厚労省との意見交換会 コロナを理由に開催が延期されたまま3年目に・・・

 私たちの予定した質問(概要)と、それに対する厚労省からの回答は、以下のとおりです。毎年続けてきた照射食品についての厚労省との話し合いがコロナ問題を理由に中止され、3 年目に入りました。当会からはオンラインでの会議もお願いしたのですが、具体的な日程調整に至らないまま、依頼からほぼひと月後に、質問概要についての回答をメールで受け取りました。

 以下の回答では、私たちが理解しているものと微妙な食い違いがあり、やはり直接会って話すことが必要です。 例えば、回答に「殺菌効果について研究したものではなく、放射線照射商業施設での管理手法などを検証しています。」というものがありました。この意味するところは何でしょうか。 厚労省はすでに放射線照射商業施設での管理手法について検証しているということなのでしょうか。この回答には、驚かざるをえません。安全性等の試験研究の先にあるはずの照射食品の商業施設の管理手法という、実用化方向に研究が進み検討されているからです。こうしたことが、行政の中で検討され、既成事実となっているとすれば重大な問題です。もし、直接会って意見交換していれば、このような独断的な研究が行われることはなかったでしょう。説明があり、齟齬がないように話し合われたと思います。例年通り、対面で4月~6月頃に厚労省と当会との意見交換会を持ちたいと考えています。

厚労省 質問の概要(意見交換会の開催依頼状)と、それへの回答

2021年 10月 27日質問に対する回答 2021年 11月 26日メール受領

<質問(概要)と回答>

【質問】

1 照射牛生レバー殺菌関係の研究(6年間)(注)について、2019年度のとりまとめの内容とその後の取扱いを知りたい。

(注)2013 年の年度途中から開始。表題は、 次のとおり。

「畜産食品の安全性確保に関する研究」(平成 25年-27 年度)」(2013-2015)

「畜産食品の生物学的ハザードとその低減手 法に関する研究」(平成 28 年-30 年度)(2016-2018)

 毎年行ってきている懇談会は、2019 年度は、7月19日、主婦連合会会議室で開催されました。その席上、厚労省の担当者から、(6年間の研究により)牛生レバーの殺菌が放射線照射で実用化できる見込みがついたので、来年度にも具体的に生レバーの放射線照射を認める検討に入る可能性がある(8.2~10 キログレイのガンマ線の照射によってサルモネラ菌の死滅を確認したとして、審議会にかけ食品安全委員会に諮問したいということ)という回答でした。

 前半の3年間の研究では、殺菌はできないことがその報告書で明らかにされていました。また、後半 3 年間の研究では、照射対象の肉の大きさを変えるなどして殺菌が可能かどうかを調べています。

 しかしながら、殺菌可能かどうかだけでなく、照射食品の安全性については、放射線を照射したことによる照射食品(この場合、照射牛肉)の毒性等の安全性、栄養、微生物等に係る健全性が確認されることが必須でが、このあたりについては十分な研究はなされていません。また、殺菌についても統計学の理論を不適切に援用するなど、不備が目立ちます。

【回答】

 照射牛生レバー殺菌関係の研究(6年間)については、次のとおりです。なお、2019 年度は、厚生労働科学研究事業ではなく食品基準審査課の食品等試験検査費にて事業を実施しており、殺菌効果について研究したものではなく、放射線照射商業施設での管理手法などを検証しています。

畜産食品の安全性確保に関する研究  https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/25632

畜産食品の生物学的ハザードとその低減 手法に関する研究総合 https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/27458

【質問】

そこで、次についても質問します。

(2)これらの6年間の研究成果をもって、薬事・食品衛生審議会、さらには食品安全委員会に牛レバーの殺菌を許可する方向で諮問しようとしているのかどうか。

【回答】

現時点において、薬事・食品衛生審議会へ諮問する予定はありません。

【質問】

(3)また、この6年間の研究の後継的な研究、または関連する研究はあるのかどうか。

【回答】

現時点において、6年間の研究の後継的な研究、または関連する研究を実施する予定はありません。

【質問】

2 その後、牛レバー禁止の解除を求める要望は(追加的に)あるのかどうか。あるいは、さらに研究を続けよというような要求はあるのでしょうか。私たちは、放射線照射食品を拡大する方向での研究には反対しています。

【回答】

現時点において、新たに牛レバー禁止の解除を求める要望、研究を続けよというような要求は把握しておりません。

【質問】

3 牛レバーや牛肉に放射線を照射すると誘導放射能が生じる可能性があるので、その実験をして発生を確認し、照射牛肉の禁止を再確認してもらいたい。照射食品に自然放射能を超える誘導放射能が発生する可能性を示唆する研究報告(注)があることから、この種の試験研究を照射禁止の再確認のために実施するべきです。

(注)宮原誠「X線並びにγ線を照射した食品に生じる誘導放射能」国立衛研報Bull.Natl.Inst.Health Sci.,125,107-118(2007)等

【回答】

1(2)への回答と同様。

【質問】

4 輸入監視、海外動向に関する情報について輸入監視で放射線照射食品について、違反事例はこの 2 年間はないとみられますが、海外動向に関して、特に中国での動向などがわかれば、知らせてください。

【回答】

令和元年度及び令和2年度において計9件の放射線照射に係る違反が確認されており、輸入時の検査強化等の措置を講じております。引き続き、モニタリング検査の実施等を踏まえ、新たな違反事例等を探知した場合は、必要な対応を図ってまいります。

(参考)

令和元年度輸入食品監視指導結果(該当部P29) https://www.mhlw.go.jp/content/11135200/000664225.pdf

令和2年度輸入食品監視指導結果(該当部P29) https://www.mhlw.go.jp/content/11135200/000824506.pdf

【質問】

5 北海道士幌町農協の直近の 2019 年度、2020年度の、照射ばれいしょの生産量を知りたい。

【回答】

2017年にも同様のご質問をいただいておりますところ、今回も同様の回答となります。厚生労働省は、照射を含め馬鈴薯の生産量を把握しておりません。生産量に関する問い合わせにつきましては、農林水産省にお尋ねいただきますようお願いいたします。

以上