「多くの人にとって、食とは『素晴らしいもの』への欲求を追及することである。そして、古くから『素晴らしいもの』とは、人々の味覚を満たし、喜びを与えるものである。しかし、自然界での法則はそれとは異なる。」
ヴィサルダス•モディ
福島第一原子力発電所事故直後、私たちを脅かす最大のリスクは食糧の供給(潜在的に水の供給)であると感じました。東京にはおいしいレストランが数えきれないほどあります。今までは気楽に食を楽しんできましたが、事故後にその生活は一変。放射線が子どもたちの身体に及ぼす危険についての勉強をした後は「これは安全?」「この産地は大丈夫?」という不信感により、誘惑のままレストランへ足を運ぶことができなくなりました。2011年5月にRADEX RD-1706で測定してみたニラやコリアンダーは当時空間線量が0.09μSv/hだったのに対して、2倍ほどの数値だったことには、未だに驚きます。自分たちで食材を測定しようと調べたところ、測定器は何百万円もするとのこと。そこで、2011年5月杉並区議会と区役所宛ての陳情を作成、その主な項目として、給食食材の測定と結果の公表、学校・園の責任者(校長・園長・栄養士など)への勉強会開催を挙げました。同年6月10日に「杉並あんしんプロジェクト」を発ち上げ、陳情への署名と区民の声を集めて届けました。それでも、自分たちで食材を測りたい、その想いは消えませんでした。
まず機材探しから。ヨーロッバやアメリカ各国にある窓口に電話をし、現地価格で器機を売ってくれないかと何度も交渉しました。が、日本の配給元から買ってくれとの一辺倒。日本の配給元では現地の倍の価格で売っていたり、在庫切れで入手するのに2,3ヶ月かかったりで、苛つく日々が続きました。そんなある日、facebookで運営しているTK&Rのコミュニティで、米国の専門家の方にアドバイスをいただき、やっとリーズナブルで高性能なNaI(Tl)シンチレータほか器機を購入!正直、一家のポケットマネーには痛い何十万円の出費でしたが、とにかく食材測定を可能にしたく、買うことになりました。
器機がアメリカから届いた後は、何日も何ヶ月も眠れぬ夜を過ごしました。まだ鉛の囲いを作る前から、たくさんの食材を買って測って、たくさんのものを見ました。ベッドルームとベランダにサンプルの食材を積み、来る日も来る日もトライ&エラーを繰り返しました。よかれと思って買った器機がうまく動作しなかったり、すべてをTK&R facebook上でシェアしました。こうして自分たちが発見することの共有こそが大切で、その情報はいつでも誰もがアクセス可能であるべきだと思います。(facebookでは、古い情報が埋もれてしまうので、こうしてウェブサイトを発ち上げることにしました。) 11月に鉛を購入して、12月に,念願の「おうちラボ」食材測定器が完成。facebookでアドバイスをくださった方々、東大 小豆川助教、多くの方々のお力添えに感謝しています。測定方法:Mac Book Pro とガンマスペクタキュラーGS1100A (Bee Research製)とをUSBパワーサプライでつなぎます。ガンマスペクタキュラーGS1100A (Bee Research製)と2インチ(5.1cm) NaI(Tl)シンチレーションプロー ブ(アルミナムケース)とをBNCケーブルでつなぎます。ガンマスペクタキュラーGS1100A (Bee Research製)とSound Blaster(サウンドカード)をサウンドケーブルでつなぎます。Sound Blaster(サウンドカード)とMac Book ProとをUSBでつなぎます。使用ソフトウェアは、Marek Dollieser's (University of Sydney Physics)のIntune 4.0とPRA 4.0を使用。鉛の囲いは、鉛シートをぐるぐる巻き筒状に。マリネリビーカーを入れる筒として銅を使用し、鉛の影響を抑えています。マリネリビーカーは、Dr. Pepperのペットボトルとプラスチックの丸い蓋をホットグルーでつなぎ、450mlのタッパーウェアーを切って225mlの容器にし、それらを重ねて作りました。