研究内容

代謝を通した微生物の理解と利用

当研究室は「代謝」をキーワードに微生物の細胞内で行われている様々な化学反応の制御機構を明らかにするとともに、微生物の代謝経路をデザイン・最適化することで、プラスチックやナイロンなどの化成品原料や医薬品原料を高生産する、新たな微生物を創ることを目指しています。研究分野としては応用微生物学、代謝工学、合成生物学になります。

研究対象の微生物はうまみ調味料(グルタミン酸ナトリウム)などのアミノ酸生産菌であるコリネ型細菌と抗生物質生産菌である放線菌、大腸菌です。


有用化合物の微生物生産

地球温暖化の影響により、石油から作られているプラスチックやナイロンなどの化成品原料を、微生物で生産することが期待されています。自然界に存在する微生物にはそのような化合物を大量に生産するものはほとんどいないため、微生物の代謝経路を改変する必要があります。我々は微生物の代謝経路を自在にデザインし、他の生物種が有する遺伝子の導入や酵素機能の改変などを通して細胞工場として最適化することで、有用化合物を高生産する新たな微生物を創る研究に取り組んでいます。

微生物の増殖・生存と代謝の関係

生命の条件の一つに「代謝機能を有する」ことが挙げられます。一方、「代謝」自体は酵素反応のため、細胞が増殖できない条件でも機能する場合があります。我々は「高温」という条件下で細胞の増殖を停止・遅延させ、その際に働いている代謝経路を詳細に調べることで、代謝のボトルネックを探索するとともに、増殖と独立してどこまで代謝経路が機能するのかを調べています。

栄養源の消費速度を感知するシステム

栄養源であるグルコースは、細胞内に取り込まれると解糖系やペントースリン酸経路、TCAサイクルなどの中央代謝経路を経由して細胞の構成成分やATPなどのエネルギーに変換されます。微生物はグルコースの取り込み・分解に関わる代謝を厳密にコントロールしていますが、我々は微生物がグルコースを消費する速度を感知するシステムも存在すると考え、探索しています。

細菌細胞壁の自在設計

細菌はヒトにはない細胞壁を有し、その種類によりグラム陽性・陰性に分けられます。細胞壁は細胞膜やDNAなど他の細胞構成成分と同じように代謝反応により合成されます。我々は合成生物学的手法を用いて細胞壁合成に関わる代謝反応をデザインすることにより、グラム陽性・陰性を変換した新しい細菌を創ることを目指しています。