テーマ: 作業療法士に求められていること~地域生活を考える~
シンポジスト:
・相坂 裕司 氏 (社会福祉法人 あーるど マネージャー)
・窪田 泉 氏 (医療法人社団清泉会 布施病院 総師長 )
・乳井 香澄 氏 (ケアプランセンターしゃきょう 副所長 )
・工藤 泰平 氏 (公益社団法人 青森県社会福祉士会 副会長 )
コーディネーター:
・北澤 純子 氏 (医療法人誠仁会 尾野病院 作業療法士)
地域生活と作業療法のこれから
医療法人誠仁会 尾野病院
作業療法士 北澤純子
現在、リハビリテーションの主軸は臨床施設から「地域生活の場」へとシフトしており、「地域共生社会」の実現が急務となっています 。作業療法士は、対象者にとって目的や価値を持つ「作業」に焦点を当て、人々の健康と幸福を促進する専門職です 。しかし、私たちが向き合う地域の実態は、急速な少子高齢化や公共交通機関の不足、近隣関係の希薄化など、多くの「生活の障壁」に直面しています 。
対象者が真に望むのは単なる機能回復ではなく、仕事や家事、趣味といった「その人らしい具体的な生活行為」の再獲得です 。これらを支援するため、作業療法士には以下の3つの視点が求められます。第一に、具体的な解決策を提示し環境調整を行う「個別支援」、第二に、住民が通う場への専門的アドバイスを行う「地域全体へのアプローチ」、第三に、制度の縦割りを超えた「多職種・多機関連携」です 。
地域生活支援は作業療法士単独で成し遂げられるものではありません 。本シンポジウムを通じ、多職種の視点から寄せられる期待や課題を共有することで、一人ひとりの住民が自分らしく暮らせる社会の構築に向け、私たちが担うべき役割を問い直す機会としたいと考えます 。
『安心して暮らし続けられる地域作りに必要な連携と
作業療法士としての役割』
社会福祉法人 あーるど
マネージャー/社会福祉士 相坂 裕司
どんなに重い障がいがあろうとも「地域で愛し愛され暮らし続けられる社会をつくる」ことをミッションに、社会福祉法人あーるど(当時NPO法人)は設立された。
当法人を利用する方は、年齢や性別、発達段階も幅広く、それぞれのライフステージにおいて利用する目的や課題、目標も様々である。乳幼児期は主に身辺面、言語、集団生活におけるスキルを身につけ、年齢を重ねると学校や将来の自立に向けたスキルを身につけていくなど目標も状態も日々変化し続ける。成人期になると、仕事をする方や日中作業、余暇活動をする方もいる。職員には作業療法士、言語聴覚士などの専門職も在職しており、多職種で連携して包括的にサポートをしている。
障がいのある方でもそれぞれの課題やニーズは多種多様であり、そのサポートには作業療法士が重要な役割を担っている。事業所と作業療法士が連携し、アセスメントを実施し強みを見つけ、その人に合った活動を立案、設定していく。重い発達障がいのある方など困難ケースもあるがチームで連携したサポートと日々の支援の積み重ねが大切である。楽しいことや余暇、活動があることでその方の生活も豊かになっていく例も多い。
現在我々は『子どもたちが希望に溢れ、大人たちが責任に立ち向かい高齢者たちが優しさを語らえる地域社会を創ること』をミッションに乳幼児期から成人期まで広くサポートを行っている。誰もが安心して暮らせる地域づくりに日々邁進している最中である。
地域で安定した生活を支える精神科訪問看護
~看護師と作業療法士の協働支援~
医療法人社団清泉会 布施病院
総師長/看護師 窪田 泉
「入院から地域へ」と在宅医療の需要が高まる中、訪問看護における看護師と作業療法士の連携は、利用者の生活機能維持と生活の質向上が期待され、地域でその人らしい生活を続ける支援になります。看護師は主に医療的ケア、症状のモニタリング、服薬 支援、生活行為や日常生活リズムの観察を通じて身体機能・認知機能の変化を早期に捉え、必要な専門職につなぐ役割があります。一方、作業療法士は機能回復を中心とした介入、生活行為の再獲得、環境の調整、社会活動参加の促進など生活の維持を図る支援が出来ます。
精神科訪問看護における訪問場面では、看護師と作業療法士が協働する事で医療と生活双方からの視点を用いて、服薬行動支援、症状のモニタリング、転倒リスクの評価、環境調整の助言、排泄・入浴動作の介助方法、福祉用具選定、個別性の高い自立 支援計画の立案などを効果的に行えます。今後は、関係職種の情報共有、チーム内での役割明確化、生活に根差した視点、地域での多職種連携の質を高めることが求められます。看護師と作業療法士の協働は、地域で安心して暮らし続けるための基盤を形成し、利用者個々の生活の質向上に寄与できると考えます。
専門職が求められるためには
ケアプランセンターしゃきょう
副所長/社会福祉士 乳井 香澄
社会福祉協議会で地域福祉事業に従事し、その後地域包括支援センターへ社会福祉士として配属され13年、今年4月からは居宅介護支援事業所のケアマネジャーとして従事している。
この間、子供からお年寄り、障害のある方、地域で活躍している方、生活のしづらさ・生きづらさを抱えている方、いろんな方とたくさん出会い・ふれあい・助けられ・悩んできた。
地域包括支援センターでは、地域づくりや他・多職種連携を求められ、地域ケア会議等を活用し地域の住民や医療介護の専門職の顔つなぎの場を作ってきた。住民から見ると、医療の専門職は「病院にいる人」、福祉介護の専門職は「施設にいる人」との認識が強いことも分かってきた。また、専門職や資格の名称を伝えたところで、「何をしている人・何ができる人」が理解されにくいということも分かった。
作業療法士の皆さんはじめ、社会福祉士や他の専門職も、出会ってつながった時に初めて専門性を認識してもらえるきっかけになるのではないだろうか。
地域の人と専門職が「病院」「施設」以外で出会い・つながっていくためには、専門職が地域・住民の中に入っていく必要があると考えられる。その入っていく方法を、シンポジストはじめご参加の皆さんと一緒に考えてみたい。
「実践から考察する社会福祉士の地域支援と
作業療法士との連携について」
公益社団法人 青森県社会福祉士会
副会長/社会福祉士 工藤 泰平
西北五管内は人口減少が顕著であり、多くの課題が重なっている。そこで暮らす全ての人々が「ここに住んでいてよかった」と実感できる地域を実現していくためには、ウェルビーイングの向上が重要である。そのためには、地域全体が大きく、そしてゆるくつながる関係性が欠かせない。このつながりが助け合いや支え合いを生む。積み重ねることで、生きがいをもち、安心感につながると感じる。専門職が日々地域とかかわり続けることは、地域から信頼された専門職となり、同時に、ウィルビーイング向上に寄与できる。一方で、孤立、貧困、日常生活が困難な方など、個人や地域では対応が難しい様々な課題も存在する。これらの課題については、専門職として実践力を発揮することで、個人の生活のみならず地域全体の安心感につながると考える。また、地域課題への対応には、必要な制度改善や社会変革を促すアクションも重要であり、一職種だけではなく、多職種他機関がネットワークを構築し協力することが、より地域にとってメリットを生む結果につながると考える。今回、社会福祉士として倫理綱領と実務経験をもとに、地域に溶け込む専門職像と実践から、作業療法士に求めることを検討する。さらに、本シンポジウムが相互理解とネットワーク形成の契機となり、誰もが明るい未来を信じて生活できる地域づくりにつながることを期待している。