予備知識 :高校程度の数学知識. たとえば, 松坂(著)数学読本1巻から5巻程度の知識があれば十分です.
内容到達度 :大学で線型代数を学ぶのに十分な内容(ジョルダン標準形まで)を網羅しています. 特に気になった, 取り上げられなかった題材として, 2次曲面の分類(2次曲線の分類まではこの本で扱われてます.), テンソル積などがあります.
読者対象 :高校数学程度の素養と現代数学に興味をもつ人. 線型代数を体系的に, そして網羅的に学びたい人.
特徴 :文章の記述に論理的ギャップが少なく, 数学の内容を論理式ではなく平易な文章で書いている. その反面, 数学的記述に慣れた人にはその記述が冗長, もしくはくどく感じられる. 例題が豊富で理解を促すように工夫されている. また本の内容と演習問題が教育的に配置されており, 前から順をおって理解し, 解くことができるようにされているが, 演習問題の解答は数値的な答えがほとんどである. 特に証明問題の解答はほぼない. しかし証明問題はほとんど簡単なものばかりであり, 著者の著作の中では, 数学読本を除き, 演習問題は最も易しい. 演習問題で最も難しいと感じたものを下に3つ挙げる.
1. 第3章§7問題11
2. 第6章§7問題11
3. 第10章§7問題1
なお上の1番目の問題は数学的な難しさというよりも煩雑な表記上の問題である.
第1章を2,3次元の簡単な幾何学にあてて抽象的なベクトル空間に入っていけるように配慮されている. 8章のジョルダン標準形がこの本の1つの中心部, もしくは目標である. 後の9,10章(内積空間, 双1次形式, 2次形式)はベクトル空間の幾何学的な側面を扱っている. 10章の後半では計算や証明は詳しく述べられていない箇所があるが, ここまで読んだ読者ならば簡単に埋められるであろう. 付録では実線型変換の標準形などさらに進んだ内容が取り上げられている.
読了期間 : 個人的な経験からいうと, 全演習問題を解くことを含めて約1年要しました.
この本を読む際に参考にした本 : 佐竹一郎(著)「線型代数学」
誤字・脱字など :
p.195 × 3項点 → ○ 3頂点
p.383 × Aが半正値 → ○ gが半正値