皆さんは「毒」と聞くと、なんとなく怖ーい生物や、怪しい(?)実験室を想像する人が多いのではないのでしょうか。しかし、身の回りに目を向けると、実は結構危ないものがあったり、「そういえばこんなのも確かにあったな」というようなものがたくさんあります。このパネルでは、そんな身近に潜む毒に焦点を当ててみていきます。
特に夏場によく聞かれる「食中毒」。食べ物の中に含まれていた、有害な物質や微生物が原因となって、主な食中毒の例を紹介します。
ジャガイモ
ジャガイモは、たまに緑色に変色している部分があります。また、ジャガイモを放置しておくと芽がでてくることがあります。それらには、ソラニンやチャコニンという、どっかのアニメの男の子と女の子みたいな毒が含まれています。大量に食べない限り、致死量には及ばないので、それは慰めですが、早めに病院に行った方がいいでしょう。
毎年、主に学校の調理実習で食中毒が起こっています。緑色の部分や芽はしっかり切り落としてから食べましょう。
ウメやビワなどの種子
バラ科サクラ属の植物(モモやウメ、ビワ、アンズ)などの種子や、未熟な果実には、アミグダリンという物質が含まれていることがあります(熟した果実は問題ありません)。アミグダリンは「がんに効く」や、「ビタミンの一種」という話がありますが、科学的な根拠はなく、また、「ビタミンではない」ということが明確に否定されています。アミグダリンは体内で分解され、最終的に毒である青酸(シアン化水素)が発生します(分解されていく過程が分子模型になっています)。ビワの種子の粉末から高濃度のアミグダリンが検出されたという例や、先程紹介したようなウソ情報を信じて、アンズを大量に食べたら亡くなってしまったという例もあります。
他にも、食中毒を起こす、毒物が含まれている食べ物がたくさんあります。
食中毒の章では、食べ物の中に含まれる毒によって引き起こされるものを紹介しました。しかし、毒が含まれていなくても、大量にとることで中毒症状が出るものがいくつかあります。死亡事故があるものもあり注意が必要です。例えば、このようなものがあります。
醤油
一般的な醤油は商品によって異なりますが、1 L中に150~180 gの塩化ナトリウム(食塩)が含まれています。体重50 kgの人の塩化ナトリウムの半数致死量は、150 gです。また、その量まで届かなくても、血液中のナトリウム濃度が高まる、「高ナトリウム血症」になる恐れがあります。酔った勢いで、周りのノリで醤油イッキ飲みだ!!だなんて、絶対ダメです。実際に、アメリカ人のある男性が、友人とふざけて醤油をイッキ飲みし、危うく死にかける、ということが過去にありました。
醤油や、塩、砂糖などは、なんとなくとりすぎはよくないという意識があったと思います。しかし、「水」となるとどうでしょうか。あまりとりすぎはよくない、という印象がないのではないでしょうか。確かに、半数致死量は体重50 kgの人で4.3 L~18.0 Lとかなり量が多いですが、それより少ない量でも、水中毒というものになり、症状が現れることがあります。また、実際に死亡事例もあります。
2007年にアメリカで水飲みコンクールという大会が開催されました。その際、準優勝した女性は7.6 Lもの水を飲みました。翌日、その女性は水中毒による症状で、死亡してしまいました。
水中毒とは、血中のナトリウムの濃度が低くなってしまう「低ナトリウム血症」によるものです(逆に塩分を過剰に摂取すると『高ナトリウム血症』というものになる危険性があります)。
夏場に運動後水をがぶがぶ飲んだことで、水中毒になってしまうということがあります。運動すると、汗によって体内のナトリウムが減ってしまいます。大量の水を飲むとさらにナトリウム濃度が下がってしまいます。ただの水ではなく、経口補水液やスポーツドリンクを補給するのが大切です。また、よく言われることではありますが、「一度に大量」ではなく、「乾いたと感じる前に、こまめに」補給するようにしましょう。
掃除をするときに様々な洗剤を使うことがありますが、その時に注意が必要なことがあります。それは、塩素系の洗剤(次亜塩素酸ナトリウムが含まれています)と、酸性の液体を混ぜないということです。塩素系の洗剤には、お風呂のカビ取り剤や台所清掃用の洗剤があげられます。また、酸性の洗剤・液体には、トイレ用洗剤、クエン酸やお酢を使った洗剤などがあります。塩素系または、酸性の洗剤では効果が物足りず、もう一方を試してみる、ということをすると、二つが中和反応を起こして、有毒な塩素ガスが発生する可能性があります。同じ空間・場所でこれらを使う時は注意が必要です。また、風呂場やトイレといった密閉された空間はより注意する必要があります。
塩素ガス発生を抑えるには塩素系の漂白剤の代わりに、酸素系の漂白剤があります。酸素系の洗剤は、過酸化水素や炭酸ナトリウムが成分なので、塩素ガスが発生しません。
血液中には、ヘモグロビンという物質があります。ヘモグロビンは、肺から取り入れられた酸素と結合し、全身に酸素を届ける役割があります。しかし、一酸化炭素は、酸素よりもヘモグロビンに結合しやすいという特徴があります。そのため、一酸化炭素を吸ってしまうと、酸素が体内にいきわたりにくくなり、一酸化炭素中毒になってしまいます。一酸化炭素中毒による死亡事故もあります。その例を紹介します。
自家発電機の屋内使用
災害によって停電になってしまったとき、自家発電機を室内で使用してしまうと、室内に一酸化炭素がたまってしまうことがあります。そうすると、一酸化炭素中毒になってしまうことは容易に想像出来ます。
ガスストーブや石油ストーブ
ガスストーブや石油ストーブを換気せずに使用すると、空気中の酸素濃度が燃焼によって低くなります。そうすると、ストーブの中で不完全燃焼が起こるようになり、その過程で一酸化炭素が発生し、一酸化炭素中毒になることがあります。