第34回奈良県理学療法士学会開催にあたって 

第34回 奈良県理学療法士学会

学会長 久野剛史(松倉病院)

理学療法分野は、年々拡大し、細分化が進んでいます。10年、20年前にはカリキュラムに含まれていなかった内容が、今では臨床の一部となり、私たちは常に新しい知識と技術を学び続ける必要があります。

一方で、専門性が高まるにつれ、他分野との交流が減少する懸念もあります。日々の課題解決には他分野の知見が必要となる場面も多く、イノベーションは「異分野の掛け合わせ」から生まれることが多いため、異なる分野の専門家との交流の場が求められています。そこで、本学会のテーマを「異分野交流と共創」としました。

奈良県内には様々な分野で活躍し、高度な専門知識を持つ理学療法士が多数在籍しています。多くの理学療法士にとって、異分野の専門家と接する機会は少ないかもしれませんが、奈良県理学療法士学会は、普段接することのない分野の知識や技術に触れ、新たな知見や視点を得る貴重な場です。

本学会では、幅広い分野の先生方にご講演をお願いしています。特別講演では、近年、リハビリテーションを含む多くの分野で注目されている「ファシア(Fascia)」について今北英高先生(埼玉県立大学)にご講演いただきます。そのほか、榮崎彰秀先生(さくらい悟良整形外科クリニック)より「拘縮の評価と治療」、山本実穂先生(西大和リハビリテーション病院)より「リハビリテーション栄養」、脇本謙吾先生(平成記念病院)より「脳卒中の理学療法」、笠井佑哉先生(岩間循環器内科)より「合併症としての心不全の診方」、吉川 義之先生より(奈良学園大学)「物理療法による褥瘡治療」と、多岐にわたるテーマの教育講演を企画しております。

また、本学会は、登録理学療法士前期・後期研修中の方々が参加しやすいように参加費を例年よりも安価に設定し、県士会主催症例検討会も併催することになりました。若手理学療法士にとって、多様な分野を知る貴重な機会となりますと幸いです。既に専門分野で活躍している方々にとっても、新たな発見や気づきを得る場となることが期待されます。本学会が「異分野の先生方との交流」の場となり、「共創」のきっかけになることを祈念いたします。