研究 Research

最近の論文 Recent papers

Kato M, Yamamori L, Imada Y, Sota T (2023) Recent origin and diversification accompanied by repeated host shifts of thallus-mining flies (Diptera: Agromyzidae) on liverworts and hornworts. Proceedings of the Royal Society B 290: 20222347. DOI: 10.1098/rspb.2022.2347.

Sato C, Nendai N, Nagata N, Okuzaki Y, Ikeda H, Minamiya Y, Sota T. (2023)Origin and diversification of pheretimoid megascolecid earthworms in the Japanese Archipelago as revealed by mitogenomic phylogenetics. Molecular Phylogenetics and Evolution 182:107735. DOI: 10.1016/j.ympev.2023.107735

Araki Y, Sota T (2023) Whole-genome resequencing reveals recent divergence of geographic populations of the dung beetle Phelotrupes auratus with color variation. Ecology and Evolution 13:e9765. DOI:10.1002/ece3.9765.

周期ゼミの生活史制御機構

どのように幼虫期間を13年・17年に制御しているのか、生活史のレビューと仮説の提唱 

OPEN ACCESS

https://esj-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/1440-1703.12354

Sota T (2022) Life-cycle control of 13-year and 17-year periodical cicadas: a hypothesis and its implication in the evolutionary process. Ecological Research [published online]

こちらも御覧ください

周期ゼミ研究の最新レビュー

Simon C., Cooley JR, Karban R, Sota T (2022) Advances in the ecology and evolution of 13- and 17-year periodical cicadas. Annual Review of Entomology 67:457-482. http://arjournals.annualreviews.org/eprint/ZXSNGWJ5GJCKRKGMTCEC/full/10.1146/annurev-ento-072121-061108

新刊:オサムシの進化生物学

Evolutionary Biology of Carabus ground Beetles -How Species Richness Increases

Springer, 2022

これまでのオオオサムシ亜属の研究をまとめた本を出版しました。

種の多様性はどのように産み出されるのか

絶え間ない進化の中で,種はいかにして分かれ,また多種の共存が可能になるのでしょうか.適応と種分化,近縁な種の共存機構について,系統進化学や遺伝学を含めた多角的なアプローチで研究しています.

飛翔多型をもつ甲虫の全球的分散と種多様化

既知生物種の5分の1を占める甲虫類の種多様性は,中生代に放散して広く分散した各系統群が大陸移動により分断され多様化する過程と,大陸の分断後に飛翔や漂流により各大陸に移動分散したのちに放散する過程によりもたらされた.この研究では,後翅が退化した種を含み,系統群全体としては飛翔多型を持ちながら,汎世界的に分布する3つの甲虫系統群(オサムシ亜科、ハンミョウ科、ヒラタシデムシ亜科)を対象に,各大陸での移入と多様化の起源と、大陸間の系統分化年代を明らかにし,大陸の地史,系統群の移動分散過程と種の多様化の相互関係を解明する.また,後翅の退化による飛翔能力の喪失と種多様化の関係を検証する. 

交尾器形態の進化と種分化

体内受精をする動物の交尾器は,近縁種の間でも驚くほど多様で,また極端な形をするものもみられる.日本固有のオオオサムシ亜属では,雄交尾器と雌交尾器が鍵と鍵穴のように対応して進化していて,雌雄の交尾器の共進化を研究する上で,格好の材料を提供している.

オオオサムシ亜属の交尾器進化について,交尾器形質に作用する淘汰と,形態の種間差に関与する遺伝子に着目して研究を行っている.


陸貝食性オサムシの多様化

オサムシの食性は,大きく分けると昆虫食,ミミズ食,陸貝食(カタツムリ食)に分けられる.中でも陸貝食は,800種以上いるオサムシ亜族の約4割をしめている.陸貝食では,幼虫は陸貝だけを食べるが,成虫も繁殖のために陸貝を食べなければならない.成虫が陸貝を襲う方法は,殻を噛み砕くか,殻の中に頭を突っ込むかのいずれかである.2つの食べ方に対応して,しばしば頭部が肥大して噛み砕く力の強い巨頭型と,頭部が細長くなって頭を突っ込むのに都合のよい狭頭型の形態分化が見られる.

日本固有のマイマイカブリは,狭頭型の典型であるが,佐渡島に生息する亜種サドマイマイカブリだけは巨頭化している.この種の中の形態分化の遺伝的基盤について研究を行っている.

また,中国やヨーロッパの陸貝が豊富な石灰岩地帯には,極端な巨頭型と狭頭型が分布し,両方が共に生息する場所もある.陸貝食の形態多様化と餌となる陸貝のファウナの関係について,調査を行っている.

周期ゼミの進化

アメリカ東部には,17年または13年に一度大発生をするMagicicada属の周期ゼミが住んでいる.発生周期は,17年または13年の幼虫期の長さで決まっている.この属に は,Decim,Cassini,Deculaという3つの種群が含まれる.ひとつの場所には1つの年級群しかいない.これをブルードという.ブルード は,定義上,17年ゼミが17,13年ゼミが13あることになるが,現在発生しているのは,17年が12ブルード,13年ゼミが3ブルードだけである.各ブルードに は,異なる種群の複数の種が含まれていて,同じ場所で,2種または3種が同時に発生することが多い.

13年,17年という幼虫期の長さはどのように制御されているのか,そしてこのような長い幼虫期をもち,種間で同調した発生をする昆虫がどのように進化したのか,日米の周期ゼミ研究者と共同研究を進めている.周期ゼミ研究への参加者を募集中.

連絡先:曽田貞滋(京都大学名誉教授) 

前職:京都大学 大学院理学研究科教授 動物学教室 動物生態学研究室)

Contact: Teiji Sota, Prof. Emerit., Kyoto University

Email: sotateiji(at)gmail.com