symptoms.

Many scientists try to reveal the unique antiviral mechanism in bats (Frontiers in Immunology 11 (2020): 26).

Further studies on bats antiviral mechanism is useful for scientists to adapt these strategies to prevent or treat viral infection in human.

2020.5.11 飯田敦夫

スピノサウルスという恐竜を知っているでしょうか?

映画「ジュラシックパーク」にも登場した、大型の肉食恐竜です。

従来は陸生だと思われていたこの恐竜が、実は水中生活を営んでいたかも知れないというニュースが、最近世界中を駆け巡りました。

2018年に発見された尾部の化石から、魚の尾びれのような遊泳に適した構造が予測されたのです(Nature 581;67–70(2020))。

このように、古生物の形態は化石情報から日々アップデートされています。

DNAなど分子解析が普及した世の中でも、”形から探る”アプローチの魅力はまだまだ尽きないと考えています。