Research Highlights
ワーキングペーパー
"Post-auction Investment by Financially Constrained Bidders" (J. Econ. Theory 2023)
入札者が資金制約(借り入れコスト有)に直面し、かつ落札後に投資が必要なオークション
財の価値が投資量について線形ならば、一般的なオークション(1位価格、2位価格)に対して収入同値定理および投資同値定理が成り立つ
財の価値が投資量について凹ならば、1位価格の方が2位価格よりも期待収入が高い(Che-Gale (1998)と同順序)。
投資量を増やしたければ、スコアリングオークションが良さそう。比較審査方式は過剰投資の恐れ。
"Position Auctions with Multidimensional Types: Revenue Maximization and Efficiency"
多次元タイプの最適オークション設計(収入最大化)
耐戦略性を均衡概念としたとき、Myerson (1981)的アプローチを用いて最適オークションが導出できるような環境を特徴づけ
学術的によく知られているように、Myerson的アプローチによって最適オークションを導出できる多次元タイプモデルは非常に限定されることを確認
Myerson的アプローチによって最適オークションを導出できる既存研究の結果を統合
"A Dynamic Mechanism Design with Deadlines and Multi-unit Demands"
t=1の出国便とt=2の帰国便の最適販売メカニズムの考察。乗客は各期それぞれ到着
乗客は片道利用者または往復利用者。支払意思額と旅行タイプが私的情報の多次元タイプ
t=2の乗客に販売するオプションを残すような条件付契約が可能
乗客の旅行タイプが公的情報の場合、最適メカニズムでは往復チケット価格が片道チケット価格を下回る可能性がある
その場合、旅行タイプが私的情報の場合、片道価格と往復価格の単調性が制約としてbindし、bunchingが発生
"A dynamic mechanism design for scheduling with different use lengths"
複数の同質財(e.g., 時間スロット)を毎期配分、利用者が評価額と財の利用期間の2次元の私的情報をもっているような環境のメカニズムデザイン
売り手収入を最大化する(「最適」)メカニズムを導出
潜在利用期間が高々2期のみの場合は、長期(2期間)利用者に適切なハンディキャップをつけた均一価格オークションが最適メカニズムになる
"Subgame perfect equilibrium of ascending combinatorial auctions"
価格せり上げ型の「組み合わせオークション」について、完備情報下の部分ゲーム完全均衡分析(Day-Milgrom (IJGT 2008)の動学版)
入札者がsingle-minded(:=特定の財パッケージにのみ入札する)ならば、効率性(更にコア)を実現するような部分ゲーム完全均衡が存在
均衡戦略はオークションルールの詳細に依存しない
相対的に評価額の低い入札者ほど高い均衡利得を得てしまう傾向があり、このためsingle-mindedでない状況では効率的な均衡は存在しないことがある
公刊済み論文
"Dynamic slot allocations with different patience levels" (Games Econ. Behav. 2021)
時間スロットを毎期配分。利用者は評価額と滞在時間(1期間/2期間)の2次元の私的情報を持つ
売り手収入を最大化する最適メカニズムを導出
収入最大化問題の正規条件(インセンティブ条件がslackするための条件)は、利用者の実質価値関数(virtual valuation)が一次関数となること(つまり非常に厳しい)
"Dynamic communication mechanism design" (Soc. Choice Welfare 2021)
人々の1次元タイプで決まる準線形環境(複数財オークション、ダブルオークション、公共財など)
Social plannerが2択質問を繰り返して、各人のタイプを特定化していく多段階メカニズムを考察
誘因両立性を満たすためには、「せり上げ方式」で質問しなければならない
配分効率性と誘因両立性(EPIC)によって「せり上げオークション」を完全に特徴づけ
"An equilibrium analysis of a core-selecting package auction with reserve prices" (Rev. Econ. Design 2018)
複数財のオークション、個別財ではなく財のパッケージに対して入札するような「組み合わせオークション」のうち、Ausubel-Milgrom (2002)が提案したproxy auctionの均衡分析
2財、1財のみ需要するローカル(スモール)型入札者2人、2財両方需要するグローバル(ラージ)型入札者1人(Sano(2012, GEB)と同型)
均衡では、グローバル型は正直(競争的に)入札、ローカル型は過少入札
最低落札価格を課すことで、均衡配分の効率性と売り手収入を同時に改善できる
組み合わせオークションでは最低落札価格の設定方式は様々。"Bounds Only"方式を採用するのが好ましい
"Sequential auctions of heterogeneous objects" (with Akitoshi Muramoto) (Econ. Lett. 2016)
異質財を2位価格オークションで順番に配分(逐次オークション)。買い手は高々1財のみ購入する
よりバラつきが大きい財から順に売るとき、対称で単調なベイジアン均衡が存在して、もっともらしい条件下では均衡価格が下落
"Declining price anomaly"として知られる理論と現実のギャップは「バラつき」(だけ)で説明できる!
"Vickrey-reserve auctions and an equilibrium equivalence" (Math. Soc. Sci. 2013)
複数財のオークション、特に入札者が個別財ではなく財のパッケージに対して入札するような「組み合わせオークション」について
Day-Milgrom (IJGT 2008)は「コア選択オークション」と呼ばれるクラスの入札ルールを提案。完備情報下ではコア配分を実現するようなナッシュ均衡が存在
本論文は、Day-Milgromの示した均衡はコア選択オークションに限らず、より広いクラスのオークションで存在することを証明
Day-Milgromのナッシュ均衡が存在するようなオークションルールの特徴づけ:「入札者が少なくともVickrey-Clarke-Grovesメカニズムの支払い額を支払うようなオークション(+効率性&個人合理性)」
"Non-bidding equilibrium of an ascending core-selecting auction" (Games Econ. Behav. 2012)
複数財のオークション、近年世界各国の周波数(電波)オークションで採用が広がっている「組み合わせ時計オークション」の均衡分析
2財、1財のみ需要するスモール(S型)入札者、2財両方需要するラージ(L型)入札者がいる時の完全ベイジアン均衡
L型入札者は正直に(競争的に)入札
S型入札者が2人の場合、互いにフリーライドし合う誘因があり、均衡では1人は全く入札しない(もう一人は正直入札)。よって均衡は非効率&低収入
S型入札者が3人以上いる限りは全員正直入札→劇的にパフォーマンス改善!
"Incentives in core-selecting auctions with single-minded bidders" (Games Econ. Behav. 2011)
複数財のオークション、Day-Milgrom (IJGT 2008)が提案した「コア選択オークション」と呼ばれるクラスの入札ルールについて
入札者がsingle-minded: 特定の財のパッケージにのみ興味がある特殊ケース
各入札者がオークションで正直入札するための必要十分条件を、入札者が需要する財のパッケージ間の関係性によって特徴づけ:正直入札⇔「自分のライバル(利益相反者)のライバルはライバル」