四国電力が照射食品を広報

折り込みで各戸に配るリビング紙に記事

四国4県で発行されているフリーペーパー『リビングまつやま』『リビングたかまつ』(2017年10月28日号、リビングえひめ新聞社)、『 K+ 』(高知新聞 社)、『さらら』(徳島新聞社)に、「食品照射のこと、教えて!」と題する市川 まりこ氏へのインタビュー記事が載りました。四国電力提供による広告記事です。

インタビューを受けている市川まりこ氏が代表を務める「食のコミュ二ケーション円卓会議」(以下、円卓会議)は、食品照射や遺伝子組み換えについて、安全なものとして消費者への宣伝活動を行ない、行政に推進を求める要請までしている団体です。

インタビュー記事は、生レバーへの照射も取り上げて、食品照射の安全

性と実用性を宣伝したもので、「放射線を使えば食品の温度がほとんど上

がらない上に、色・香り・栄養素もそのまま保たれる」「あてた放射線は、不要な菌を殺して食品を通り抜けていきます。つまり、食品に残らない」などと書かれ、不正確で読者に誤解を与える内容でした。

照射食品反対連絡会では、昨年11月に四国電力に対して公開質問状を送っていますが、回答はありません。地元の「コープ自然派しこく」(以下、コープ自然派)でも四国電力に公開質問状を提出しましたが、四国電力に持参した際に口頭なら回答すると言われ、後日、意見交換の場が持たれました。意見交換の模様(抜粋)とインタビュー記事の問題点についてお伝えします。

●「香りが保たれる」は市川氏らの「実験」が根拠

牛レバーへの照射に関しての、「放射線を使えば食品の温度がほとんど上がらない上に、色・香り・栄養素もそのまま保たれるのです」との記述については、以下のようなやり取りでした。(=コープ自然派、=四国電力)

厚生労働科学研究でも臭気成分発生が報告されており、香りが保たれるという記述は間違いでは。

市川氏の公開実験で色、香り、栄養素は変化なかったと聞いている。

根拠となる実験データなどはあるのか。

手元にデータはないが、市川氏の実験は2012年7月12日付産経新聞に掲載された。

2012年7月12日付産経新聞には、円卓会議が日本原子力研究開発機構の協力の下に実施した「実験」のことが載っています。しかしその内容は、冷凍及び解凍状態で照射された生レバーの色と匂いを円卓会議メンバーなど17名で試したというだけで、目隠しテストだったか等も不明です。匂いの感じ方は人によって大きく差があり、居合わせた人のテストは感想の域を出るものではありません。「全体としては“非照射と同じ”が大半だった」と、中には違いを感じる人がいたことも書かれていますが、その人数等は書かれていません。このような実験・記事はとても根拠とは言えません。この後、コープ自然派は四国電力側に実験条件の詳細を尋ねましたが、「安全と認められている基準で行われたと聞いている」「被検者の選出等について、当方では把握していない」等と四国電力は全くの請売り状態であることがわかりました。

●「放射線は食品を通り抜ける」の誤りをはぐらかし

次に「あてた放射線は、不要な菌を殺して食品を通り抜けていきます。つまり、食品に残らない」との記述については、以下のようなやり取りがありました。

厚生労働科学研究で発がん誘導のシクロブタノン類が検出されており、トランス脂肪酸も生成するのでは。

厚労省の基準では問題なく、間違いではない。

食品照射によって食品中に放射線分解生成物が生じ、その中でも発がんプロモーター作用のあるシクロブタノン類が問題になっていることは、少しでも関心のある人には常識です。菌を殺す以外には通り抜けて何も起こさないように書くのは、明らかな間違いです。四国電力も知らないはずはなく、厚労省の基準を盾に取った説明は明らかなはぐらかしです。

●浮き彫りになった電力会社の食品照射推進姿勢

前号でお伝えしている通り、薬事・食品衛生審議会食品規格部会で「科学的知見が不足している」とされ、厚労省はシクロブタノン類の毒性などの追加データを業界に要請していますが、未だ提出されていません。

市川氏はインタビュー記事で「消費者に選択の機会がない」と食品照射の拡大を主張しますが、安全性の懸念という、選択の前提となる大切な情報を消費者に伝えずに、選択ばかり言うのは、無責任な押し付けです。

四国電力が広告料を払ってまでこうした記事を載せるのは、「原子力ムラ」の狙いそのものにほかなりません。身近な食品にも使われるとの安全イメージを出したいのです。そのためにも、食品照射を推進したいのでしょう。

私たちは、食べ物への放射線照射は認めません。

照射ジャガイモの販売中止要請と質問 当該スーパーに文書を出しました

食品への放射線照射は多くの危険性が指摘されています。国は安全性について「問題ない」と言っていますが、根拠にしているデータは40年前のもので、その後の研究によって照射食品の問題は明らかになっています。例えば、照射により食品中に2-テトラシクロブタノンという化学物質ができます。この物質には発がん性が確認されています。また、照射食品を研究開発したアメリカ軍が所有していたデータを厚生労働省の研究機関が3年間かけて調査し、「照射した食品から、2~3倍の放射線が出るようになる」という新事実を2007年に報告しました。このように照射食品には食べものの安全性という面でも多くの問題があります。当会が配布しているリーフレットを同封させていただきました。

今回の情報提供者は、貴社が常日頃より消費者のために新鮮で美味しい野菜や果物を安価で販売し、地元に貢献していらっしゃることに感謝しています。それゆえに照射ジャガイモという安全性に不安のある商品が売られていることに驚き、残念がっております。つきましては、貴社には照射ジャガイモの販売中止をお願いするとともに、下記の質問にお答えください。

1.照射ジャガイモ(芽どめじゃが)の販売を停止していただけませんでしょうか。

2.当該店以外の貴店舗でも照射ジャガイモを販売していますか。販売している場合、どの店舗ですか。

3.照射ジャガイモを販売開始したのは何年前からでしょうか。

4.士幌町農協は照射の注文を受けてから、照射ジャガイモを生産しているようです。貴社はジャガイモ

への照射を依頼し、販売されていたのでしょうか。

5.照射ジャガイモを販売することになった経過をお知らせ下さい。

6.照射食品について貴社の見解をお聞かせください。

以上

『リビングまつやま』の記事