歯並びに影響する癖

❐指しゃぶり

◆ 歯科医と小児科医、臨床心理士それぞれの見解

指しゃぶりは、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる胎生14週ごろからみられます。生後2~4か月では口のそばにある指や物を無意識に吸ったり、5か月になるといろいろなものをしゃぶり、形や味、性状を確かめ、学習するためになんでも口のほうへ持って行くようになります。歩き始めるようになると、指しゃぶりをしていると行動が制限されるため自然と指しゃぶりは減っていきます。1歳半を過ぎると昼間の遊びの中で指しゃぶりは減り、退屈な時や眠い時だけみられるようになります。さらに3歳以降外へ出て遊ぶようになると指しゃぶりはさらに減り、通常5歳ごろにはほとんどなくなります。

指しゃぶりが高い年齢までつづくことは、歯並びや咬み合わせに影響するだけでなく、前歯が開いた開咬の状態になると発音など言葉の問題、つばの飲み込み、食事の仕方に悪い影響を及ぼします。さらに口元の突出、顎などの発育にも影響します。従って、不正咬合の進行を防止し、口腔機能を健全に発達させる観点から、4、5歳を過ぎても続いている指しゃぶりは指導し止めさせていくべきだと歯科医は考えます。一方、小児科医は、指しゃぶりは生理的な人間の行為ゆえ、こどもの生活環境、心理的状態を重視して無理にやめさせないという意見も多いようです。特に幼児期の指しゃぶりの持つ不安や緊張を解消するという効果を重視するためで、歯科医ほど口や歯並び、咬み合わせへの影響を考慮していないように思われます。また、臨床心理士は、指しゃぶりは生理的なものとしながらも4歳以降も続ける場合には、その背景に親子関係の問題や、遊ぶ時間が少ない、退屈など、こどものおかれる環境面が影響している事を挙げ、こどもの心理面から問題行動の一つとして対応すべきであると考えています。

7歳児の指しゃぶりによる開咬。前歯が咬み合わない状態。親指には吸いだこができている。

❐舌癖

舌癖とは、リラックスしている時に口をポカンと開け、上下の歯の間に舌が飛び出していたり、飲み込む時に舌を突き出し、常に前歯に押しつけているような状態の癖を言います。

舌癖があると歯並びや発音に大きな影響を及ぼします。

舌癖の原因として

1 幼児期より指しゃぶりを長く続けた。

2 乳歯から永久歯への歯の生え変わりの際に、歯がない状態が長く続いた。

3 鼻炎等で鼻の通りが悪く、口呼吸をしている。

4 舌の小帯が短い、強く結びついている。

などが挙げられます。

治療: 適切な診断に基づく原因の除去および歯並びの不正(開咬や歯の隙間)が認められる場合には必要量の矯正歯科処置を行う。

おしゃぶりの長期使用による開咬。舌が上下の前歯の間に挟まりこむ。

❐こどもの歯ぎしり

歯ぎしりの発現率は2歳児で7.1%、3歳児で8.0%であり、乳歯列完成前後における小児の口腔習癖の中で指しゃぶりに次いで多くみられるものです。また、6歳以降12歳での調査でも発現率は10.0%をこえます。

乳歯列期の歯ぎしりは、歯列の発育過程で生じる不安定な咬合状態が関連している場合が多いといわれます。この場合には、乳歯列の完成期には消失することがほとんどです。5歳前後の幼児に上あごの前歯が大きく削れている場合は、これは上下のあごの成長のずれに関連するもので歯ぎしりに関連したものでないことが多い。

〔文献〕

安部敏子,松崎和江,他:口腔習癖の年齢的推移について.歯科学報,87:95-103,1987

馬場篤子,米津卓郎:小児歯科は成育医療へ,通巻第520号(吉田昊哲ら編集),デンタルダイヤモンド社,東京,2011

。。荒川区>文京ながはま矯正歯科。。