本道 栄一, Eiichi Hondo

教授 Professor 本道 栄一, Eiichi Hondo

本研究室は、形態学を「変形と形成の学説」ととらえ、解剖学、微生物学、遺伝学、発生学などの様々な知見を基礎として研究を行っています。解剖学が、特異な構造を認識して、それに名前を付ける学問だとすると、形態学は、時間軸に沿った、より動的な対象を扱う学問であるといってよいでしょう。

我々の形態を決めているゲノムは、すべて両親から受け継いだものばかりではありません。我々が生きていく中で変化した(エピ)ゲノムが、次世代へと継承される例はよく知られています。また、我々のゲノムの少なくとも4割以上は、ウイルス由来の配列です。我々の体を真に知ろうとすれば、これらのゲノムにおける位置効果、エピゲノムが遺伝するしくみを知らなければなりません。

本ホームページを開設するにあたり、我々の主要な研究テーマの一つを、「獲得した遺伝因子のTransgenerational Inheritance機構の解析と形質の数理予測」と決めました。この中には、親世代で変化したエピゲノムが次世代へ継承するしくみを明らかにしたい、我々のゲノムにどうやってウイルスが入り込むのか、入り込んだウイルスはどのようにふるまうのかを明らかにしたいという気持ちが入っています。これらに確率論を含んだ一定の規則があるならば、将来の我々の形質を数理的に予測することが可能なはずです。

2013年末に発生した西アフリカのエボラ出血熱では2万人を越える人々が犠牲になりました。一方、一部の感染者は発症後に回復しました(後遺症が残っているケースが多いようです)。回復した方の生殖細胞にはエボラウイルスが入り込んでいるかもしれません。我々は長い歴史の中で、様々な感染症のパンデミックにさらされながら微生物に内在化を許してきたのです。近年、危険なウイルス感染症の自然宿主がコウモリであることが明らかになってきました。新興感染症の7割以上が動物からやってくると言われ、その感染症が我々の将来の形を変える力を持っているとすると、上述の研究テーマを追求しようとするとき、野生動物の行動までもが形態学としての研究対象になっているのです。

我々は、熱帯雨林でテントを張りながらオオコウモリの行動計測をし、アジア諸国の洞窟で食虫性コウモリの糞をかきとり、また、糖尿病モデルのマウスを作り、マウス受精卵のトランスクリプトーム解析を行うといった凡そ互いが無関係と思われる研究を行っていますが、その実、すべての研究が1本の線の上に乗っているのです。以上ご理解いただき、一緒に楽しく議論ができる方の入室を心よりお待ちしています。