気を付けよう! 海外での放射線食品照射

企業の自主点検で照射スパイス使用の菓子を自主回収

2021年度のことになりますが、厚生労働省のウェブサイトの「違反事例速報(令和3年度) 国内に おける輸入食品違反事例」によると、2021 年 8 月に、米国からの「ビスケット類」で、「製造、加工 及び調理基準不適合(放射線照射)」という事案が載っていました。(なお、2023 年 1 月時点の当該ペ ージには「輸入者」の欄には「三菱食品株式会社」との記載がありました。)

 違反事例速報(令和3年度) 国内における輸入食品違反事例より、「8月分」

具体的には、2021 年 7 月 26 日に、同社が輸入・ 販売するスナイダーズオブハノーバー社の「ス ナイダーズハニーマスタードオニオン」に放射 線殺菌された原材料(香辛料)が使用されていた ので、自主回収する旨が公表されていたというものです。照射食品反対連絡会は、2 月 3 日、照射の内容 について詳しく知りたい旨の質問を含む文書を三菱食品株式会社社長宛に送付しました。

同社からは、2 月 10 日に別記のような回答がありました。

回答によると、違法に照射殺菌されていた「原材料」とは、「ハニーマスタードオニオン」に使 用された「香辛料」で、三菱食品が自ら行った検 査点検ではなく、「メーカーの自主点検にて発覚 し弊社に連絡」があったので、同社として自主回 収の対応をとったとのことでした。香辛料への照射線量や照射前の細菌数等は把握されていませんでした。

「照射原材料の入った商品の販売期間」は、 「2021年3月8日~7月26日」。「輸入総量」 は、「ハニーマスタードオニオン、209,260 個」。その後の対応としては、当該商品を「終売」としたとのことでした。(下段「別記」参照。)

輸入食品を扱う会社は内部検査や自主点検の強化を!

輸入された食品が国の検疫をくぐりぬけ、国 内の自主検査で違反確認がされる事例はこれま でもいくつか出ています。過去にはマルハニチロ株式会社のホッキガイやキッコーマン株式会 社の大豆イソフラボン「ソイアクト」、グリーン・ バイオアクティブ株式会社(2014 年当時)の輸入粉末青汁などが回収されています。海外での放射線照射の認可品目や量が増えて いるという報告もあるので、輸入食品を扱う会社は内部検査や点検を強めることを望みます。

市民運動のあるところはどこでも、食品照射 に反対しています。ハワイでは、米国本土向けパ パイヤへの照射に市民団体が反対運動をしてき ていましたが、強い力で押し切られてしまったという経緯があります。米国内では、1980 年代後半以降、セシウム 137を放射線源にした食品照射施設建設が全米各地で持ち上がりましたが、市民、住民運動の高まりでほとんどが頓挫した歴史があります。その後、2000 年代に入ってからの学校給食用ミンチ肉照射に対しても、保護者の反対運動で照射肉を扱う会社はつぶれました。

米国は農産物、加工食品の輸出が多い国ですが、果実や加工食品の輸入も多い国です。世界各地で国際原子力機関(IAEA)が国際食糧農業機関(FAO)等と合同で進める照射食品利用の 受け皿にもなっています。ちなみに IAEA は、 近年は「気候変動と食料」の課題にも放射線食品照射や放射線育種が利用できると、アフリ カ、アジアでの研究活動を支援しています。

世界中の消費者は、放射線を食品に照射することに反対しています!

別記 違反事例についての質問に対する三菱食品株式会社からの回答(2023年2月10日)

(1)照射された原材料は何でしょうか。

<回答> 照射されていたのは「ハニーマスタードオニオン」に使用されていた原料のひとつで ある「香辛料」です。なお、「ハラペーニョ」につきましては、シーズニング用原料の殺菌剤とし てエチレンオキシド(酸化エチレン)を使用していたため自主回収しております。

(2)照射線量はどのくらいでしょうか。

<回答> 本件はメーカーの自主点検にて発覚し弊社へ報告があったものですが、照射線量につ いては申し訳ありませんが弊社でも把握できませんでした。

(3)この照射の目的は殺菌とされていますが、原材料の菌数がわかっていたらおしえてください。 

<回答> 申し訳ありませんが、弊社でも把握できませんでした。

(4)この照射原材料が入った商品はいつからいつまで販売されていたのでしょうか。

<回答> 2021年3月8日から7月26日までです。

(5)この商品の輸入総量をおしえてください。

<回答> ハニーマスタードオニオンは、209,260個です。 ※ハラペーニョは放射線照射による自主回収ではありません。

(6)その後の貴社の対応をお知らせください。

<回答> 本商品は終売としました。

(7)照射食品について安全性の資料などの収集、問題点の検討をしたことがありますか。

<回答> 弊社といたしましては引き続き法令を順守し、安全・安心な食品を提供できるよう品 質管理に万全を期して参る所存です。照射食品につきましても、引き続き法令を順守してまいり ます。

(8)照射食品について当会と話し合う機会を持っていただけませんか。

<回答> 弊社は放射食品(原料)そのものを輸入したわけではなく、ご回答できる内容は上記 のとおりですので、ご遠慮させていただければと存じます。

※下線は原文のまま

以上