1.昆虫の個体群動態と生活史に関する研究
野外における昆虫の個体数や個体群特性(生存率,性比,増殖率,移動分散等)の時間的・空間的変動パターンと環境要因との関係を調べています.対象生物は,ヤマトアザミテントウ,アオカメノコハムシ,ヘイケボタル,南米産アシナガバチ,東アフリカ産ウンカ・ヨコバイ類,マメノメイガなど.標識再捕法や生命表の作成等によるデータを数年間蓄積して,個体群特性を詳細に分析するほか,実験室内での飼育実験も行い研究を進めています.
・フィールド報告 from Kenya: 家畜飼料として重要なネピアグラスにおいて、ケニア西部で近年多発が報告されているネピアグラス萎縮病の病原媒介昆虫の探索と同定を行なうため,ウンカ・ヨコバイ類の種構成と個体群動態を調べました.
2.農地における管理が節足動物群集に及ぼす影響
農地における管理が,そこに生息する節足動物群集にどのような影響を及ぼすかについて研究しています.熱帯アフリカでは,複数の作物の「混作」による植生の複雑化が,害虫や天敵に及ぼす影響について,野外実験により調べています.日本国内では石川県珠洲市の水田をフィールドとして,水管理が慣行農法と大きく異なる「不耕起乾田直播農法」において,稲株上の昆虫群集にどのような違いが認められるのかを調べています.
・フィールド報告 from Kenya: トウモロコシ畑の周縁の植生がズイムシ類害虫と捕食者群集に及ぼす影響について,野外実験を行いました.
野外調査の様子
個体識別マーク(8349番)を施されたアオカメノコハムシ(1999年,金沢).標識と捕獲を繰り返して,個体数や生存率などを推定した.
捕食者除去実験プロット設置のため,障壁をとりつける(2005年,ケニア).障壁には粘着剤(タングルフット)を塗布.除去区内でピットフォールトラップと手づかみ除去を集中的に行い,捕食者の数を減らすことができた.
トウモロコシの害虫ズイムシの数を調べるため,畑から植物を抜き,持ち帰る(2005年,ケニア).これを一本ずつ解剖して幼虫を取り出し,一頭ずつ成虫まで飼育して種ごとに数を調べた.
イネの株上に棲む昆虫・クモ類を採集するため,稲株に枠を被せて電動式の吸引装置で吸い取る(2011年,珠洲).
エンジンバキュームでウンカ・ヨコバイ類を採集(2007年,ケニア).
マメノメイガ定点観測用ネットトラップを設置するため,ポールを立てる(2012年,ベナン).
ちゃんと採れるかどうかは不明・・・