関東学院大学経済学部教授 安田 八十五
日本の現代社会というのは終末的状況にあって,ごみ問題はこの現状を象徴している社会的問題ではないかと私は考えている。具体的に言うと,廃棄物最終処分場,つまりごみ埋立地が今なくなりつつある。日本全体で産業廃棄物の最終処分場・埋立地はあと3年位で無くなる。そして、一般廃棄物(主に家庭から排出される廃棄物)の最終処分場は,あと7~8年で無くなってしまう。こうした状況への対応として、大量生産・大量流通・大量消費型の使い捨てワンウェイ社会から「環境にやさしいごみゼロ資源循環型社会」への社会システムの転換が求められている。
地域社会においても環境に配慮した循環型社会への転換が不可欠である。循環型地域社会を構築するための公共政策の課題と展望について考えてみる。ことに、地域社会で実践されている循環型社会構築の実践例を紹介しながら、成功と失敗の鍵はどこにあるのかを探ってみたい。実際例としては、東京都千代田区のポイ捨て罰金条例、山形県立川町・長井市および横浜市金沢区等で実践されている生ごみリサイクルの事例、東京都日野市および千葉県野田市等で実践されている一般廃棄物有料化政策等を紹介してみたい。そこから地域社会における公共政策の理論と実際について考えてゆきたい。
東洋大学法学部教授 山下 りえ子
環境配慮型の地域社会構築のために、市民、行政そして大学に期待される役割とパートナーシップ。基調講演を受けて、それぞれの現場から報告・提案をいただき、議論を重ねていきます。東洋大学の取り組みにも是非ご注目ください。
文京区資源環境部リサイクル清掃課長 曳地 由紀雄
文京区には清掃工場がなく、可燃ごみの中間処理は、他区に立地する工場に依存せざるをない。したがって、他区へ搬出するごみを削減し、他区への迷惑負担を軽減するためにも、文京区は、強力に3Rを推進していく必要がある。そのため、「モノプラン2000文京」を策定し、リサイクル率6割を目標に掲げ、区民参画のもと、ごみ量の削減、モノ消費量の削減に努めている。その具体的取組みやそれに伴う諸課題について述べたい。
NPO法人「環境ネットワーク・文京」理事長 澤谷 精
文京区は1999年に環境基本計画を策定し、区民・企業・行政の3者が地域の協働で、環境改善を進めることにしたが、現状は3者が個別に活動することが多く、情報の交流や活動の連携などネットワーク化はあまり進んでいない。そこで、この現状を改善するために、文京区の特徴である多くの大学と連携して、大学専門家の支援を得ながら、区民の自主的な環境改善活動を推進するために、インターメディアリーな活動をするNPO法人を設立した。今回は、当NPO法人のねらいと、具体的な活動、今後の取り組み課題などについて報告したい。
武蔵工業大学環境情報学部助教授 萩原 なつ子
武蔵工業大学は1998年に日本の大学で初めて環境配慮の国際規格ISO14001の認証を取得した。以来、「21世紀の社会の持続可能な発展に貢献する」ことを基本理念として、地球環境・地域環境保全のための教育と活動を積極的に展開してきた。学内の教育のみならず、地域・行政のプログラムに積極的に参画し、教職員・学生が積極的にこれらに参加することを支援してきている。今回は持続可能な社会の形成に向けた地域、行政、大学のパートナーシップの可能性を、学生による具体的な取り組みを紹介しながら探ってみたい。
東洋大学管財部次長 荻島 正之
東洋大学白山キャンバスは、本年3月、約13年間に亘った再開発工事が完成した。この新キャンパスは、都市型の先駆的なキャンパスとして、普段目にする部分、また目にしない部分でさまざまな環境への取り組みがされている。この一端として、緑化の推進(甫水の森、屋上緑化、環境緑化)、水の循環利用の推進(循環水、中水設備)、電力負荷の低減、建物の長寿命化、そして学生教職員の意識向上に向けた活動(手作りポスターの掲出)を紹介する。
東洋大学国際地域学部教授 北脇 秀敏
演者は開発途上国を中心とする諸外国の環境衛生問題に取り組んでおり、途上国の劣悪な環境の改善などを中心に研究している。その経験を活かし途上国と先進国との環境に関する考え方の違いを述べ、現在の日本の位置づけを述べる。また我が国が高度成長期に途上国を脱して先進国になる過程での環境に関する考え方の変化などを解説したい。また海外の先進工業国における環境に関する考え方も紹介し、日本の環境のあるべき姿を考えたい。