術前CTC+CTA

(医療法人 武蔵野総合病院)

「術前CTC+CTA」の施行目的は以下を示しますが、この依頼が来る前提として「大腸内視鏡検査(以下CF)で病変が見つかり・・・」です。

なので、これから示す内容は、当院で大腸癌手術を施行するにあたり、術式の決定、その術前に得ておきたい情報の為の検査方法・画像解析・再構築です。

●術前CTC+CTA施行目的

・腫瘍周辺(腸管全体)の評価

・転移検索

・他臓器浸潤

・病変の局在診断

・リンパ節転移の評価

・病変の深達度

・解剖学的情報

(fig.1)

・腫瘍周辺(腸管全体)の評価

腫瘍周辺の評価と言っても、CTCスクリーニング検査と同様に大腸全体の評価をします。また、狭窄によりCFで病変部より口側が観察出来なかった場合にも、CTCではガスが通れば評価する事が可能ですので、指摘されている病変部以外の評価もする事が出来る場合があります。

(fig.2)

・転移検索/他臓器浸潤/リンパ節転移の評価

当院では、Plain・動脈相・静脈相・平衡相(尿管相)と撮影しますので、その胸部~骨盤腔CT(Ax/Co/Sg)画像から転移・他臓器浸潤・リンパ節転移の評価をします。

(fig.3)

・病変の局在診断

直腸癌においては、肛門からの距離と前壁か後壁かが重要であり、腹腔鏡手術においては、術前の局在診断を基にポートの位置や切開創が決められます。

CFでの位置正診率は78~86%との報告があります※1。それは、横行結腸・S状結腸は走行や長さに個人差が大きい事や閉塞性病変により全大腸の観察が出来ないなどの原因が挙げられます。

それに対し、CTCの局在診断能は97%、術前情報として有用であるとの報告があります※2。

(fig.4)

・病変の深達度

注腸造影とCTCによる仮想注腸像の側面変形は理論的にほぼ同等とされています※3。側面変形の像を得る為に、注腸では苦労した経験が多々あると思います。

また、目的の病変部の側面像を得たいのに、注腸では腸管が重なり観察し辛いなんて事も、CTCならカットしてしまえば容易に側面像を得る事が出来ます。

CTCによる仮想注腸像では、任意の方向で観察する事が出来るので、患者・術者の負担はかなり減ったと思われます。

Air image・MPRの側面変形

(fig.5)

Air image側面で重なってしまう場合、妨げとなる腸管をカット

・・・ここまでは、主に転移始め全体の評価から術式を決定するまでの事です。ここからは、OPの補助、マッピング画像作成になります。

・解剖学的情報(術前マッピング/シミュレーション)

手術では、血管にクリップをかけ病変を切離する事だけが目的ではなく、それぞれの血管を辿ってリンパ郭清をしたりと、動脈と静脈、尿管・他臓器との関係などの指標となる画像作成が必要です。

CTデータからワークステーションを使って、仮想注腸像・動脈・静脈・骨等を抽出し、目的に合わせて加算画像を表示します。

病変の部位により抽出しておきたい血管があります。基本的に大腸の血管解剖とそれぞれの領域(fig.6)を照らし合わせながら画像を構築していきます。

(fig.6)

リンパ節郭清は、術中の判断で郭清範囲が変わりますので、D3郭清を意識して作成する事が必要です(fig.7)。また、例えばIMAからLCA・SA・SRAと分岐しますが、分岐のパターンやSAの本数など、S状結腸に個人差がある様に、分岐のパターンやSAの本数も個人差がありますので、丹念に分岐を追って作成する事が必要です。MCA左枝が発達して、S状結腸に多くの血流が行っている場合がありますので、血管解剖に囚われず、他血管(この場合IMA・SAとMCA)との関係も示します。

大腸癌研究会HPより引用 http://jsccr.jp/forcitizen/comment02.html

(fig.7)

主リンパ節・中間リンパ節の指標となる分岐部

病変部位と動静脈の関係や、動脈と静脈の前後関係を示す画像を作成します。

それぞれ、何を見る為の画像か?の目的に応じた表示をします。※全てを加算した画像のみだと、見辛いです。

a)仮想注腸像+病変部+動脈

b)仮想注腸像+病変部+動脈

d)仮想注腸像+病変部+動脈+静脈 拡大し15°で1回転

c)仮想注腸像+病変部+動脈+静脈+骨

e)仮想注腸像+病変部+動脈+静脈+骨+膀胱尿管病変が直腸・S状結腸の場合は、尿管・膀胱の加算画像から位置関係の情報を把握する事で、損傷を避ける補助になります。

これらの画像構築はWSで行いますが、元のCTデータの出来に依存します。良好なCTデータを得る為の前処置・腸管の拡張・造影タイミングは勿論ですが、患者さんの理解と協力が必須です。当院では必要に応じ、技師が前処置の説明から検査の流れ、具体的な検査方法の説明をします。良好な検査が良好な画像提供に繋がります。

当院の撮影プロトコル

SIEMENS SOMATOM Perspective(64列)/Nemoto KSC-130/Nemoto DUAL SHOT GX7

table.1

60~70kgの被検者を対称としたプロトコルです。

造影剤注入は3.5~4.0ml/s・600mgl/kg。(生食後押し)

Bolus trackingは横隔膜下腹部大動脈をMonitoring、HU170以上をトリガーとしていますが、Monitoringは透視ではなく、

サイクルタイム1.5sで行っていますので、大凡HU170~190後delay5sからの撮影となります。

当院では、撮影スタート時、横隔膜下腹部大動脈HU350前後。IMA起始部HU400以上を目安としています。

腹臥位では、体位を変換している間に造影から5~6分経過し尿管相としています。

各施設・装置によりMonitoring方法、delay時間、スキャンピッチ(寝台スピード)が異なると思われますので、参考になれば幸いです。

(医)武蔵野総合病院 放射線科 福島

(引用文献)

※1:Nagata K,Endo S,Kudo S,et al:Ctair-contrast enema as a preoperative examination for colorectal cancer.Dig Surg 21;352-358,2004

※2:Nagata K,Endo S,Kudo S,et al:Ctair-contrast enema as a preoperative examination for colorectal cancer.Dig Surg 21;352-358,2004

Nagata K,Endo S,Tatsukawa K,et al:Intraoperative fluoroscopy vs. intraoperative laparoscopicultrasonography for early colorectal cancer localization in laparoscopic surgery.Sunrg Endosc

22;379- 385,2008

※3:遠藤俊吾、工藤進英、永田浩一、他:手術手技-3D-CT;CTenemaを用いた大腸癌の進達度診断.手術58:85-89,2004

小泉浩一、小倉敏裕、高津一郎:CT colonographyの現状と展望-大腸ポリープ・癌の抽出.胃と腸37:1395-1402,2002