1.はじめに
いじめは,人間の尊厳,人権に関わる重大な問題であり,断じて許されない行為です。また,どの子どもにもどの学校でも起こり得るものであることから,全教職員がいじめに関する課題意識を共有することとともに自己の役割を認識し,毅然とした指導を進めていくことが大切です。また,児童自らも安心で豊かな学年(学級)集団を築く推進者であることを自覚し,いじめを許さない校風づくりを進めていくことが必要です。
本校では,いじめ防止対策推進法第13条の規定及び田辺市いじめ防止基本方針に基づき,いじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進するために「田辺第二小学校いじめ防止基本方針」を策定します。
この「基本方針」では,いじめの防止等の取組を学校全体で円滑に進めていくことを目指し,すべての児童の健全育成及びいじめのない学校の実現を方針の柱として,学校におけるいじめの防止等を推進する体制づくりを確立するとともに,迅速かつ適切に重大事態等に対処するための方針を定めるものとします。
2.いじめの定義
「児童等に対して,当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって,当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。」 【法第2条】
留意事項
個々の行為が「いじめ」に当たるか否かの判断は,上記の「法第2条」の定義に基づき行うものとする。但し,判断を行う際は,いじめられた児童生徒の立場に立つことを基本とし,表面的,形式的に判断するのではなく,いじめには様々な態様があることを踏まえ,児童生徒の言動をきめ細かく観察したうえで行う。
また,いじめの認知については,次の項目に留意する。
◆「一定の人的関係」とは,学校の内外を問わず,同じ学校・学級や部活動の児童生徒や,塾・スポーツクラブ等当該児童
生徒が関わっている仲間や集団(グループ)など,当該児童生徒と何らかの人的関係を指す。
◆「物理的な影響」とは,身体的な影響をはじめ,金品をたかられたり,所持品を隠されたり,意思に反して嫌なことをさ
せられたりすることや,インターネット上での誹謗中傷などを意味する。
◆周囲には,「けんか」や「悪ふざけ」に見えることでも,事実関係を十分に検証し,一方の児童のみが心身の苦痛を感じ
ていないかどうか慎重に精査したうえで,いじめかどうかを判断する。特に,「児童からの訴えがある。=いじめであ
る。」或は,「児童からの訴えがない=いじめではない。」という一律的な判断を行うことのないよう十分留意する。
◆インターネット上で悪口を書かれた場合は,該当児童が,そのことを知らず,心身の苦痛を感じていない場合について
も,加害児童が判明した場合は,いじめと判断して対処する。
3.いじめの理解
いじめはどの子どもにも,どの学校でも起こり得る問題であり,早期発見,早期対応が大切である。そこで,いじめに見られる集団構造やいじめの態様等について共通認識するため,以下に集団構造やいじめの態様について整理する。
(1)いじめに見られる集団構造
①いじめは,加害・被害という二者関係だけの問題ではない。周りではやし立てたり面白がったりする「観衆」や,見て見
ぬ振りをし,暗黙の了解を与えている「傍観者」も,いじめを助長する存在となる。
②一見,仲が良い集団においても,集団内に上下関係があり,上位の者が下位の者に他者へのいじめを強要しているケース
もあるなど,周囲の者からは見えにくい構造もある。
③直接の接点がないと思われる集団においても,いじめが発生する可能性があり,インターネット上のソーシャル・ネット
ワーキング・サービス(以下,SNSという。)でのやりとりの中でつくられている関係についても留意する。
(2)いじめの態様
いじめは,冷やかしやからかい,悪口等,見た目にはいじめと認知しにくいものがあるほか,暴力を伴わない脅しや強要
等 がある。たとえ,冷やかしやからかい等,一見,仲間同士の悪ふざけに見えるような行為であっても,何度も繰り返さ
れたり,多くの者から集中的に行われたりすることで,深刻な苦痛を伴うものになり得る。
特に,遊びのふりをして軽く叩く,蹴るなどは,周囲の者がいじめと認知しにくい場合もあることから,いじめを受けた
児童の心情を踏まえて適切に認知することが重要である。
本校では,いじめを認知する際の具体的な態様として,次のような例を参考にしながら判断するものとする。
【暴力を伴うもの】
①冗談半分にぶつかられる,小突かれる,足を踏まれる,つねられる 等
②遊ぶふりをして,叩かれる,蹴られる,押される,倒される 等
③ひどくぶつかられる,叩かれる,蹴られる 等
【暴力を伴わないもの】
①冷やかしやからかい,ひそひそ話,悪口や脅し文句,嫌なことを言われる 等
②仲間はずれ,集団による無視をされる 無視を強要される 等
③金品をたかられる 金品の持ち出しを強要される 等
④金品・持ち物を隠されたり,盗まれたり,壊されたり,捨てられたりする 等
⑤危険なことをされたり,させられたり,本人の意思に反して,嫌なことやはずかしいこと,危険なことをされたり,さ
せられたりする 等
⑥パソコンや携帯電話等で,誹謗中傷や嫌なことをされたり,させられたりする 等
★上記具体例については,該当の行為が行われた場面,行うに至った経緯とその頻度や関与している人数等について総合
的に検証する事が必要不可欠である。
4. いじめの防止等の学校の取組
(1)いじめの防止等の対策のための組織
ア いじめの防止等に組織的に対応するために,いじめ対策委員会を設置する。
イ いじめ対策委員会の構成員は次の通りとする。
校長 教頭 教務主任 生徒指導主任 学習支援(教育相談)担当 養護教諭 スクールカウンセラー
*必要に応じて該当学年主任,担任も参加するものとする。
ウ いじめ対策委員会は以下の役割を担う。
①学校基本方針が,学校の実情に即してきちんと機能しているかを点検し,必要に応じて見直すというPDCAサイ
クルの検証の中核となる役割
②いじめの相談・通報の窓口としての役割
③いじめの疑いに関する情報や児童生徒の問題行動等に係る情報の収集と記録,共有を行う役割 (振り返りカードの
実施 他)
④いじめの疑いに係る情報があったとき,緊急に会議を開き,いじめの情報の迅速な共有,関係のある児童生徒への
事実関係の聴取,指導や支援の体制・対応方針の決定と保護者との連携といった対応を組織的に実施するための中
核としての役割
(2)未然防止
いじめ問題を克服するために,本校の教育活動全体を通じて,全ての児童を対象にいじめの未然防止の取組を行う。
特に,全ての児童に「いじめは人権を侵害する絶対に許されない行為である」との理解を促し,人権尊重の精神の涵養
を目的とする教育活動を行う。また,児童の豊かな情操や道徳心,自分の存在と他人の存在を等しく認め,お互いの人
格を尊重し合える態度等,よりよい人間関係を構築する能力を養う。
ア 道徳教育及び体験活動等の充実
教育活動全体を通じて,児童に,かけがえのない自他の生命や人権を尊重する心と態度を醸成するため,道徳教育の
充実を図る。また,ボランティア活動,異年齢集団での活動,地域の方々との交流等,他者と深く関わる体験を重ね,
児童の豊かな情操と道徳心を培いよりよい人間関係を構築する能力の素地を養う。
また,地域で行われる諸活動や子どもクラブ,統合型地域スポーツクラブの活動にも進んで参加させることで心の交
流を図る。
イ 児童会活動・学級活動等の活性化
児童が自らの力で問題を解決し,自治的な能力を身に付けられるよう,教職員の適切な支援の下,児童の運営による
自主活動や主体的な活動をあらゆる機会を通じて行う。また学級活動等で自分の意見や考えを交流したり,みんなで決
めたことを実行に移し,問題の解決や改善を図ったりする機会を設けることによって,児童のコミュニケーション能力
や自己有用感等を高め,自主的・実践的な態度を醸成する。
ウ 児童の人権意識の向上
いじめは人権を侵害する絶対に許されない行為である。このことをしっかりと受け止め,児童に人権や人権擁護に関
する基本的な知識を確実に身に付けさせ,自分とともに他の人の大切さを認めようとする意欲や態度,行動力を育成す
る。また,児童一人ひとりが大切にされ,安心・安全が確保される環境づくりに努める。
エ 授業づくりの改善と工夫
授業においては,児童に授業規律を徹底させるとともに,児童にわかる,できる喜びや実感を与えられるよう,日頃
から教材研究や授業研究を行うなど指導方法の工夫・改善に努める。(授業で非行を出さない。)
オ 開かれた学校づくり
「振り返りカード」に基づいて、児童の様子を全職員で共有する,地区懇談会(田二っ子を育てる会)の活性化を図
る,学校評議員や校区協議会の制度を活用する等,いじめ防止のために家庭・地域が積極的に相互協力できる関係づく
りを進める。
カ インターネット上のいじめの防止
学級指導や総合的な学習の時間の活動,テレビ放送,全校集会等を通じて,児童にSNS等を含むインターネット上
の不適切な書き込み等が重大な人権侵害行為であることをしっかりと指導し,合わせてインターネットの利用のマナー
やモラルについても学習させる。
また,保護者に対して,フィルタリングの設定やインターネットの利用に関する家庭でのルールづくり等についても
機会を通じて啓発を行う。
(3)早期発見・早期対応
ア 早期発見
いじめの発見の遅れは,早期解決を困難にさせ,問題の複雑化,深刻化につながることがあるため,日頃から児童の
見守りや信頼関係の構築等に努め,児童が示す変化や危険信号を見逃さないよう意識を高く保つとともに,教育相談体
制を整え,いじめを積極的に認知することに努める。
(ア)アンケートの実施
「振り返りカード」
振り返りカードを年間8回(5月・6月・7月・9月・10月・11月・12月・2月・3月)に実施する。実施
にあたっては,児童が素直に自分の心情を吐露しやすい環境をつくるとともに以下の点に留意する。
①事後指導の必要があるため,「記名」で行う。
②回答の時間を十分に確保する。
③アンケート調査は学校で実施する。
④回収する際は,アンケート用紙が他人に見られないように配慮して,学級担任等に直接提出させる。
学級担任等は,いじめアンケートの結果について気になることがあれば,学年主任や生徒指導主任等に相談す
るとともに,直ちに管理職に報告する。また,日常取り組んでいる日記等も利用して情報把握に努める。
(イ)教育相談体制の充実
学級のすべての児童への声かけや,保護者との二者面談を通して,児童や保護者の声に耳を傾け,いじめ等の訴え
があった場合,児童の思いや不安・悩みを十分受け止める。また,養護教諭等と連携しながら,いじめを訴えやすい
環境を整える。
イ 早期対応
いじめを認知した場合,次の(ア)~(エ)に留意して,組織的に迅速かつ適切に対応する。
(ア)安全確保
いじめを認知した場合,直ちにいじめを受けた児童やいじめを知らせてきた児童の安全を確保する。
(イ)事実確認
いじめを認知した場合や,児童がいじめを受けていると疑われる場合は,直ちにいじめの事実の有無を確認する。
(ウ)指導・支援・助言
いじめがあったことが確認された場合は,直ちにいじめをやめさせ,その再発を防止するため,複数の教職員等に
よって,いじめを受けた児童やその保護者への支援や,いじめを行った児童への指導又はその保護者への助言を継続
的に行う。また,その際,対応したことを記録として残しておく。
(エ)情報提供
いじめの早期解決を図るため,事実関係が明確になった情報を,いじめを受けた児童の保護者やいじめを行った児
童の保護者に必要に応じて提供する。
ウ 関係機関との連携
いじめが,犯罪行為として取り扱われるべきものであると認められる場合は,教育的な配慮や被害児童の意向への配
慮のうえで,早期に警察に相談し,適切に援助を求める。なかでも,児童の生命,身体又は財産に重大な被害が生じる
ような場合は,直ちに警察に通報し,連携した対応をとる。
なお,児童の安全確保及び犯罪被害の未然防止のため,警察署との連携が必要と認められる事案については,県の
「きのくに学校警察相互連絡制度」に基づいて適時・適切に連絡する。また,児童相談所や青少年センター等関係機関
との情報交換を適宜行う。
エ インターネット上のいじめへの対応
インターネット上に不適切な書き込み等を行っているとの連絡を受けた場合は,そのサイト等を確認し,デジタルカメラ等で記録したうえで,当該児童及びその保護者に了解をとり,不適切な書き込み等のあるプロバイダに連絡し, 削除を要請する。なお,不適切な書き込み等が犯罪行為と認められる場合は,削除要請を依頼する前に警察に通報・相談する。
(4)教職員の資質能力の向上
「いじめはどの子どもにも,どの学校でも起こり得る問題である。」という基本認識に立ち,全ての教職員が児童と
しっかり向き合い,いじめの防止等に取り組める資質能力を身につけられるよう,本基本方針やいじめ問題対応マニ
ュアル(和歌山県教育委員会),いじめ問題対応ハンドブック(和歌山県教育委員会)などを活用し,学期1回以上
の校内研修を行う。
(5)家庭・地域との連携
本校育友会並びに各地区子どもクラブ,学校評議員,田辺第二小学校校区協議会,田辺第二小学校区民生児童委員会
等の活動を中心として,保護者や地域住民との信頼関係を構築し,児童の家庭や地域での様子を気軽に相談できる体制
を整備する。また,いじめの防止等の取組について,保護者に理解を得て,育友会総会や保護者面談等の機会に情報交
換を行う。さらに,地域住民の学校行事への参加を促したり,明るい笑顔街いっぱい運動の機会を利用したりして,校
外での児童生徒の様子を把握する。
(6)継続的な指導・支援
いじめ対策委員会を中心に関係諸機関(市教育委員会学校教育課や市家庭児童相談室,スクールカウンセラー等)と
連携したケース会議等を定期的に行い,児童の人間関係を継続的に注視していく。その際,いじめを受けた児童につい
ては,継続的な心のケアに努めるとともに,自己有用感等が回復できるよう支援する。
また,いじめを行った児童についても,いじめの背景にある原因やストレス等を取り除くよう支援するとともに,相
手を思いやる感情や規範意識が向上できるよう粘り強く指導する。
さらに,当該児童の保護者と常に連絡を取り合い,家庭での様子や児童の言動を継続的に把握する。
(7)取組内容の点検・評価
いじめ防止等について,具体的な取組状況や達成状況を学校評議員会や学校評価等を利用して確認するとともに,い
じめ対策委員会を中心に学校基本方針を点検し,必要に応じて見直しを行う。
5. 重大事態への対処
(1)重大事態の判断・報告
次のような事態(以下,「重大事態」という。)が発生した際,文部科学省で定めて いる重大事態対応フロー図
(別紙)をもとに,直ちに適切な対処を行う。
1 いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命,心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。
2 いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認
めるとき。
重大事態については,次の事項に留意する。
◆「生命,心身又は財産に重大な被害」については,次のようないじめを受けた児童のの状況に着目して判断する。
○ 児童が自殺を企図した場合
○ 身体に重大な傷害を負った場合
○ 金品等に重大な被害を負った場合
○ 精神性の疾患を発症した場合
◆「相当の期間」については,不登校の定義を踏まえ,年間30日を目安とする。ただし,児童がいじめにより一定期
間,連続して欠席しているような場合にも,直ちに適切な対処を行う。
(2)重大事態の調査の実施と結果の提供
ア 重大事態が発生した場合,直ちに教育委員会に報告する。
イ いじめ対策委員会が中心となって,事実内容を明確にするための調査にあたる。
ウ 調査の際にアンケートを実施する場合は,その旨を調査対象の児童やその保護者に説明するなどの措置を行う
エ 調査により明らかになった事実関係について,情報を適時・適切な方法でいじめを受けた児童及びその保護者に
対して提供する。