講師紹介
背景画像 高砂遺跡(小平町)の発掘調査で発見された焼失住居(小平町教育委員会提供)
背景画像 高砂遺跡(小平町)の発掘調査で発見された焼失住居(小平町教育委員会提供)
2022年度地域の文化財普及啓発フォーラムの講師を次の方々にお願いしております。なお、佐藤先生は釧路会場、榊田先生は札幌会場のみの出講です。
1949年、仙台市生まれ。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。 宮内庁正倉院事務所職員を経て東北学院大学文学部教授(2017年退職)、現在 東北学院大学名誉教授。宮城県多賀城跡調査研究委員、東北歴史博物館協議会資料収集専門部会委員、宮城県栗原市伊治城跡調査整備指導委員、宮城県東松島市発掘調査指導委員などを務める。
主な研究分野は日本古代史、特に古代北方史、古代日韓交流史。主要な著作として『蝦夷の地と古代国家』(山川出版社、2004)『古代の蝦夷と城柵』(吉川弘文館、2004)『大王から天皇へ』(講談社、 2008)『秋田城と元慶の乱』(高志書院、2021 以上いずれも単著)などがある。
参加者の皆様へ 東北人の目で古代蝦夷(エミシ)の研究をしてきました。蝦夷は東北地方ばかりでなく、北海道にも住んでいて、渡嶋(わたりしま)蝦夷とよばれていました。彼らは、毛皮を携えてしばしば出羽国へやって来て、交易を行っていたことが記録に残っています。しかしこれは、当時の北海道と東北地方の交流のほんの一端にすぎないと思います。両地域の人びとは記録に残るはるかまえから盛んに交流を行っていて、擦文文化の成立には本州方面の土師器文化が大きな影響をおよぼしたことが指摘されています。古代の両地域の交流はどのようなものだったのか、発表者の皆さんといっしょに考えてみたいと思います。
熊木俊朗 くまき としあき 東京大学大学院人文社会系研究科教授
1967年、東京都立川市生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科修士課程修了、同研究科で博士(文学)学位取得。東京大学大学院人文社会系研究科准教授を経て2018年から同研究科教授。北海道文化財保護審議会委員、北海道考古学会会誌編集委員会委員長などを務める。
主な研究分野は北海道を中心とした北東アジアの考古学。特にオホーツク文化や擦文文化について調査研究を進めている。主な著作として『オホーツク海南岸地域古代土器の研究』(北海道出版企画センター、2018)『アイヌ文化形成史上の画期における文化接触:擦文文化とオホーツク文化 −大島2遺跡の研究(2)−』(東京大学常呂実習施設、2021年、編著)などがある。
参加者の皆様へ 擦文文化の竪穴住居跡といえば、内部構造は画一的で、出土する遺物も少ない印象があるかもしれません。東京大学常呂実習施設では、2010年から2022年にかけて、北見市大島2遺跡で廃絶時に火を受けた擦文文化の竪穴住居跡を5軒発掘したのですが、そこでは前例のないカマドの構造や、住居やカマドを廃絶する際の様々な行為の痕跡など、住居の内部構造や廃絶儀礼を読み解くための興味深い情報が数多く確認されています。フォーラムでは焼失住居の臨場感あふれる発掘調査写真を紹介しながら、擦文文化の竪穴住居の構造と儀礼をめぐる問題を考えてみたいと思います。
鈴木琢也 すずき たくや 北海道博物館学芸主幹
1975年、北海道富良野市生まれ。福島大学大学院地域政策科学研究科修士課程修了。北海道開拓記念館学芸員を経て、2021年から北海道博物館学芸主幹。国立歴史民俗博物館客員准教授、國學院大學短期大学部兼任講師などを務める。
主な研究分野は擦文文化の対外交流、特に本州との交流について研究を進めている。また、博物館の業務として北方四島の考古学的調査・研究にも携わる。主要な著作として「平泉政権下の北方交易システムと北海道在地社会の変容」 (『歴史評論』795号、2016年)『北方世界と秋田城』(六一書房、2016年、共著)「擦文文化の成立過程と秋田城交易」(『北海道博物館研究紀要』1号、2016年)『古代中世の蝦夷世界』(高志書院、2011年、共著)などがある。
参加者の皆様へ 擦文集落(竪穴住居群)は、概ね8世紀頃に石狩低地帯(現在の千歳、恵庭、札幌などの地域)で成立し、10世紀以降には北海道東北部に拡がっていくと考えられます。私は、このような擦文集落の成立と拡散の背景に何があるのかということに関心をもっています。特に注目しているのは、古代の北方交流の展開が擦文集落の動態にどのように関わっていたのかということです。本フォーラムでは、北海道に搬入された本州産製品をとりあげて擦文文化の対外交流の様相を概観し、その交流の展開が擦文集落の成立・拡散といった社会の変化にどのような影響を及ぼしたのかということについて考えてみたいと思います。
佐藤明彦 さとう あきひこ 一般社団法人釧路観光コンベンション協会DMO推進室
釧路市生まれ。釧路公立大学卒業。北海道中小企業家同友会を経て 2017年から 釧路観光コンベンション協会に勤務。
釧路観光コンベンション協会では、観光地域づくり法人(地域連携DMO)として釧路市街地での着地型観光素材の開発、及びツアー造成を行う(例:夕日を活用した街なか焚き火会、インフラツーリズムなど)。並びに釧路管内や近郊エリアでは、文化・歴史・自然体験を軸としたアウトドア滞在型の観光商品の開発に取り組む(キャンプ体験、グランピング、サイクリングなど)。また、アマチュア写真家としても北海道中で撮影活動を行い、個展開催等を行っている(主な撮影ジャンル:野生動物、風景)。
参加者の皆様へ 縄文・擦文文化に限らず、北海道の歴史は本州以南と比較すると非常に興味深いものが多いです。観光分野で如何に活用するか、もひとつのテーマです。我々も、ただ歴史・文化に触れるだけではなく、学芸員やネイチャーガイドの解説を一緒に得ることで知識や体験が深化します。観光というジャンルが、北海道の文化・歴史を後世に伝えていく橋渡し役にもなれればと思っております。
榊田朋広 さかきだ ともひろ 札幌市市民文化局文化部文化財課文化財調査員
神奈川県秦野市生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学、同研究科で博士(文学)取得。2009年より札幌市埋蔵文化財センター勤務。
主な研究分野は擦文文化を中心とする北方地域の考古学研究。主な業務としては札幌市の埋蔵文化財(特に縄文文化)に関する普及啓発に取り組む。主要な著作として 『擦文土器の研究-古代日本列島北辺地域土器型式群の編年・系統・動態-』 (北海道出版企画センター、2016年) 「擦文文化前半期の集落群構成と動態」(『日本考古学』第51号、2020年)などがある。
参加者の皆様へ 擦文文化の集落は、内容、規模、立地、営まれた期間などが時期ごと地域ごとに多様な様相をみせる。それは、集落に住まう人々がいつ・どこでも画一的な生活を送っていたのではなく、生態環境の違いや異文化との交流といった社会環境に応じて住まい方を変える柔軟性を持ち合わせていたことの表れであり、また時間とともに変わる生態・社会環境に適応してきた集落の歴史そのものの姿である。擦文集落の多様性を整理し、集落に残された人々の住まいの痕跡一つ一つを丹念に調べることで、擦文文化の人々がいかにして生態・社会環境に適応しながら歴史を歩んだのかを明らかにしたい。