新着論文(低水温白化)

Post date: Jan 20, 2016 5:32:26 AM

Scientific Reportsに低水温白化に関する論文が掲載されました。

T. Higuchi, S. Agostini, B.E. Casareto, Y. Suzuki, I. Yuyama, Northern limit of corals of the genus Acropora in temperate zones is determined by their resilience to cold bleaching. Scientific Reports 5, 18467 (2015)

本研究で用いたミドリイシ属3種の中でも最北に分布するヒメエダミドリイシは、高い低水温耐性を示し、13℃の環境で耐え抜きました。低水温下では白化が見られ、光合成、呼吸、石灰化など代謝が大幅に低下しました。その後、水温を上昇させると、光合成活性、共生藻密度が増加し、白化からの回復が確認されました。より南に分布する2種(クシハダミドリイシとエンタクミドリイシ)は13℃で白化し、その後死亡したことから、低水温耐性がサンゴの分布を決める重要な項であることが明らかになりました。

温帯域では、冬の低水温が最大のストレスとなります。低水温時には、共生藻の光合成機能が正常に働かず、サンゴが共生藻から得られる光合成産物が少なくなります。そのため、サンゴと褐虫藻の共生関係が崩れ、白化が起こるのではないかと考えられます。そして、サンゴは低水温時には呼吸や石灰化速度を低下させ、言わば冬眠のようにエネルギー消費を減らすことで越冬を可能にしているのではないかと考えています。