アメリカの税金

米国確定申告の基礎

佐山米国税理士事務所
グローバル化に伴い、自国外からの収入や多国間での収入がある方も増え、外国籍であってもアメリカに納税しなければならない人も増えてきています。間違いの無い正しい申告書を提出することが節税への第一歩につながります。ここではアメリカの税金の基礎、しかし節税マニュアル等では見落とされがちな米国確定申告(アメリカタックスリターン)のための基本コンセプトを簡単に説明します。
日本からJビザでいらっしゃっている方へ:Jビザ租税条約20条は2013年に削除されていますので使うことはできません。そもそも日本人で20条に該当する方は非常に限られた方のみで、ポスドクでアメリカ留学されている方はほとんどが該当しません。どこにも課税されない労働収入などありえません。ネットの偽情報に騙されても罰金を払うのはあなたです。アメリカ留学中の収入にはきちんと税金を払われることを強くお勧めいたします。
1. Voluntary Taxation(自己申告制)とは?
アメリカの税申告システムは自己申告制です。これはつまり、政府ではなく、納税者(taxpayer)が自主的に税法を守る事を示します。納税者は税法に従って正確な申告書を提出し、正確な額の納税を行う義務と責任を負っています。アメリカの税法(及びそれに関わるルール)は頻繁に加筆、変更があり、それに伴い申告書式、インストラクションも毎年度変更されます。お使いになる情報、書式は最新の(又は適切な)ものをお使いになるようご注意ください。申告の具体的な方法、書式はIRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)のホームページ(www.irs.gov)から入手できます。また、アメリカの税法 (Internal Revenue Code) はコーネル大学のホームページ(www.law.cornell.edu)で公開されています。申告書に間違いがあった場合、虚偽の申告を行った場合は、申告書に署名した納税者に責任があるとされ、追徴課税などのペナルティーが課せられます。
ペナルティーの例:Civil Penalties:Filing Late/ Paying LateAccuracy-related PenaltyFraudNegligence or DisregardSubstantial Understatement of Income TaxFiling Erroneous Claim for Refund or CreditFrivolous SubmissionFailure to Supply SSN
Criminal Penalties:Tax EvasionWillful Failure to File a Return, Supply Information, or Pay Any Tax DueFraud and False StatementsPreparing and Filing a Fraudulent ReturnIdentity Theft
実際の収入を申告せずアメリカへの納税義務を逃れたり、申告書上で違法な操作を行い実際の支払額を減額したとしても、法的な貴方の納税義務はかわりません。虚偽の申告は未納分の税金だけでなく、利子、その他ペナルティーの対象になります。故意に法律を無視し、虚偽の申告を行った者は民事罰則(civil penalty) 又は刑事訴追(criminal prosecution)の対象とされ、罰金を課せられたり、収監される場合があります。アメリカでは脱税を行った理由で一般市民が投獄される事は決して珍しい話ではありません。
IRS日本語版Publication1”納税者としてのあなたの権利”納税者としての権利と、審査・不服申立・徴収・還付のプロセスを日本語で解説してあります。 注)これは英語版を和訳したものなので記載内容に日本的な”含み”はありません。文面通りにお読みください。
2. タックスリターンへの署名の意味
タックスリターンには必ず納税者が署名を入れなければなりません。署名欄の上には以下の文面があります。“Under penalties of perjury, I declare that I have examined this return and accompanying schedules and statements, and to the best of my knowledge and belief, they are true, correct, and complete.”
これは法的効力のある宣誓文です。申告書に誤りがあった場合、署名をした者は偽証をしたこととなりその責任を追及され、guilty of felony になる可能性があります。ですから、タックスリターンは必ず内容を確認をしてから署名をすることです。貴方の収入は正しくタックスリターン上で申告されていますか?ジョイントリターンMarried Filing Jointlyで申告される場合、配偶者の全収入も含まれていますか?すべての情報が漏れなく申告されていますか?貴方(及び貴方の配偶者)がForm1040, Form1040A, またはForm1040EZのいずれかをファイルされる場合、アメリカ国外を含む世界中から得た収入についてアメリカのタックスリターン上で申告する義務があります。ですから、代行者(paid preparer)に書類作成を依頼し、出来上がった申告書にわからない部分があったら、必ず署名する前に質問をすることです。タックスソフトウェアを使ってファイルしたら、提出する前に入力した情報が正しいものかどうかをチェックする事です。何故なら申告書に間違いがあった場合に責任をとるのは貴方だからです。
3. IRSの税務調査(Audit)
IRSは納税者がファイルした申告書をそのまま受け取り、返金処理(refund)を行います。しかし申告書を提出し返金を受け取ればそれで全て終わりではありません。提出後の貴方の申告書は政府のデータベースに保存されあらゆるチェックの対象となります。IRS は提出された申告書に対し必要なら税務調査(audit)をおこない、その内容が正確であるかを調査します。税務調査は個人、企業、収入の大きさなどと関係なく公平に選ばれ施行されます。
貴方の申告書がもしIRSの調査に選ばれたとしても、その事自体が申告書に間違いがあった事を意味している訳ではありません。ただし、IRS からの照会に答え、要求された書類を提出し、申告書にある記述を証明、説明するのは申告者本人(又はLawyer、Certified Public Accountant、 Enrolled Agent等、貴方の代理人)です。「だってそうだから」「記録はないけど自分ではっきり覚えてますから」といった裏づけのない説明ではだめです。必要な客観的書類や記録を示せなかった場合、例え実際に使った経費であっても控除が認められない場合があります。申告書に記述した内容を証明する全責任は納税者側にあります。申告書作成に使った書類、レシートはすぐに捨てたりせず、一定期間は必ず保管しておくことです。
必要な申告書を引き続き提出しない、税金を支払わない、あるいはIRSからの問い合わせ又は請求を無視し続けた場合、ペナルティーだけでなく、刑事訴追も含めたあらゆる法的処置の対象となります。IRSは税金を徴収するために、貴方の口座や給料を担保にしたり、不動産などの資産を差し押さえることができます。Owe Taxes? Understanding IRS Collection Efforts (税金を支払わなかったら?IRSの徴収方法)
http://www.irsvideos.gov/owetaxes/
IRS に噓をついてはいけません。貴方の国ではもしかしたら公務員に対して国民が傲慢に振舞ってもいいのかもしれません。税務署員にその場を欺くような発言をしてもそれは大した問題にはならないのかもしれません。しかしアメリカでは違います。アメリカでfederal agentに噓をつく(Making False Statements)事は、Federal Crime とみなされ、重罪(felony)とされcriminal prosecutionの対象になる恐れがあります。ご自分でIRSとのやりとりをする事が難しい場合、公的代理人(Lawyer、Certified Public Accountant、 Enrolled Agent)を雇う事をお勧めします。
4. アメリカ国外に逃げたら大丈夫?
「税金を払っていないけど、もうアメリカには絶対行かないから大丈夫。」本当でしょうか?答えはNOです。外国人の納税、アメリカ国外資産に関する取り締まりは現在IRSが最も力を入れている分野の一つです。アメリカ国外から収入を得るアメリカ居住者、アメリカに来て労働収入を得る外国人の税金の未払い及び未徴収問題はIRSが取り組む優先課題の一つとされてきました。
外国人の納税問題:http://www.irs.gov/Businesses/The-Tax-Gap-and-International-Taxpayers
これまでIRSにはアメリカ国内以外の問題、非居住者(アメリカ国外居住者や外国人)の税問題を取り扱う専門部署が無く、そのような問題を抱える納税者へのサポートも十分とはいえませんでした。この問題に取り組むため、近年IRSは新しい部署を設立し、インターナショナルタックスペイヤーに特化したサポートの提供、ならびに過去にファイルされた申告書に対して税務調査をはじめました。また、世界各国と次々協定を結ぶことで、IRSを含め各国の国税局は互いの国が持つ納税者情報を共有し、必要ならば自由に相手国のデータベースを閲覧する事を可能にしました。国によっては更なる協力体制を結び、お互いの徴収活動の代行をも可能になりました。ですから外国人であるから、アメリカ国外にいるから大丈夫というわけではありません、法律に従い必要なら正直に申告、納税をする事です。
アメリカの税法では以下のように記されていますI.R.C. § 7201 - ATTEMPT TO EVADE OR DEFEAT TAXAny person who willfully attempts in any manner to evade or defeat any taximposed by this title or the payment thereof shall, in addition to other penaltiesprovided by law, be guilty of a felony and, upon conviction thereof, shall be finednot more than $100,000 ($500,000 in the case of a corporation), or imprisoned notmore than 5 years, or both, together with the costs of prosecution.
5. ではどうしたらいいでしょうか?
もし、過去の申告書に間違いがあり、払った税額が少なすぎた、あるいは未申告の収入があったなどの場合、どうしたらいいでしょうか?
修正申告(amended return)を提出することでミスを修正することができます。もし、貴方の状況が特別な申告方法(例えば、Offshore Voluntary Disclosure Program)を必要とされているならそれに従うべきです。IRSに見つかる前に、自分から修正申告書を提出することでいくつかのペナルティーが免除される場合があります。Income Tax Regulation 1.6664-2 states that an underpayment of tax does not include an amount of additional tax reflected on a qualified amended return. 詳しくはIncome Tax Regulation 1.6664-2 をご参照ください。
事実と異なる虚偽の申告書を提出し違法なリファンドを受けとった、支払うべき税金がありながらタックスリターンを提出しなかった、請求が来ても税金を支払わなかった、などの事実をIRSが摘発した場合、犯罪として扱われ刑事告発の対象となる場合があります。ですからIRSから指摘される前に納税者が自ら間違いを修正し正しい申告書を提出することが厳しい処罰を回避する最善策となり得るのです。
申告の方法がわからない、複雑な事情を抱えているなどの場合はまず税の専門家に相談するのもよいでしょう。お金がなくて必要な納税ができない、一括での支払いが難しいなどの場合、分割払いを申請することも可能です。まずはお気軽にご相談ください。
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