Yanagisawa, Susumu（柳澤 将）
学位: 博士（工学）
所属: 琉球大学理学部 物質地球科学科 物理系
住所: 沖縄県中頭郡西原町千原１
職名: 准教授
研究テーマ
物質の表面、異物質の接触する領域（界面）での、原子や分子のスケールで発現する未知の物理・化学現象をコンピュータ上のシミュレーションで調べている。
近年は有機エレクトロニクスと関係のある物質中での、電子に由来する物性や現象に注目している。
研究分野: 物性物理、物理化学、量子化学
主に以下の対象について、電子物性の計算シミュレーションを行ない、表面・界面や分子の物理的・化学的性質の理論的予測を進めている。
有機半導体と金属表面との界面での原子配置、電子準位接続
有機半導体結晶・薄膜のバンド構造
有機結晶中でのワニエ関数・飛び移り積分の見積もりやキャリア輸送の性質
気相分子の基底状態・励起状態の分子構造・吸収スペクトル
新規の触媒材料・電池材料の酸化物（ペロブスカイト、TiO2など）の電子物性
無機半導体材料の電子構造、単結晶成長過程のシミュレーション
理論計算法・プログラムの高度化に向けた研究
高精度なバンド計算（GW近似: GW space-time法）プログラムの整備・開発
分子の光学スペクトル計算の高度化: 長距離補正法を用いた時間依存密度汎関数理論（LC-TDDFT）
主な研究実績
1. 有機半導体薄膜における電荷注入準位の表面分子配向への依存性について
S. Yanagisawa, Jpn. J. Appl. Phys. 59, 031002 (2020).
2. 有機結晶におけるワニエ関数の生成、および、結晶中での分子間飛び移り積分の理論的見積もり
S. Yanagisawa, K. Yamauchi, T. Inaoka, T. Oguchi, and I. Hamada, Phys. Rev. B 90, 245141 (2014).
S. Yanagisawa and I. Hamada, J. Appl. Phys. 121, 045501 (2017).
3. 有機層と金属層の界面での、電子準位接続を支配する界面電気二重層に関する研究
S. Yanagisawa, K. Lee, and Y. Morikawa, J. Chem. Phys. 128, 244704 (2008).
K. Toyoda, I. Hamada, K. Lee, S. Yanagisawa and Y. Morikawa, J. Chem. Phys. 132, 134703 (2010).
4. 密度汎関数理論による遷移金属系の研究: 等核二原子分子の分光学定数の予測
S. Yanagisawa, T. Tsuneda and K. Hirao, J. Chem. Phys. 112, 545 (2000).
5. 時間依存密度汎関数法による分子の吸収スペクトルの計算: 方法論、プログラムの整備・開発
Y. Tawada, T. Tsuneda, S. Yanagisawa, T. Yanai and K. Hirao, J. Chem. Phys. 115, 8425 (2004).
S. Yanagisawa, T. Tsuneda and K. Hirao, J. Theor. Comput. Chem. 4, 265 (2005).
6. 実験家との共同研究（最近の成果）
有機半導体ルブレン単結晶のフォノン分散の実験・理論による解析
有機半導体のp/n混合薄膜における電荷注入準位を支配する、静電エネルギーと分極エネルギーの役割
Y. Uemura, S. A. Abd-Rahman, S. Yanagisawa, and H. Yoshida, Phys. Rev. B 102, 125302 (2020)
ルテニウム錯体の酸化・還元条件による吸収スペクトルの変化に関する電子的起源の解明
受賞学術賞
"Highly Valued Reviewer Certificate", Surface Science, 2014.
Poster Award "THE BEST 10 OUT OF 120 POSTERS", SUNCAT Summer Institute 2013, August 25-30 2013, SLAC National Accelerator Laboratory/Stanford University, CA.
研究費等
科学研究費補助金（研究代表者）
基盤研究（C）「有機半導体結晶における有限温度下での電子物性の第一原理計算」, 2023-2025（予定）.
第8回 国際共同研究加速基金（国際共同研究強化）「有機-金属界面での準位接続の精密予測に向けたGW近似プログラムの開発」（受入共同研究者：Prof. Dr. A. Schindlmayr, Paderborn University, Germany）, 2017-2018
若手研究（B）「精密な構造決定・バンド計算による有機結晶でのキャリア輸送の理論的研究」, 2014-2016.
科学研究費補助金（研究分担者）
新学術領域研究【3D活性サイト科学】計画研究「有機半導体の活性サイトの理論」, 2014-2018.
基盤研究（C）「Si, Ge表面反転層サブバンド構造の異方性と歪みによる物性制御」，2011-2013.
特定領域研究「超並列大規模量子ダイナミクスシミュレータの開発・応用」, 2005-2008.
大型計算・研究資源獲得
「GW space-timeコードの大規模な有機-金属界面への適用のための高効率化」学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点(JHPCN)公募型共同研究課題: 2017.04-2018.03, 2018.04-2019.03, 2019.04-2020.03, 2020.04-2021.03
「GW space-timeコードの有機-金属界面系への適用に向けた高度化」平成29年度HPCIシステム利用研究課題, 2017.04-09.
共同研究
「有機半導体の有限温度下での電子構造の評価に向けた理論計算スキームの確立」物質・デバイス領域共同研究拠点（大阪大学産業科学研究所）, 2017.
「有機-金属界面での電子準位接続の精密決定に向けたGW space-timeコードの高速化」東北大学サイバーサイエンスセンターH28年度共同研究[B] 大規模課題, 2016.
「進化的アルゴリズムを利用した有機半導体結晶の電子物性の理論的探索」物質・デバイス領域共同研究拠点（大阪大学産業科学研究所）, 2016.
「有機半導体結晶における最局在ワニエ関数の研究:マルチスケールシミュ レーションの基盤構築に向けて」物質・デバイス領域共同研究拠点（大阪大学産業科学研究所）, 2015.
「高精度ファン・デル・ワールス密度汎関数による分子性結晶の理論」 物質・デバイス領域共同研究拠点（大阪大学産業科学研究所）, 2014.
「有機分子結晶の電子物性の第一原理的研究: 分子間相互作用の精密な記述による新規物性の開拓」物質・デバイス領域共同研究拠点（大阪大学産業科学研究所）, 2013.
奨学寄附金
「色素増感太陽電池における光励起の基礎プロセスの機構解明・材料最適化に向けた理論的研究」公益信託 宇流麻学術研究助成基金, 2012.
「有機分子間の相互作用に誘起された電子物性の理論的解明・制御」日揮・実吉奨学会, 2011.
その他
「色素増感太陽電池における光励起プロセスの機構解明・材料最適化に向けた理論的研究」平成２３年度 琉球大学若手研究者支援研究費, 2011.
招待講演・講義等
「密度汎関数理論: 基礎から計算適用例まで」，第13-14回 量子化学スクール，岡崎コンファレンスセンター [講義] 2023.12.5, 2024.12.10
"Determination of the ionization energy and the electron affinity of organic molecular crystals from first-principles: Dependence on the molecular orientation at the surface", S. Yanagisawa, The 10th Quantum Science (QS) symposium, ICCMSE 2024, Galaxy Hotel, Crete, Greece September 26-29, 2024 (Invited Talk; Online)
"Role of the molecular configuration on the electronic structure of organic crystals: A combined DFT and GW study", S. Yanagisawa and I. Hamada, The 3rd Univ. Ryukyus International Symposium of Theoretical and Computational Science (RIS-TCS 2020), Univ. of the Ryukyus, March 20-22, 2020 (Invited Talk; Cancelled; Only Abstract uploaded on the web)
"Enhancement of the GW space-time program code for accurate prediction of the electronic properties at surfaces and interfaces in organic electronics materials", S. Yanagisawa, 29th Workshop on Sustained Simulation Performance, Cyberscience Center, Tohoku University, March 19-20, 2019 (Invited Talk)
"Determination of geometric and electronic structures of organic crystals from first principles: Role of the molecular configuration on the electronic structure", S. Yanagisawa, 3rd Computational Chemistry (CC) Symposium of ICCMSE 2017, The Met Hotel, Thessalonki, Greece, April 21-25, 2017 (Invited Talk)
「有機半導体における結晶構造・分子配置の電子状態への影響について」，研究会「化学反応のポテンシャル曲面とダイナミックス」，沖縄青年会館 [招待講演] 2017.04.09
「有機結晶・会合体における分子軌道間相互作用の電子構造への影響に関する理論的研究」，第4回CUTEシンポジウム:コンピュータ化学「京コンピュータと理論化学」，三重大学極限ナノエレクトロニクスセンター(MIE-CUTE) [招待講演] 2016.06.16
"First-principles investigation on the electronic states of the organic single-crystals and the organic-metal interfaces: importance of accurate prediction of the crystal and the interface structures", S. Yanagisawa, Seminar in Prof. Yabing Qi's group, Okinawa Institute of Science and Technology (OIST), December 15, 2015 (Invited Talk)
「局所構造に由来する物性の第一原理計算による理論的研究」，新学術領域研究「3D活性サイト科学」春の学校，奈良春日野国際フォーラム [講義] 2015.5
「有機半導体におけるバンド分散の起源・分子間相互作用について −亜鉛フタロシアニンなどを例に−」，元素戦略CREST合同研究会「物性理論と量子化学の接点〜相対論の視点を中心として」[招待講演] 2014.12
"Theoretical investigation of the impact of the intermolecular interaction on the electronic structures in organic semiconductors", S. Yanagisawa, International Workshop of Computational Nano-Materials Design on Green Energy, Osaka University, and S-1 International Workshop of Computational Nano-Materials Design on Green Energy, Osaka University, June 1-3, 2014 (Invited Talk)
「有機分子結晶・会合体での分子間相互作用の電子構造への影響の理論的研究: ルブレン, 亜鉛フタロシアニンなどを例に」, 大学産業科学研究所ナノテクノロジーセンター 若手セミナー [招待講演] 2014.2
「有機半導体での分子間相互作用の電子構造への影響に関する理論的研究 -ルブレン, 亜鉛フタロシアニンなどを例に-」, 東京大学柏キャンパス新領域研究科内 [招待講演] 2014.1
"Intermolecular interaction as origin of the redshift in absorption spectra of Zinc-Phthalocyanine from first-principles",S. Yanagisawa, T. Yasuda, K. Inagaki, Y. Morikawa, K. Manseki and S. Yanagida, 5th Japan-Czech-Slovakia International Symposium on Theoretical Chemistry, 2013.12 (Invited Talk)
「GW近似による有機単結晶のバンド構造」, 第3回大阪大学産業科学研究所共同研究研究会 [招待講演] 2013.2
「First-principles studies on electronic properties of surfaces and interfaces: Energy level alignment and interaction at organic/metal interfaces」 , コンピュテーショナル・マテリアルズ・デザイン（CMD）ワークショップ, 2011.3
登録済特許
電子デバイス, 電子デバイス製造方法, 電子デバイス製造装置, 電界効果トランジスタデバイス, 有機電界発光素子及び制御方法（公開番号:2012-054490）
論文誌査読
Surface Science, Journal of the Physical Society of Japan, Physica Status Solidi - Rapid Research Letters, International Journal of Modern Physics B, e-Journal of Surface Science and Nanotechnology
Journal of Physical Chemistry Letters, Journal of Physical Chemistry A, Journal of Physical Chemistry C, Journal of Chemical Theory and Computation, Inorganic Chemistry, Chemical Physics Letters, RSC advances, ECS Journal of Solid State Science and Technology, Molecules
Optical Materials, Japanese Journal of Applied Physics, CrystEngComm, Applied Surface Science, Crystal, Applied Physics Express, Corrosion and Materials Degradation, Materials
所属学会、社会活動など
応用物理学会、日本物理学会、日本化学会、理論化学会
東京大学物性研究所 共同利用スーパーコンピュータ課題審査委員
Editorial Board Member, Energies, MDPI
研究会や会議の共同企画・開催
担当講義
学部共通教育
物理学I（力学; 2011-2016, 2023-）
物理学II（電磁気学; 2011-2016, 2025）
学部専門教育
波動論（2014-2021.7, 2025）
力学（2018-2020, 2022-）
熱力学（2020-2021.7）
物理学基礎演習II（2011-2016）
基礎ゼミI/II（2012よりほぼ隔年-）
物理学トピックス（2011よりほぼ隔年: 各教員で1回ずつ担当）
量子力学演習（2014）
数値解析演習II（2014: 3回分担当）
大学院講義
表面物理基礎論（2011-2020, 2022-）
資格など
TOEIC Speaking and Writing Tests: Speaking 150/200, Writing 160/200
TOEIC テスト: 810/990
職歴
2014 琉球大学理学部 物質地球科学科 物理系 准教授（2021.7-2022.1 休職）
2011 琉球大学理学部 物質地球科学科 物理系 助教
2009 大阪大学大学院工学研究科 精密科学・応用物理学専攻 特任研究員
2004 大阪大学産業科学研究所 特任研究員
2003 東京大学インテリジェントモデリングラボラトリー研究機関研究員
学歴
2004 東京大学 博士(工学) (指導教官: 平尾 公彦 教授)
2003 東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻 博士課程 単位取得の上, 退学
2000 東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻 修士課程 修了
1998 東京大学工学部応用化学科卒業
1994 東京大学教養学部理科II類入学