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メキシコ原産の胎生真骨魚、グーデア科ハイランドカープ(Xenotoca eiseni)を使って魚類の妊娠を調べています。グーデア科の胚は栄養リボン(Trophotaenia)と呼ばれる胎盤構造を持ち、母体内で栄養分の供給を受けながら出産まで成長を続けます。私は母体から供給される栄養の実体の一つが卵黄タンパク質ビテロジェニン(Vitellogenin)であることを明らかにしました(Iida et al., Proc Natl Acad Sci USA, 2019)。加えて、栄養リボンにおけるビテロジェニン機構が、クラスリン依存的なエンドサイトーシスであることを示しました(Iida et al., Biochim Biophys Acta Mol Cell Biol Lipids, 2022)。栄養リボン以外にも、体内の消化管も栄養吸収に寄与している可能性を示唆しました(Nomura et al., Biochem Biophys Res Commun, 2023)。
前職の京都大学ではゼブラフィッシュ胚を用いた発生学を、遺伝子組み換えと蛍光ライブイメージングを主な解析手段として実施していました。血管と血球が可視化された遺伝子組み換え系統を用い、血液循環開始の瞬間の動画撮影に成功し、モルフォリノオリゴを用いて責任遺伝子について報告しました(Iida et al., Curr Biol, 2010)。その他、膜分子を主なターゲットに変異体およびトランスジェニック系統を樹立し、心血管系に注目した表現型解析を実施しました(Iida et al., Genes Cells, 2018, Iida et al., Genes Genet Syst, 2019; Iida et al., Biochem Biophys Res Commun, 2020)。現在も野生型ゼブラフィッシュは維持しており、簡便なモデル魚類として使用を継続していく予定です。
卒業研究から博士課程にかけて、名古屋大学理学部でメダカのトランスポゾンの研究に従事していました。現在でも転移能を持つ因子として脊椎動物で初めて見つかったTol2因子を材料として、突然変異の誘発やゲノム改変への影響力を調べました。あるアルビノ系統の変異源となっているTol2コピーを同定し、生殖細胞で再転移を起こすことで子孫の表現型が回復する事例を報告しました(Iida et al., Pigment Cell Res, 2004 & 2005)。この研究の経験は、ウイルスの内在化がゲノム改変に与える影響を探索する、現在の研究に生かされています。