日本のパワーボートレースでは、艇の形状・エンジン・排気量などによってさまざまなクラスに分かれて競技が行われています。
ハイドロクラスは、主に波の穏やかな平水面で行われる競技です。
船底は特徴的な形状をしており、滑走時に水面と接する箇所の数によって「ワンポイント」や「スリーポイント」などに分類されます。
ワンポイント(通称:ワンピ―)は、競艇でおなじみの船体形状をした競技艇です。国内競技規則では「K400」と呼ばれ、ヤマト発動機製の船外機(2ストローク・直列2気筒・400cc・30馬力)を使用します。最高速度は約80km/h。
スリーポイントは、船体の3点で水面を捉えて滑走するタイプの競技艇です。船体の左右には「スポンソン」と呼ばれるハルを備えており、走行時に空気を取り込んで船体を浮かせることで水面との抵抗を減らし、高速域でのスピードを維持したままコーナーを 旋回できるよう設計されているのが特徴です。
国内では、競艇と同じエンジンを使用するOSY400(最高速度約100km/h)と、専用のレーシングエンジンを使用するO350(最高速度約160km/h)クラスなどが競われています。
フォーミュラクラスは、カタマラン(双胴型)の船体を持つ競技艇です。船底に空気を取り込み、船体を浮かせながら船尾の2点で滑走することで、高い速度性能を発揮します。
直線では船体を水面から浮かせて水の抵抗を減らし、コーナリングでは船体を着水させることで高いグリップを得ることができるため、高速走行と高いコーナリング性能を両立しているのが特徴です。
ドライバーは走行中、エンジンのトリム角を細かく調整しながら、直線やコーナーなど、その状況に応じて艇の特性を最大限に引き出します。
フォーミュラクラスは、搭載するエンジンの排気量や仕様によってクラス分けされており、国内ではF4J、F550、F3000などのクラスが行われています。
F550
F550は、2ストローク550ccの改造船外機を使用するクラスです。スズキやトーハツの30~40馬力程度の船外機をベースにチューニングを施し、約70馬力まで出力を高めたエンジンが使用されています。
近年では環境性能を考慮し、ホンダやトーハツなどの4ストローク船外機を使用する艇も増えています。
最高速度は約100km/hに達します。
F4J
F4Jは、世界的に親しまれてきたF850クラスの後継として登場したクラスです。フォーミュラ艇の登竜門として位置付けられ、世界各国で競技が行われています。
F850は、ヤマハ製2ストローク850cc・70馬力の船外機を使用するワンメイククラスで、最高速度は約130km/hに達しました。
現在のF4は、マーキュリー製4ストローク1000cc・60馬力の船外機を使用するワンメイククラスとして行われています。日本では普及を目的として、国産メーカーの60馬力クラスの船外機も使用されています。
F4Jの最高速度は100km/hを超えます。
F3000
F3000は、日本国内で行われているフォーミュラ艇の上位クラスです。
マーキュリー製2ストロークV6のパワーヘッドに、専用のレーシングミッドセクションとギヤケースを組み合わせたレーシングエンジンを使用します。
エンジンは2000cc、2400cc、2500ccの3種類から選択でき、キャブレター仕様とEFI仕様のいずれも使用可能です。
異なる排気量・エンジン仕様による性能差を重量で調整し、競技の公平性を高めています。最高速度は、最近のGPS計測で200km/hを超える記録も出ています。
Vクラスは、船底の断面形状が「V字型」であることからその名が付けられた競技艇です。ランナバウト(Runabout)をベースとすることから、選手や関係者の間では「ランナ」と呼ばれることもあります。
一見すると一般的なボートに似ていますが、Vクラスの艇は高速走行に特化して設計されています。通常のボートに比べて船体は軽く、細く、そして高速走行に耐えられる強度を持たせているのが特徴です。
操縦方法は一般的なボートと同じく、ハンドルとシフトレバーを使用します。一方で、競技艇ならではの装備も備えています。走行中にエンジンのトリム角を細かく調整するため、ハンドルにトリム操作用のスイッチを備えているほか、自動車と同じように足でスロットルを操作する方式が採用されています。
Vクラスは、搭載するエンジンの排気量や仕様によってクラス分けされています。
V250
V250は、小型のランナバウトに15馬力の船外機を搭載する、Vクラスの入門的なクラスです。
400V
400Vは、競艇用エンジンや4ストローク30馬力クラスの船外機を使用するクラスです。V250とともに、Vクラスの入門的なカテゴリーとして位置付けられています。
V850
V850は、ヤマハ製2ストローク・70馬力の船外機を使用するクラスです。平水でのレースだけでなく、波のあるオフショアでのレースも行われています。
V3000
V3000は、マーキュリー製2ストロークV6エンジンを搭載するVクラスの上位カテゴリーです。250~280馬力のエンジンを使用し、V850と同様に平水だけでなく、オフショアでのレースにも参戦します。
オフショアクラスは、外洋でのレースにも対応できる高い走航性能と耐久性を備えた競技艇です。カタマラン(双胴型)やVハル型など、船体の形状はさまざまで、エンジンの排気量や種類、搭載するエンジンの数、船体の全長などによって細かくクラスが規定されています。
国内では、沿岸域や湖などを舞台にレースが行われていますが、オフショアレースの本場はヨーロッパとアメリカ。ヨーロッパでは、港をスタートして別の港を目指す、まさに海上を舞台とした航海型のレースも行われています。
日本でも、オフショアレースには長い歴史があります。
1961年には「東京―大阪太平洋1,000kmモーターボートマラソン」が開催され、ヤマハもCAT-21で参戦して優勝。翌1962年の第2回大会でもSTR-18で総合優勝を果たしました。
そして1968年には、日本のオフショアレースを代表する大会となった「熱海オーシャンカップパワーボートレース」がスタート。熱海~初島沖を舞台に、国内最大規模のパワーボートレースとして長く開催されました。第1回大会には68隻、100名もの選手が参加し、その後も多くの選手や大型艇が集まる、日本のオフショアレースを象徴する大会として発展していきました。
1995年の第28回大会を最後に幕を閉じましたが、熱海オーシャンカップをはじめとする数々の大会を通じて、日本のパワーボートレースは発展してきました。
国内では、OFF4からOFFスーパーまでのクラスがあり、時代によってさまざまなクラスで多くの選手が競技を楽しんできました。なかでも、かつて大きな人気を集めたのがOFFオープンクラスです。多くの参加艇が集まる国内オフショアレースの花形クラスとして盛り上がり、日本から海外のレースに挑戦する選手もいました。
現在、国内で特に参加艇が多いのがOFF2クラスです。28~30フィート程度の船体に船外機を2基搭載したカタマラン艇や、大排気量のガソリンV8エンジンを1基搭載したVハル艇など、異なるタイプの競技艇が参加しています。最高速度は150km/hを超えます。
海外では、大排気量のV8ガソリンエンジンを2基搭載した大型艇によるレースも行われており、最高速度が200km/hを超える艇も存在します。
現在の日本でも、オフショアレースは5月の大阪湾や12月の神奈川県・芦ノ湖などで開催されています。
国内にもさまざまな競技艇がありますが、海外に目を向けると、さらに多種多様なパワーボートが活躍しています。
海外のレースやイベントで撮影した競技艇など一部をご紹介します。