教務委員長メッセージ

Q.ご自身の専門分野と食環境科学研究科でどのような授業を担当しているかご紹介ください

私の研究室では、科学的根拠 (EBN: Evidence Based Nutrition) に基づく疾病の一次予防における効果的な栄養教育方法の開発と客観的評価方法の確立を目指して研究を進めています。ヒトのライフステージごとの効果的な栄養教育方法を確立するために様々な観点からアプローチをしています。
具体的な研究キーワードは、「味覚」・「咀嚼」・「食・生活習慣」・「健康状態」です。「味覚」については、子どもの味覚感受性と社会環境要因との解析について研究を進めています。食嗜好・食行動のひとつに味覚感受性が関与していることが考えられています。食習慣が確立する時期でもある主に学童期の子どもを対象に味覚感受性や味覚識別能力を調査し、食行動や食嗜好、健康状態等を多角的に解析しています。また児童だけでなく保護者においても同様に調査し、親子での味覚感受性・味覚識別能力との関係性や家庭環境要因等との関連性を詳細に解析しています。
一方、現代人の食事中の咀嚼数減少に伴い、近年「咀嚼」の重要性は増しています。咀嚼は、抗肥満や抗ストレス作用等、ヒトにとって有用な効果があることが多数研究報告されています。しかしながら現代人の正確な食事中の咀嚼数については報告されていません。私の研究室では、高精度の咀嚼計を用いて食事中の咀嚼数や咀嚼バランスを計測し、食・生活習慣、健康状態との関連性について詳細かつ多角的に解析を行っています。
「味覚」や「咀嚼」は、子どもから高齢者に至るまで関わる重要な口腔での感受性・動作です。これらに着目し、健康寿命の延伸や効果的な栄養指導・教育に資するEBNの一助になるべく研究を鋭意進めています。
研究科での授業では、「栄養教育学特論」を担当しています。最新の「栄養教育」に関する国際ジャーナルを紹介し、ヒトの行動変容に関わる因子にはどのようなものかあるのか、管理栄養士として患者さんや対象者の方に対する効果的な栄養教育を行うためのアプローチ方法等、最新のEBNを基にディスカッションをしながら授業を展開しています。


Q.食環境科学研究科の魅力を教えてください

本研究科では、「食」の幅広い研究分野において基礎分野・応用分野における研究者が多数揃っています。また、両分野間での融合した研究も積極的に展開しており、「食」というヒトが生涯必要不可欠な領域について、様々な角度から深く探究することが出来るのが食環境科学研究科の魅力です。基礎・応用の双方について学びたい・研究したい学生は、ぜひ本研究科を志望して下さい。


Q.大学院進学を考えている受験生にメッセージをお願いします

大学院では、学部教育だけでは得られない研究の面白さ、研究の奥深さを肌で体験することができます。より専門性の高い知識やスキルを身に付ける場所でもあります。学部教育とは異なり、専門性を活かした研究を計画・実施・成果発表することで、研究者としての基礎作りの力を磨くことができます。
また、大学院生の間に自身で研究した成果について論文発表等を通して、世に広めることで自身の研究成果を社会に還元してほしいと思います。自身の研究成果が社会への寄与につながることは、この上ない喜びです。「食」に関する社会で起きている様々な事象について、「自身の研究で社会を変革していく!」、「自身の研究でヒトの健康に寄与する成果をあげる!」。このような学部生の時にはし難いことを、大学院で一緒に体験していきませんか。


◆プロフィール

井上 広子(いのうえ ひろこ) /東洋大学食環境科学部教授、東洋大学大学院食環境科学研究食環境科学専攻長
【経歴】
東京農業大学大学院農学研究科食品栄養学専攻博士後期課程修了 博士(食品栄養学)


食環境科学科教務委員長
井上 広子 教授