自己紹介のところで述べましたように、私は2003年に東京大学を定年退職し、その後、高エネルギー加速器研究機構などで客員研究員として物理学の研究を継続しました。その際に、約3年毎に私の研究成果を冊子にまとめて製本しましたのが Activity Report の始まりで、冊子のタイトルが「Activity Report」でした。その後、私の興味は次第に物理学の物質世界から人間の心の精神世界にシフトしていきました。そして、私が75才の後期高齢者となった年度(2016年度)の末に、客員研究員を辞して物理学の研究を停止しました。4 冊目の冊子である Activity Report (2013 - 2015) は、私の物理学の研究成果の最後の報告書となりましたが、その内容を第1部と第2部に分け、第1部は物理学の研究成果報告とし、第2部は主として「人間の心」についての思索の結果の報告としました。現在のActivity Reportは、この第2部の内容を引き継いでいます。その後、Activity Report の出版の頻度は、3年に1冊から2年に1冊となり、最近は毎年出版しています。部数は150部前後で、完全な非売品であり、親しい仲間にだけ配っています。いちばん最近の「Activity Report 2024 」が通算で(2003年から数えて)10冊目にあたります。
現在の Activity Report の中心課題は、「人間とは何か」「自分とは何か」「何のために生きているか」「如何に生きるべきか」ですが、その他に、科学技術に関する考察、健康に関する覚書、名著や古典の読書感想文、「くずし字」「アート」「仏像鑑賞」「樹木の観察」などの趣味の世界の事柄、などなど多岐に亘っています。というのも、そもそもこれらの短文の由来は、忘備録的役割をもって、私が理解したこと、経験したこと、感動したことなどを手あたり次第、文章に書き留めることから始まったからです。忘備録的由来に過ぎなかったため、私は当初、それらは私だけのためのもので、他人に見せるべきものとは思っていませんでした。だから、私が物理学の研究を停止する時に、Activity Report の製本も終わる筈でした。ところが、私が精神世界についての思索を少しずつ進めていましたところ、私が物理学の研究を停止する頃までに、おぼろげながら「人生の真実」というべき基盤が私の中に形成されつつあるという実感を得ることができました。その基盤について、ここで詳しく説明することはできませんが、簡単に述べますと、ほとんどの人間は自分とはその肉体であると思っていますが、それは「小我」という物質に由来する自分に過ぎず、「人生の真実」は「大我」という物質を超越した自分の存在を知り、実感するところから始まるということです。そして、私が「大我」に気づくことができたのは、般若心経の「空」を実感できたからでした。そのとき、私はこのテーマを物理学の研究に替わるテーマとして、生涯真剣に追求することを心に決めました。これは途方もなく大きなテーマですが、Activity Report の製本を続けることは、それを遂行するための一環として、またその取り組みの記録として必要なことでした。Activity Reportは、単に私の忘備録であるだけでなく、同様な課題をもった友人たちとの間でテーマを共有し、建設的な意見交換をするきっかけとなりました。実際に、Activity Report を読んでくださった沢山の人たちから、私は沢山の貴重な助言をいただき、思索を前進させることができました。「大我」という概念は、西田幾多郎が説く「純粋経験」や「絶対無」、老子が説く「道(タオ)」、グスタフ・ユングが説く「セルフ」、鈴木大拙が説く「不二法門」、河合栄次郎が説く「理想の自我」などと基本的に同じ概念、あるいは極めて近い概念であることを示すことができます(詳細はActivity Report の文書をご覧ください)。「大我」に気づき、心を向け、その方向に進むことは、自らの人格を陶冶し、弱肉強食的で争いの絶えないこの世の中を少しでもよくすることに繋がると思います。まだまだ未熟なActivity Report でありますが、少しでも人のため、世の中のために役立つことができればこれに過ぎる喜びはありません。
以上の経緯を踏まえ、Activity Report がより多くの人たちに読んでいただけることを願って、このたび「Activity Report 2024」(通算で第10冊目)と「Activity Report 2023」(第9冊目)と「Activity Report 2022」(第8冊目)をグーグルサイトの「小谷章雄のホームページ」を通じて公開することにしました。また、これまでActivity report に連載してきました「私の健康法」を第1稿から第7稿までまとめて公開し、さらに、まだActivity Report になっていない新しい原稿を数編公開しています。今後、新規のActivity Report やバックナンバーにつきましても、順次公開していく予定ですので、よろしくお願いいたします。
2025年2月 小谷章雄