今年も 放射線照射「芽どめじゃが」

安全性問題等を指摘し 販売中止を要望

今年も「照射ジャガイモ監視活動」をニュースレターとSNS で呼びかけたところ、広島県、千葉県、茨城県、東京都、岩手県など、全国各地から通報がありました。

価格は一般並み

今年の特徴としては、次のようです。

販売価格は昨年同様、一般のジャガイモと同じくらい(1袋 180〜258 円)で、特に安いということはない。

照射日が2021年11月から22年1月のものがほとんど。照射後3か月以内も多い。

○これまであまりなかった東京都内のスーパ ーで販売されていた(練馬区と多摩市のスーパ ー)。

販売中止を申入れ

販売情報のあった店舗に販売中止を求める 申入れを行ったところ、3 店舗から「照射ジャガイモの安全性問題を知りませんでした。今後は取り扱いません。」という主旨の回答が寄せられました。食品照射の問題はよく知られていないようです。

送付した要望書には、なぜ、私たちが販売中止を求めるのか、その理由を説明する資料を入れています。安全性問題についても、近年になって、発がん性のあるシクロブタノン類が特異的に発生する試験研究結果があることや照射されたものが放射化して放射能を帯びるようになる「誘導放射能」の懸念をぬぐえないこと、これらの懸念は十分に調べられていない現状にあることを示しました。

店舗1 すぐに販売停止、店舗から回収へ

東京都多摩市にある「スーパークリシマ永山店」の場合。4月下旬に照射ジャガイモ(男爵、メークイン)が一袋 258 円で売られていました。問い合わせたところ、毎年、端境期のこの 時期に店独自の仕入れにより、照射ジャガイモ を販売している、「端境期であることと、ジャガイモの芽が有毒なので、芽止めジャガイモを扱っている」とのことでした。

仕入れ先は、豊洲市場(東京都中央卸売市場)ということでしたが、その後、茨城のマルトウ青果という会社の方から照射食品反対連絡会事務局に電話があり、次のような話でした。

照射ジャガイモを豊洲市場で卸したのは受け渡し場所にしただけで、豊洲市場に卸したわけではない。東京には照射ジャガイモを卸していないと聞いている。

今回の要請を受け、照射ジャガイモの取り扱いはやめ、店頭から回収することにした。実際の回収は今週いっぱいかかる。

たしかに、東京都内の市場出荷をしていないという、照射食品反対運動の初期の成果は今も生きているようです。この店舗・卸売業者は、私たちの要請にすぐに応えてくださいました。

店舗2 来年は販売しない

東京都練馬区にある「フレッツ新鮮市場」内 の「(株)八百邦」場合。4月中旬に、一袋(750 グラム)299 円で照射メークインを販売していました。本社は、茨城・ひたちなか市。ジョイフル本田守谷店など茨城4、東京2、千葉、埼玉各1と、8 店舗あります。同社は、私たちの要望書(アンケート含む)には、次のように答えてくださいました。

照射ジャガイモの販売は、10 年ほど前から。 仕入れ先は、水戸市公設地方卸売市場の卸売業者「水戸中央青果株式会社」とのこと。

卸売市場で販売しているので仕入れた。なお、 市場に「身体に良くないのですか」と確認したところ、「大丈夫です」と言われたので、現在仕入している分は販売させていただきます。」

来年度からは販売はいたしません。

今年度はともかく、「来年からは取り扱わない」と、消費者の要望に応えてくださいました。

店舗3 安全性問題について検討したことはなかった。来年は、再考する。

岩手県一関市の「株式会社 丸江」は、岩手、 宮城などに5つの「丸江スーパー」があります。 5 月中旬、その泊店で、照射ジャガイモが販売されていました。「安全においしく楽しく!」をホームペ ージで謳うだけに、私たちの要望書に対しては、「このたびは、『芽どめじゃが』販売の件で、ご連絡をいただきありがとうございます。 今回の件を受け、弊社にて今後の取扱いや『芽どめじゃがいも』について再考する機会をいただけた事に感謝申し上げます。」と、ていねいでした。

○仕入れ先は、一関市の地方卸売市場の「一印 一関青果卸売株式会社」。北海道産ジャガイモから新ジャガイモへの切替わり期に使用。20 年前程から仕入れ実績がある。

○毎年、4~5月の2ヶ月間仕入れ。今年の仕入れ実績は、4月7日から5月25 日まで、5店舗合計890 kg。

○照射ジャガイモについて、これまで安全性について検討したことはない。来年度は再考する。

5月20日に回答をいただいた時点での在庫 は、10kg入り×9ケース=90kg。残念ながら、在庫分はそのまま販売し続けられたようです。ともあれ、20 年間も販売され続けてきた照射ジャガイモの「芽どめじゃが」に幕が降りま した。

「ひね」ジャガイモは、照射のみ?

昨年も照射ジャガイモを販売している店舗 等に販売中止を要望しました。販売中止に応じてくださったところは、「直売所しもふさ」(千葉県成田市)、Nスーパー(東京都)。今年は、いずれの店舗も、「芽止めジャガがあることは知っているが、方針として売らない、取り扱わない。」、「昨年、お電話いただいてから、当店では取り扱っておりません。」と、きっぱり。

他方、要望にもかかわらず、照射ジャガイモを販売しつづけている店舗もあります。数年前から株式会社エブリイ(広島県)には要望書を送り続けていますが、販売が続いています。昨年販売していた店舗に電話で問い合わせたところ、次のような返答がありました。

店舗1 「鬼沢青果店」(茨城県北相馬郡) 「新ジャガではなく、ひねたのを希望する消 費者が多いので仕入れている。市場でも出回ってるからね。」

店舗2 「うじえスーパー」(宮城県) 「ひねじゃがいもを、と言われているので仕入れています。」

店舗3 「パワーマート見川店」(茨城水戸市) 「今は取り扱っていません。新ジャガはあま り必要ない。バイヤーとかタイミングにもよるんで・・・。」

店舗4 「ジャパンミート守谷店」(茨城県守谷市) 「『芽止めじゃが』はまだ入ってきてません。 本部の仕入れ具合にもよる。こちらの一存では 決められない。」

店舗5 「つかもとストア」(茨城県)の応答連絡会もしもし、こちら照射食品反対連絡会と申します。

返答 ウチでなく、流通を許可してるところへ言ってよ。

連絡会 お役所へ、ですか。

返答 そうだね。

連絡会 もちろん、厚労省へも言っています。 JA 士幌町の照射施設へも見学を申し入れしましたが、土壇場で中止にされました。

返答 とにかく、ウチでは消費者の希望に答えているだけ。


メリットのみを強調する「芽どめ」

このように、「新じゃが」が出回る前や出回り始めても、消費者の中には、「ひね」ジャガイモ(古いもの)を求める人(外食業者かもしれない)がいるようです。そうした消費者は、「芽どめ」というメリットのみに目がいって、「ガンマ線照射済」という小さい文字が目に入らないか、あるいは、その意味について、「安全性に問題はない」という士幌町農協や原子力産業界の広報、そして「国が認めたものだから」ということで、気にしないということのようです。

また、スーパーなど多店舗展開の店舗では、 本部や仕入担当、卸売業者の段階で品物が決まるので、私たちは、これからも本社社長や卸総本部に対して、販売中止を要望していかないと、 照射ジャガイモは出回ってしまうこともわかりました。

ともあれ、市民による監視活動が継続していることにより、照射ジャガイモの生産量は減り続けています。50年以上前、原子力礼賛の時代に構想された食品照射技術の安全性も有効性、必要性もすでに破綻しています。あと一押しです。一層の監視活動にご協力をお願いします。