大学院教育

これまでの古典的な細菌学では,細菌の病原性のみを対象としてきました。一方,免疫学では宿主応答のみを対象とし,病原体側の因子の挙動についてはほとんど注目していませんでした。このような状況下では,感染現象を包括的に理解することが困難でありました。近年になって,いくつかの研究グループが感染症の発症過程を分子レベルで説明しようと試みています。その結果,ある種の病原菌では,アクチン細胞骨格の再編成を誘導して,宿主細胞内に侵入あるいは定着することが明らかになってきました。また,宿主細胞にアポトーシスやネクローシスを誘導し,宿主の免疫系から積極的に回避する病原菌の存在も明らかになってきました。

細菌の病原性発揮の本質を知るためには,試験管内での細菌の性質を調べるだけでは不十分であり,感染における宿主側因子の情報が必要であります。

われわれは,細菌の感染現象を,寄生体側因子と宿主側因子との相互作用の観点から見つめなおし,どのようにして「病気」が起きるのかを,分子レベルで解明しようとしています。また,このような視点にたって,大学院での人材育成をおこなっております。

大学院教育

研究スタイルとして,各自が研究テーマのすべてをこなします。研究の効率を考えると,分担して個々のパートを黙々としてこなしていったほうが良いのかもしれませんが,研究は効率主義でやるものではないと思います。

誤解を恐れずに発言すれば,皆と協調しながらデータを出すものでもありません。大学院生も個々の研究テーマを思う存分楽しんでほしいと思います。

研究は楽しくなければいけません。興味があって熱望が生まれ (これはむしろlustに近いのかも知れません),それが目的意識を強めることになり,最終的に個々の研究領域が発展していくものだと思います。

研究が,好きで好きでたまらないという学生さんがいましたら,われわれと一緒に研究をしませんか?


修士課程

カリキュラムの一環として,研究以外に原著論文の紹介 (輪講) があります。また,学会発表等でのプレゼンがあります。また,修士2年の8月ごろに日本細菌学会が支援している「細菌学・若手コロッセウム」があります。この学会後にプレ修士論文を提出していただきます。修士2年の修了間際に論文は提出するものですが,2年に進級した時点で,これまで行ってきた研究内容を修論としてまとめ,残りの1年を何に集中すれば良いのかについてクリアにします。プレ修論として,はやめに出すことで,修論のFigureに何が必要なのか? また,何が足りないのかについて,目的意識をもって取り組むことが可能となります。修士2年間の研究を通して,研究者としての基本的な素養を楽しみながら,身に付けてほしいと思います。


博士課程

博士課程では,修士で身に付けた基本的な素養以外に,さらに研究を深化させ,自分の力で研究を立案・実行できる能力を身に付けてほしいと思います。修士過程と博士過程の大きな違いは,博士取得の本大学院基準として,原著論文を少なくとも1報提出する必要があります。原著論文の指導はきちんとおこないます。