2016年3月17日~24日
イタリアのB型社会的協同組合が運営するレストラン周辺地域を調査するため,イタリア・グルリアスコ市,トリノ市,ミラノ市にてM1小坂,清水,齋藤がフィールドワークを4日間に渡って実施しました。社会的協同組合Pausa Cafeの運営する刑務所出所者を雇用するレストランBistro Pausa Cafeを訪問し,この施設が地域に受け入れられる理由を探りに行きました。調査は,1)社会的に包摂されるための地域のニーズが存在するのか(比較都市:トリノ,グルリアスコ,ミラノ)と2)再犯のリスクが小さい地域か(比較都市:トリノ,グルリアスコ)の2側面から実施されました。
Bistro Pausa Café は,残念ながら最近潰れたようでした。Pausa Café の事務所もカフェの中に置かれているはずなのですが,人影がありませんでした(写真左)。隣のお店の店員さんに聞いたところ,”use money, no money, closed forever”と教えてくれました。2015年8月に潰れたようです。
グルリアスコ市(トリノ市中央駅から特急で5分)は非常にお年寄りが過ごしやすく,子どもを育てやすい,再犯への環境的リスクの少ない地域でした(写真右)。カフェを受容するための地域のニーズもありました。一方で,パウザカフェはそのニーズをくみ取れない立地と開店時間でした。近くにスポーツ施設があり,非常に多くの家族連れがパウザカフェのすぐ目の前の駐車場を利用していました。しかし,スポーツ施設は18時で閉館でした。また,近くにお年寄りや子供たちが集う公園と市場があったのですが,やってくる彼らの多くはパウザカフェと反対側の住宅地に居住する人たちのようでした。やはり20時になると,その公園周辺も人がまばらになり,住宅街のレストランの方が,需要があるようでした。おそらく,ニーズ自体はあっても時間ごとの人の流れまでは調査できていなかったのだと考えられました。そこで,先述の1),2)を調査しつつ,Bistro Pausa Caféが潰れた理由を周辺の環境や人の流れなどから推察することになりました。
パウザカフェは大学施設と隣接していたので,トリノ市内の大学周辺のレストランの利用状況についても調査しました。大学周辺のカフェやレストランは,昼は学生で混みあっていましたが,夜20時以降については,そもそも学生の姿自体があまり見かけられず,料理の価格帯が10€以上のレストランを学生は利用しないようでした。おそらく,イタリアの文化として,大学周辺であっても,夜にその場にいない限りはレストランを利用しないのではないでしょうか。トリノは,子どもたちが自由に遊べる公園が少なく(写真左),監視性の低い狭い通りはグルリアスコより多く,市場裏や河川敷沿いの住宅の住居内密集は明らかにグルリアスコより高い(写真右)とみえ,トリノの再犯リスクは高いと言えるでしょう。潰れたパウザカフェの比較対象として急遽,ミラノ中央駅から地下鉄6駅のレストランJodok(写真左下)を訪問しました。このレストランを経営するOlindaは,パウザカフェと同じB型社会的協同組合(社会的に排除されやすい人を従業員
の30%以上雇用する義務を持つ)で,精神疾患を持つ人たちの社会復帰を支援しています。レストランの他,(精神疾患者の働く)ホテルや劇場も経営しています。グルリアスコ同様,多くの子供たちがとても元気に遊んでいるのが印象的な地域でした。レストランの立地はそれなりですが,大変長い塀に囲まれた元精神病院の敷地内でもあるので,そのままでは地域のニーズを取り込めそうにはなさそうでした。スポーツ教室や劇場を抱き合わせで運営し,その広告を塀の外側や隣接高校に貼っていました。自然公園化した敷地内を一般開放し(写真右:左側の建物がOlinda本部),隣接高校や集合住宅と公道を繋いでいました。また,Olindaに対して経済的支援をする団体も存在するようでした。到着したのは閉店30分後でしたが,まだ客や従業員が片付けをしたりくつろいでいたりしました。
結果的に,パウザカフェの継続に必要だった条件は,第一に再犯可能性の低い地域であること,第二にニーズをくみ取れる立地と運営でした。あくまでも,環境からのみの推察でしかありませんが,パウザカフェは後者についての事前調査と取り組みが不足していたのだと考えられました。社会的排除の対象となりやすい人々を受け入れる寛容な社会であることと,彼らの仕事が持続可能である環境を作ることは,決して同義ではないことを,今回のフィールドワークで目の当たりにしました。
2015年8月29日~10月28日
D2神崎が、デンマーク・オールボー大学の文化心理学センターに滞在しました。オールボー大学の院生さんと共に文化心理学理論の基礎的な講義を受け、デンマークの高校を訪問し、Mogens Jensen先生とJaan Valsiner先生をはじめとする先生・研究者の方に分析に関する助言をいただきました。
2015年9月8日~12日
サトゼミ文化心理学班で、ポルトガル・ブラガで行われたヨーロッパ発達心理学会 (17th European Conference on Developmental Psychology)にて発表を行いました。
今回は、サト先生、安田先生、木戸さん、田君、清水君、神崎の6名が参加しました。いじめや自殺といった実践的議論から、心の理論の発展に関する議論まで、幅広いテーマが取り扱われました。
2015 年7月18日から25日の間に、サトゼミ・田一葦がノルウェーのオスロ大学で開かれるOslo Summer School in Comparative Social Science Studiesに参加しました。
招聘講師は、現在デンマークAalborg大学の教授、Jaan Valsiner氏である。テーマは、Mind, the Meaning Maker: New General Psychology of Being Human です。Valsiner氏は、過去30年間培ってきたHuman Being 特有の記号媒介の高次的精神機能の解明を中心にする記号論的文化心理学をベースに、新しい一般心理学を提唱している。参加者はノルウェー、フィンランド、イタリア、デンマークなどのヨーロッパ国を中心に、ブラジル、日本(田)など遠い国からのものもいる。
参加者全員写真
European Association of Psychology and Law + WORLD Conference 2015
2015年8月4日から7日にかけて,ドイツのニュルンベルクでEuropean Association of Psychology and Law (EAPL) + WORLD Conference 2015が開催されました。
サトゼミからは,中田(口頭発表),小坂(ポスター発表),齋藤(ポスター発表)が参加しました。
今年で25周年を迎えるEAPLは1990年に本年度の開催地,ニュルンベルクで立ち上げられました。本年度学会には35の国からの参加があり,世界規模での法と心理学領域における研究の潮流を,肌で感じることができました。
学会プログラムには,かの有名な国際軍事裁判(Nuremberg Trials)が開かれた裁判所(現Nuremberg High Court)への訪問も組み込まれていました。ニュルンベルク裁判についての説明を,裁判がかつて行われた600号法廷で受け,大変貴重な経験をしました。
発表するサトゼミ参加者(左:中田,右:小坂,齋藤)
Nuremberg High Court 内(左:600法廷内,右:廊下)