2019年2月20日
2019年に入り、あっという間に時間が過ぎていますが、2月8日にアメリカのポートランドで行われたSPSPのカンファレンスにおいてポスター発表を行ってきました。3年ぶりに参加しましたが、正直なところ、ソーシャル・キャピタルという概念自体に中々興味をもってもらうのが大変だなという感想をもちました。
他の研究者の発表を見ていると、ソーシャル・サポートの文脈で、"Capitalize"という言葉があちらこちらに見られていました。要は、「嬉しいことがあった時に、他の人に伝えて一緒に喜ぶ」ような話を指すものと現在のところ理解しています。詳細はまた別の機会にしたいと思うのですが、これらのつながりについて考えてみたいと思いました。
2018年12月30日
2018年、平成30年も残り僅かとなりました。今年も大変お世話になりました。新年を迎えるにあたり、年末までに溜まった仕事の大掃除を行なっています。
さて、去る9月26日の日本心理学会第82回大会におけるソーシャル・キャピタル研究会のシンポジウムに関する考察がまだでしたので、この場で書き記しておきたいと思います。
「ソーシャル・キャピタルと健康,幸福感に関する研究の新展開2:心理学,社会疫学,政治学の協働可能性を探る」という題目で企画しました本シンポジウムに、たくさんの人々に足をお運びいただけたこと、まずは改めてお礼申し上げます。
今回は、稲葉陽二先生(日本大学法学部)、高木大資先生(東京大学大学院医学研究科・医学部)、福島慎太郎先生(東京女子大学)、芳賀道匡(日本大学文理学部)がこれまでの研究の一部を発表し、浦 光博先生(追手門学院大学)に、総合的な問題提起をいただきました。
発表者の側からは、地域やコミュニティのソーシャル・キャピタルと健康や幸福の関連についてのエビデンスだけでなく、個人と他者の幸福の結びつきのお話や、社会的実装へ向けた取り組みのお話、学校区、市町村、国など各レベルのソーシャル・キャピタルそれぞれで関連する指標が異なる(心の健康は学校区?)といったお話など多様なお話をご提供いただきました。そして、概念の整理やソーシャル・キャピタルの蓄積の在り方等について議論が行われました。
シンポジウムを経ても議論はまだまだ続いています。それらを経て、幾分の共通見解として、ソーシャル・キャピタル研究を通して既存の多様な知見を整理する統合的枠組みの構築を目指すこと、そしてそれを踏まえて社会的実装の支援を目指すことが提起されました。
これらについて、今後も、継続的な議論を行っていこうと思います。
2018年9月23日
9月26日の日本心理学会第82回大会の2日目においてソーシャル・キャピタル研究会のシンポジウムを行います。時間は15:30-17:30、場所は仙台国際センター会議棟2Fです。
内容は下記の通りとなっています。
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シンポジウム題目:
ソーシャル・キャピタルと健康,幸福感に関する研究の新展開2:心理学,社会疫学,政治学の協働可能性を探る
話題提供者:
稲葉陽二先生(日本大学法学部)
「ソーシャル・キャピタルの計測と分析について:2013年社会関係資本全国調査からの知見」
高木大資先生(東京大学大学院医学研究科・医学部)
「健康科学におけるソーシャル・キャピタルの社会実装と、介入対象としての「コミュニティ」の再考」
福島慎太郎先生(東京女子大学)
「自他の幸福が両立した心理状態が促進される条件:ソーシャル・キャピタルの階層的な効果」
芳賀道匡(日本大学文理学部)
「学生の主観的ソーシャル・キャピタルと精神的健康の関連:一般的信頼を用いた縦断研究」
(当日の発表は逆の順の予定です)
指定討論者:
浦 光博先生(追手門学院大学)
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表題の通り、心理学だけでなく、政治学や公衆衛生学から、ソーシャル・キャピタルと関連する変数について検討した結果を持ち合い、一般社会における実践方法を探るような方向性を志向しております。
特に、今回特別にお招きしました稲葉陽二先生は、ソーシャル・キャピタルの基礎理論を一般書籍としてご刊行されるなど、政治経済学のほか一般に広く知られております。
稀少な機会に違いないので、ぜひお越しくださると幸いです。ソーシャル・キャピタルについて殆ど知らない方も想定しております。異なるからこそ豊かな知恵が集まるということで、たくさんお話ができると幸いです。
2018年8月25日 公認心理師とソーシャル・キャピタル
日本における初めての心理学の国家資格として「公認心理師」ができ、その活動内容を含んだ法律「公認心理師法」が昨年9月に施行されました。もうすぐ、その第一回の受験があるようです。
どうやら、その受験の出題範囲に、予てより研究している「ソーシャル・キャピタル」が入っているようでした。それで、少しだけではありますが、公認心理師を受験しようとしている方々向けに、ソーシャル・キャピタルについて簡単に記しておきたいと思いました。
国家資格であるために、公認心理師は既存の心理職のもの以上に法的制度との関わりが深い資格となっています。そのため、公認心理師志望者には、それらの法律に関するより深い理解が求められます。この点が、臨床心理士など他の心理の資格と大きく異なる点の一つのようです。
ソーシャル・キャピタルは、それらの法律のうち、地域保健法第四条第一項の規定に基づく地域保健対策の推進に関する基本的な指針(平成6年12月)の改正(平成24年7月)内容文の冒頭に記述されています。そこでは、「住民の自助努力に対する支援を充実するとともに、共助の精神で活動する住民に対し、ソーシャルキャピタルを活用した支援を行うことを通じて、多様化、高度化する住民のニーズに応えたサービスを提供する必要がある」とあります。つまり、地域保健法(および健康増進法)の改正とソーシャル・キャピタルは密接に結びついているわけです。
それでは、そのソーシャル・キャピタルとは何か。代表的な概念の定義を紹介します。
→人々の協調行動を活発にすることにより、社会の効率性を高めることができる「信頼」「互酬性」「ネットワーク」といった社会組織の特性(Putnam, 1993)
このソーシャル・キャピタルの定義は、著名な政治学者であるPutnamが作成したものですが、政治学だけでなく社会疫学、犯罪学などにおいて広く使用されています注1。ソーシャル・キャピタルは他に類を見ないほど広範な領域で研究されていますが、公認心理師としてはこの定義を知っておけば十分だと思います。
この定義の大事なポイントとしては次の二点です。
① (個人の変数ではなく)社会環境の変数(風土変数)であること注2、3。
② 協調行動はソーシャル・キャピタルが豊かであることの結果であり、ソーシャル・キャピタルそのものではないこと。
地域保健法や健康増進法、定義と合わせて、上のポイントを覚えておけば要点は大丈夫だと思います。近い将来、公認心理師がソーシャル・キャピタルの醸成に寄与する活躍がみられると良いなと思っています。
注1 社会疫学などの健康関連領域において、ソーシャル・キャピタルは、ソーシャル・サポートの上位概念に位置付けられることがあります。ソーシャル・サポートに含まれない信頼などの要素を含むため、芳賀・高野・羽生・西河・坂本(2016)は別の概念であるとして論じています。
注2 ちなみに、芳賀・高野・羽生・坂本(2017)は、Kawachi, Subramanian, & Kim(2008 藤澤・高尾・濱野訳2008)などを参考に「社会的資源の利用可能性をコミュニティに蓄積される資本とみなした概念」として再定義をしています。
注3 一方、経済学や社会学などにおいては、ソーシャル・キャピタルは個人のネットワークに埋め込まれた資源(Lin, 2001 筒井・石田・桜井・三輪・土岐訳2008)などの別の定義を用いて論じられています。
【参考文献】
厚生労働省(2012). 地域保健対策の推進に関する基本的な指針の一部改正についてRetrieved https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000050854.pdf(2018年8月23日)
芳賀道匡・高野慶輔・羽生和紀・西河正行・坂本真士(2016).大学生活におけるソーシャル・キャピタルと主観的ウェルビーイングの関連. 心理学研究, 第87巻第3号, pp.273-283.
芳賀道匡・高野慶輔・羽生和紀・坂本真士(2017). 大学生活における主観的ソーシャル・キャピタル尺度の開発. 教育心理学研究, 第65巻第1号, pp.77-90.
Kawachi, I., Subramanian, S. V., & Kim, D. (Eds.) (2008). Social capital and health. New York: Springer. (カワチ, I.,スブラマニアン, S. V., & キム, D. (編) 藤澤由和・高尾総司・濱野 強(監訳) (2008). ソーシャル・キャピタルと健康 日本評論社)
Lin, N. (2001). Social capital -A theory of social structure and action. Cambridge, UK: Cambridge University Press (リン, N. 筒井淳也・石田 光規・桜井政成・三輪 哲・土岐智賀子(訳) (2008). ソーシャル・キャピタル―社会構造と行為の理論 ミネルヴァ書房)
Putnam, R. D.(1993). Making democracy work: Civic traditions in modern Italy. Princeton, NJ: Princeton University Press(パットナム, R. D. 河田潤一訳(2001). 哲学する民主主義―伝統と改革の市民的構造 NTT出版)
2018年7月7日
日本大学法学部の大学院特別講義において講演を行いました。
講演では、最近四半世紀における学生および家庭の経済状況の変化により大学生活時間が短くなっていることを背景に、学生のウェルビーイングが低下している可能性を指摘したうえで、人々のつながりを介して利用できる資源の利用可能性すなわちソーシャル・キャピタルを豊かにする必要があることを報告しました。
参加者の方々からは、大学の歴史に関することからソーシャル・キャピタルを豊かにする具体的な方法まで、沢山ご質問をいただきました。明治以降の公立の教育だけでなく、それ以前からの私塾がソーシャル・キャピタルを作ってきた可能性や、いわゆるアクティブラーニングをすると、ソーシャル・キャピタルは豊かになるのだろうか等について、もっとじっくり討論をしたいと思いました。また、今回お招きいただきました稲葉陽二先生のご研究にある中間層(中流)の存在の重要性について、大学の諸問題とつなげて議論したハイライトは、心に残りました。
またそのうちどこかで、この内容を話せる機会があればと思います。
2017年12月10日
第一回ポジティブ心理学研究会において発表者として参加してきました。
最近四半世紀における大学の爆発的増加、学生人口の増加による大学の存在意義の揺らぎを感じ、でもそれを新たな問題について考える契機として捉えていくにはどうすれば良いか。これが私の最近の関心事でした。
発表で主張したのは、12世紀以来、大学が蓄積し続けてきた教員と学生のつながりの性質と機能の再考です。学生同士のつながりと併せて、これらは現在の資本主義社会の観点からも重要である(故に大学は増加した)が、その性質や機能とは何か。それを実証的に解明するような視点で発表を試みました。
ポジティブ心理学との関わりは一つのクロスロードになるか、いっそのこと深く関与するかはこれから次第ですが、上記のような契機を活かすために、より豊かな示唆の得られる研究をしていきたいと思いました
2017年10月31日
先日10月28日に、日本社会心理学会第58回大会(於 広島大学)において発表を行ってきました。
ポスターで発表してきたのですが、比較的ほかの人の目につきやすい場所で発表できたので、その分良くも悪くもダイレクトに他の先生方の反応が見えた気がしました。
今回の発表は、これまでとは異なり、1つの大学における学生のパネルデータをもとに、主観的ソーシャル・キャピタルが精神的健康にもたらす長期的な影響を検討したものでした。
本研究から、入学時の主観的ソーシャル・キャピタルは、その後の精神的健康の悪化を未然に防ぐことが示されました。
これにより、横断的研究だけでなく縦断的研究でも、主観的ソーシャル・キャピタルの効用が示唆されました。
ディスカッションを通して、就職活動の有無などを測定し統制することなどご意見をいただきました。
本研究における細かいデータについては、論文において報告します。
2017年10月1日
もう既に一週間以上経過してしまいましたが、日本心理学会第81回大会(於 久留米シティプラザ)における公募シンポジウムの話がまだだったので書き記しておきます。
前日の小公演に続く9/21のシンポジウムでは、「ソーシャル・キャピタルと健康、幸福感に関する研究の新展開:心理学と社会疫学から」というタイトルで、坂本真士先生(日本大学)とシンポジウムの企画者を担当しつつ、発表をしました。
企画の目的は、学際的な研究の進行具合の確認にありました。都市度や制度、ソーシャル・キャピタル、健康や幸福感の研究は、何人かのフットワークの軽い研究者や幾つかの大きい研究チームにより支えられ、学際的に進められています。それらの研究に関する現状を報告しあうことで、協働や研究の洗練化を期待できると考え、本シンポジウムを企画しました。
心理学の研究者として、芳賀の他、浅野良輔先生(久留米大学)、内田由紀子先生(京都大学こころの未来研究センター)がそれぞれの研究を報告しました。
一方、社会疫学の研究者として、近藤克則先生(千葉大学予防医学センター)にご発表をいただきました。
発表者の4名の研究をまとめて振り返りますと、様々な特色があったように思います。データのサンプリング(年齢や地域)、変数の測定方法は、研究それぞれで工夫がされている印象がありました。
そして、大規模の調査データを生み出すには、コミュニティレベルのデータを収集するための窓口となる人や組織、つまり「繋ぎ手」が必要である、という点が共通していたように思いました(心理学における大規模の調査データの重要性の一部については、2016年度教育心理学年報の村山航先生(UNIVERSITY OF READING・高知工科大学)の論文をご参照下さい)。
オーディエンスからは、メタ分析の確認の必要性やソーシャル・サポートとソーシャル・キャピタルの違い、そして個人特性によってソーシャル・キャピタルから健康や幸福感への影響の交互作用がある可能性についてご質問を受け、意見を交換しました。
上記のことは、ソーシャル・キャピタルと健康、幸福感に関する研究が一つのまとめの時期に差し掛かっていることを示唆すると同時に、心理学においてソーシャル・キャピタルの研究を行う意義もまた改めて示唆しているように感じられました。
これらのことに関する詳しいことは、あらためてまた論文などで書きたいと考えています。
2017年9月26日
日本心理学会第81回大会(於 久留米シティプラザ)において小公演(9/20)と公募シンポジウム(9/21)を行いました。
小公演では、坂野雄二先生(北海道医療大学)に司会をしていただき、7月6日に宣伝したタイトルで発表を行いました。
質疑では、学部の授業の時や修士の時に授業を受けていた近藤清美先生(北海道医療大学)にご意見をいただきました。
ご質問にもあったことですが、ここで、しばしば質問をいただく「ソーシャル・キャピタル」と「主観的ソーシャル・キャピタル」について、現在のところの考えを記しておこうと思います。
ソーシャル・キャピタルは、しばしば「人々のつながり」と呼ばれます。しかし、人それぞれで「人々のつながり」のイメージというのは大きく異なります(たとえば信頼や助け合いなど)し、それを定義することは至難の技です。個人的には、それを比較的うまくまとめているのがソーシャル・キャピタルとその理論であるように思います。
Putnam(2000 柴内訳 2006)に代表されるように、ソーシャル・キャピタルはしばしばコミュニティレベルの概念として扱われます。コミュニティレベルとは、いわば、上空1000メートル、高層ビルやスカイツリーの展望台から下を眺め、特定の(地理的)範囲にいる人々を観察し説明するような視点です。ソーシャル・キャピタルは、その視点で「人々のつながり」を考えるための概念といって良いと思います。
ごく一般的な言葉を用いた時、私はソーシャル・キャピタルを「コミュニティの人々のつながり」として呼んでいます。このことは、「(その)コミュニティにおける、つながりを感じている人の多寡」をさしています。
一方、主観的ソーシャル・キャピタルですが、これは個人レベルの、いわば、個人がどのような世界を認識しているのかを説明する視点の変数です。先ほどのソーシャル・キャピタルが「コミュニティにおける、つながりを感じている人の多寡」をさすことと対照的に、主観的ソーシャル・キャピタルは「コミュニティにおいて、人が感じているつながりの程度」をさします。
そして、心理学の常識的なカテゴリーを用いた際には、ソーシャル・キャピタルは「環境」の変数、主観的ソーシャル・キャピタルは「(個人の)認知」の変数であると考えています。
上で述べたところを強調して、今回のプレゼンでは発表しました。より専門的な情報を知りたい場合には、芳賀・高野・羽生・西河・坂本(2016)や芳賀・高野・羽生・坂本(2017)等を参照して下さい。
そのほか、パーソナリティとの違いについて質問を受けたり、大学における適応研究の再活性における貢献可能性や産業領域への貢献可能性のご示唆をいただいたりすることができ、とても素晴らしい時間を過ごすことができました。
長くなったので、公募シンポジウムの話についてはまた後で書こうと思います。
2017年7月6日
日本心理学会第81回大会(於 久留米シティプラザ)において小講演と公募シンポジウムを行います。
小講演(9/20、13:20-14:10)は「大学におけるソーシャル・キャピタルとウェルビーイングに関する研究」という題目で、博士課程において行った研究成果を一挙にお披露目します。
こちらは、坂野雄二先生(北海道医療大学)にご司会をお願いします。
一方、公募シンポジウム(9/21、14:30-16:10)は「ソーシャル・キャピタルと健康、幸福感に関する研究の新展開:心理学と社会疫学から」という題目で行います。芳賀個人の発表題目は「大学のソーシャル・キャピタルと制度に関する研究」です。主に博士論文で扱っていない最新の研究成果を報告する予定です。
こちらは、坂本真士先生(日本大学)に共同企画者をお願いしています。また、浅野良輔先生(久留米大学)、内田由紀子先生(京都大学こころの未来研究センター)に共同発表をお願いしています。さらに、社会疫学の立場から、近藤克則先生(千葉大学予防医学センター)にもご登壇をお願いしています。
学際性、領域横断性のある講演とシンポジウムを成功させるために、全力を尽くしていく所存です。
「大学」、「ソーシャル・キャピタル」、「健康」、「幸福感」に関心のある方はもちろん、そうでない方も大歓迎です。
皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます。
2016年10月9日
日本教育心理学会第58回総会(於 サンポートホール高松)の2日目(13時半から14時半)にて
「大学間の「つながり格差」と 学生の主観的ウェルビーイングのマルチレベル分析2 ー大学2年生のソーシャル・キャピタルと大学満足感の関連ー」
…というタイトルでポスター発表しました。
今回は、大学2年生について調べたデータを用いて次の2点を示唆しました。
①1年生に引き続き、教員に関するソーシャル・キャピタルは大学満足感を高める(仲間とクラスメートに関するものはその限りではない)
②主観的ソーシャル・キャピタルは、教員に関するものから仲間に関するものとクラスメートに関するものとに伝播(般化)するが、ソーシャル・キャピタルはその限りではない
特に①については1年生に引き続きの結果であり、芳賀・高野・羽生・西河・坂本(2016)のモデルの再現性の一部を示す結果であったといえます。
先日の日本社会心理学会第57回大会において発表した内容と合わせ、論文化を目指します。
2016年9月18日
日本社会心理学会第57回大会(於 関西学院大学)の2日目(10:15-11:00)にて
「大学のソーシャル・キャピタル、ネットワーク、共同活動性および大学満足感の大学間差ー大学2年生における検証ー」
…というタイトルでポスター発表しました。
今回は、大学2年生について調べたデータを用いて次の3点を示唆しました。
①1年生に引き続き、仲間・クラス・教員それぞれに関するソーシャル・キャピタルと大学満足感の大学間の違いがある
②仲間・クラス・教員それぞれに関するネットワークと共同活動性の大学間の違いもある
③①と②のうち、特にクラスに関するネットワークの大学間の違いが大きい
今回、ネットワークはネットワーク・サイズ(学生が回答した、顔と名前の一致する人の数)を用いて測定しました。
クラスに関するネットワークの大きさは果たして大学の制度によって影響を受けた結果そうなっているのか、今後調べたいところです。
2016年7月27日
ICP(International Congress of Psychology)2016 in Yokohama (パシフィコ横浜)の4日目(12:50-14:00) にて
"How Institute Affects Student : Institution, Social Capital and Collective Behavior in University life"
…というタイトルで口頭発表しました。
今回は、大学1年生について調べたデータを用いて次の2点を示唆しました。
①大学のつながり作りのうち「課外時間におけるかかわり」は、仲間・クラス・教員すべてのソーシャル・キャピタルを豊かにする
②学生の主観的ソーシャル・キャピタルは共同活動を高める
質疑応答では、大学からのイベントへの参加の奨励と仲間に関するソーシャル・キャピタルに負の関連があったことを示す結果についての考察を求められました。
学部からのイベントへの参加の奨励が正の関連であったことを踏まえ、人間関係を介さない制度による圧力がかかるとソーシャル・キャピタルは壊れてしまうのではないか、と考察しました。
今後、こうしたネットワークを介した情報と介さない情報の性質についても、調べたいと思いました。
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