Research 研究テーマ
森林生態系を中心としてさまざまな環境変動下における土壌圏(主に根圏)の研究を泥だらけになりながら行っています。
Keyword
森林生態系、炭素循環、窒素循環、細根、菌根菌、土壌、物質生産
根っこは、いったい何をやっているのか?
土壌中に張り巡らされた根っこは、体を支えながら、生きるのに必要な水分や養分を土壌から吸収しています。植物が生きていくうえでとても大事なことをしています。しかし、その全貌を見ることはなかなかできません。根は土の中に隠れているからです。その隠された植物の地下部は、一体どのような姿をしているのでしょうか?また、どのような振る舞いをしているのでしょうか?土壌の中で生き抜くには、それ相応のストレスに耐えなければなりません。防御の必要性があります。一方、守ってばかりだと、何も得ることができないため、資源を獲得するための攻めの姿勢も必要です。私たちは、根が周りとのかかわりの中でどのように生きているのか、そしてその結果どのような生態系機能を発揮するのかを明らかにするため、植物が生きるうえで必要不可欠な「炭素」に注目して研究をしています。
生態系における炭素の動きをみていきます。大気中の炭素はまず光合成によって葉っぱに固定されます。その一部は葉において成長や呼吸により消費され、残りの炭素は、 順次、枝や幹へと送られます。枝・幹に送られた炭素の一部は、葉と同様に成長や呼吸により消費され、残りの炭素が土壌中にある根っこに送られます。根っこまでやってきた炭素は、つぎの6つの経路に分かると考えられています。
①成長、②呼吸による消費、③貯蔵、④滲出、⑤共生生物(菌根菌)への移行
長い時間スケールで見ると、⑥根系の被食・老化・枯死脱落は、もうひとつの経路です。私たちは、上記6つの経路に、根に流れてきた炭素がどれだけ分配され、消費されているかを評価しています。炭素の動きを調べることにより、根や個体の物質生産にかかわる性質がどのように決まっているのかを明らかにすることができます。そこから、根の役割や生き方、さらには植物の生存戦略、植物ー土壌相互作用、森林の営みを考えていきたいとおもっています。
現在の具体的な研究テーマは、次のようなものです。
ちょっと時間をください。。
調査地
乗鞍岳(長野県:冷温帯~高山帯森林)
信州大学西駒研究林(長野県:冷温帯~高山帯森林)
信州大学手良沢山演習林(長野県:冷温帯林)
北海道大学苫小牧研究林 (北海道: 冷温帯広葉樹林)
ランビルヒルズ国立公園(マレーシア:熱帯雨林,フタバガキ林)
Hyytiälä Forestry Field Station (フィンランド:寒帯林、マツートウヒ林)
卒業論文と修士論文
2023年度
勝間帆波(修論):冷温帯9樹種における細根・葉・根圏土壌に含まれる一次代謝産物の種特異性
木元茉子(修論):カラマツの粗根における肥大成長と炭素配分の解明
橋本裕生(修論):山岳域における樹木細根の呼吸および非構造性炭水化物の貯蔵機能の環境応答性
諏訪竜之介(卒論):高山帯における木本根系の無機態および有機態窒素吸収の種特異性
2022年度
伊藤拓生 (修論):山岳域の樹木細根による無機態および有機態窒素吸収の標高応答性の解明
増本泰河 (修論):山岳域における広葉樹と針葉樹の細根の水獲得様式と根特性の標高応答性
朝倉知佳 (卒論):粗根と細根を対象とした根現存量分布-針葉樹林における地下1mの世界-
坂下凜 (卒論):針葉樹3種における土壌深度に沿った根滲出速度の変化
細井彩 (卒論):土壌深度に沿った細根解剖特性の応答:原基数および皮層、中心柱からの探究
2021年度
田村梓(修論):カラマツ林における細根とシュートの成長と機能の時間変化
勝間帆波(卒論):針葉樹4種における細根組織に含まれる一次代謝産物の解明
木元茉子(卒論):カラマツの粗根における肥大生長と炭素配分の解明
橋本裕生(卒論):山岳域における細根の非構造性炭水化物貯蔵と根特性の樹種間差
2020年度
暁麻衣子(修論):冷温帯林における樹木細根からの滲出物の種特異性
伊藤拓生(卒論):針葉樹における細根の無機態窒素吸収速度と根特性との関係
大島暢人(卒論):山岳域におけるダケカンバの幹周囲長の日変化と環境要因の関係
増本泰河(卒論):針葉樹4種における細根系の水透過性と根特性の関係の解明
2019年度
岡本瑞輝(修論):乗鞍岳の異なる標高における細根呼吸速度と形態特性の応答
谷川夏子(修論):可視-近赤外分光法を用いた樹木根系の特性の評価
矢原ひかり(修論):乗鞍岳の高木限界に生育する樹木4種の細根の水および炭素利用様式
田村梓(卒論):長野県カラマツ林におけるシュートと細根の動態と色変化の解明
藤本稜真(卒論):長野県飯綱のカラマツ林における土壌呼吸の分離と環境応答性
清水芙宇夏(卒論):冷温帯における20樹種の細根の化学物質による防御機能の評価
2018年度
暁麻衣子(卒論): 針葉樹4種を対象とした細根滲出物と根特性の関係
渥美皓介(卒論):シラビソ実生の樹齢変化から探る生存戦略-葉・幹枝・主根・側根における形態と重量配分-
小畠実和(卒論):冷温帯混交林における樹木細根の解剖特性および縮合タンニンの他樹種比較
渡邉直人(卒論):熱帯雨林における土壌動物の細根分解への寄与
2017年度
梅津ほのか(卒論):樹種多様性の異なる林分における細根現存量とその形態特性
岡本瑞輝(卒論):乗鞍岳標高勾配に対する根呼吸速度と形態特性の応答性
谷川夏子(卒論):可視-近赤外分光技術を駆使した樹木細根の特性評価と種識別の可能性
矢原ひかり(卒論):温帯林11種にみられた樹木細根系の種特異性:形態・化学・解剖特性による多角的評価