光・量子エレクトロニクスII

2016年度 光・量子エレクトロニクスII

  • 講義室:245教室
  • 時限:火曜4限 (2:55pm - 4:40pm)
  • 前半(光エレクトロニクスのための量子光学):4/5(火)、19(火)、26(火)、5/10(火)、17(火)、試験:5/24(火)
  • 後半(光エレクトロニクスのための非線形光学):5/31(火)、6/14(火)、21(火)、28(火)、7/5(火)、12(火)、試験:7/26(火)

板書中心です。後半については講義メモも用意します。

前半の概要

本講義では、フォトン(光子)の集まりとしての光の性質に関する分野である量子光学について学ぶ。光が波動であり、粒子である、ということは様々な場面で聞いたことがあると思う。このような光の二面性を量子力学を用いて定式化するとともに、光の性質を極限まで使いこなそうとする学問が量子光学である。

光は、光ファイバ通信、計測、センシングなど、様々な場面で活用されている。また、光計測を用いて重力波が観測されたことも記憶に新しい。これらの光の応用において雑音の原因となり、感度や精度などの制限を与えるのが、光の量子性である。従って、量子光学を学ぶと、光を応用する際に、光を使って何が実現可能で、何が実現不可能かを知ることができる。また、量子光学を使いこなすと、光の雑音を特定の条件で低減したり、光を使った究極的な暗号を実現することもできる。

一方で、量子光学はなかなかイメージを持つことが難しい分野でもある。本講義では、数式のイメージをできるだけ丁寧に説明するよう心がけるつもりである。

第1回:量子光学の概要と量子力学の復習

第2回:電磁界の量子化

第3回:光の量子状態

第4回:光計測法

第5回:光増幅器

課題プリント(提出不要)

第2回

第3回

第4回

第5回

後半の概要

高強度の光(典型的にはレーザ光)が物質に入射すると、物質内の荷電粒子(主に電子)の振動が光電界に対して非線形に応答する。その結果として生じる様々な現象を総じて非線形光学現象という。非線形光学によって実現される技術には既に身近な製品として実用化されたものもある。また、現在も光に関連する様々な研究で非線形光学が活用される。具体的には、以下のような応用例が挙げられる。

  • 光の周波数を変化させる(波長変換)。身近な例では、緑色のレーザポインターでは、赤外レーザ光を波長変換して緑の光を発生している。
  • 屈折率や吸収率など、物質の光学特性を光によって高速に制御する。これは、超高速光通信における信号処理やレーザ光源の安定化などに活用される。その一方、光通信システムやレーザ光源の性能制限要因にもなる。
  • 非線形光学効果を用いて物質の性質を調べる。これはレーザ分光やレーザ顕微鏡などに用いられる。
  • 光に対して量子力学的に特異な性質を与える。これは秘匿性の高い量子通信や量子計算機などへの応用が模索されている。

本講義では、これらの様々な現象を、別個に現象論的に扱うのではなく、背後に共通して存在する物理描像に立ち返って理解できることを目指す。そのために、非線形光学効果の発生する基本的なメカニズムである非線形分極についてその性質を議論した後、非線形光学効果の様々な応用を概観する。なお、本来、電子系の応答は量子力学的に扱う必要があるが、本講義では、古典的な取り扱いに限定する。

第1回:非線形光学/非線形感受率

第2回:非線形光波伝搬

第3回:第二次高調波発生

第4回:光パラメトリック発生

第5回:光カー効果

第6回:誘導ラマン散乱