共催セミナー

 乳癌においては、HER2受容体が同定され、乳癌の15~25%がHER2陽性乳癌と分類される。現在では、HER2陽性乳癌か否かの判断は、乳癌の治療方針決定の第一歩となった。これまでの報告でHER2遺伝子増幅・HER2タンパク過剰発現は乳癌の強力な予後因子であることが分かっている。このことはすなわちHER2陽性乳癌に対しては抗HER2薬の治療効果が高いことを示唆する。

実臨床では浸潤性乳癌と診断されるとほぼ同時にHER2の情報が治療方針決定に影響を与える。手術のタイミングを左右することもある。HER2陽性乳癌において抗HER2薬は、術前化学療法、術後補助化学療法、転移再発期の乳癌薬物療法のすべての段階で、併用または単独で使用される。日本でトラスツズマブ(ハーセプチン®)が実際の医療現場で使われるようになったのは、今世紀になってからである。それに続いて多くのHER2を標的とした薬剤が使用されるようになり、無再発生存率、予後の改善が複数報告されている。もちろん早期のHER2陽性乳癌であっても一定数の再発イベントが発生していることを忘れてはならないが、抗HER2療法のアップデートによりサバイバーが増加している。今回はこのような抗HER2療法を振り返り、そして治療中の患者のQOLや治療後のサバイバーシップにも少し触れたい。