照射直後のジャガイモは危険だ

3月10 日に照射したジャガイモが消費者から届いた。このジャガイモに幼葉ではない発芽が認められたので観察している。6月までに、写真のように芽が伸びた。6月22 日の厚労省の話し合いで担当者に見せると、「照射線量の不足ではないか」と言う。だが、線量不足では説明のつかない問題がある。

北海道の照射ジャガイモは9月から12 月中頃まで照射し て、春の発芽期に出荷する。この照射時期はジャガイモの約100 日前後の休眠期を計算して行われている。休眠期を過ぎると発芽するからである。

今回の3月10 日に照射されたジャガイモは、休眠期が終わって、発芽し始めていた。芽の出方は幼葉でなく写 真のような針状の発芽である。士幌町農協は4月に入っても 500 トン照射しているので、このような発芽をする照射ジャガイモを買わされている人がいる。

問題は照射してすぐ売り出されていることである。

照射された直後の食品は励起状態で危険である。さらに照射されたジャガイモは放射線のエネルギーでジャガイモに未知の物質や酸化物や過酸化物、活性酸素(発がん)、最近ではシクロブタノン(発がん)もできることが分かっている。

1966 年の『食品衛生学雑誌』に照射食品を推進してきた 米国陸軍のネイッテック研究所の「食品照射の安全性試験で得られた好ましくない所見」という表がある。これを見ると 1963 年までに照射小⻨で甲状腺炎(イヌ)、オレンジで成 ⻑抑制(ラット)、ベーコンで寿命短縮(ラット)、ニンジンで成⻑率減少(ラット)、牛􏰁で繁殖率減退(イヌ)などが報告されている。この結果は照射食品の推進にはまずいことであった。これは放射線を照射直後の励起状態の飼料のた めではないかと考えたと思われる実験が行われた。ミシガン大学のブラウネルらやコーネル大学のマッケイらは照射食品を3ヶ月貯蔵してから実験を始めた。すると今まで起きていた甲状腺や心臓の異常が出にくくなったのである。この報告は各国の研究者に影響を与えた。

1968 年に米国の食品医薬品⻑(FDA)は陸軍より申請 されたハムと許可していたベーコンで繁殖率、死亡率など大き な異常があるとして禁止した。この禁止は世界中にショックを 与えた。

これ以降、照射した飼料は3ヶ月間放置されることになった。 日本で行われた􏰂物実験も3ヶ月経ってからラットやマウスに 与えることになった。当時照射食品研究に関わっていた筆者も、3ヶ月放置する理由を聞いたときこのような説明を受け、実験に使うサンプルは収穫後 2 週から 6 週で照射していたことを覚えている。しかし、照射ウインナーは3ヶ月も放置できないし、いくら窒素を充填した袋に入れて照射しても危険だと思ったことを覚えている。

さて、今回の異常な発芽はジャガイモの芽の細胞が分裂しかかっているときに強い放射線を浴びたので、DNAの修復をする暇なく異常な分裂を続けたため写真のような発芽になったと考えられる。

士幌町農協が注文に応じて勝手に照射時期をずらしているが、安全を証明するデータがなく重大な問題である。この照射直後のジャガイモを消費者に販売することはさらに危険である。 厚労省はこの照射直後の危険性について調査し、士幌町農協に指導する必要がある。

照射することが危険であると分かってきているのに、照射直後の励起状態のジャガイモを消費者に売るのは危険極まりない。こうした勝手に照射時期を変える農協は信頼できない。ジャガイモへの照射をやめるべき時期が来ている。(里見宏)