2012年7月28日
厚生労働大臣
小宮山 洋子 様
照射食品反対連絡会
代表世話人 和田 正江 (主婦連合会)
同 飛田 恵理子(東京都地域婦人団体連盟)
同 真下 俊樹 (日本消費者連盟)
同 里見 宏 (食品照射ネットワ-ク)
生レバーの放射線照射研究は、税金のムダ使い―中止を求める緊急申し入れ
7月27日毎日新聞報道によると、27日に貴職は、国立医薬品食品衛生研究所(東京)等の研究者らの「牛の生レバー」の放射線照射殺菌の研究申請を認め、約1000万円の研究費補助金を採択したとのことです。
食品への放射線照射は、食品衛生法で禁止されていますが、そもそも、食べものに対して、0.1キログレイ~50キログレイにも上る放射線(ガンマ線)を照射しようということ自体、原子力推進の発想から生まれたものであり、認められません。
100歩譲って、放射線照射食品の有用性・安全性をみてみようとすれば、これまでの試験研究により、牛肉への放射線照射は実用的ではなく、ましてや生肉で食べようという生レバーへの放射線照射は有用でも安全でもなく、微生物学的にも健全性が保てず、実用化はとうてい無理であることは火を見るよりも明らかです。
しかも、「レバ刺し」という「生」の「刺身」は、文字通り「生であり、新鮮」「臭みがない」からこそ、一部の人に好まれて食べられてきたのであり、すでに試験研究で明らかなように、放射線照射特有の照射肉の臭いがおおよそ5キログレイ以上では発生して食する気にならないことは明らかであることから、この研究の目的自体の妥当性はありません。
具体的には、日本では1967年から科学技術庁(当時)で試験研究が行われた6品目の中にウインナーソーセージが含まれていましたが、その試験研究においては、3キログレイと5キログレイの照射で、色が退色して、目的の殺菌はできず、菌は生き残ってしまいます。そして、7日から9日後には菌が増えてネトが出て腐ってしまうという結果が出されています。また、アメリカで、航空宇宙局(NASA)が、宇宙飛行士用の食事用に照射した食品は臭くて食欲が湧かず、食べられないことで中止されHACCPに切り替えられたという話は有名です。こうした照射臭の出るものは、たとえ工夫されたとしても、「レバ刺し」という微妙で鮮度の要求される「料理」に使える実用的なものにはならないでしょう。
微生物学的安全性の面からは、滅菌するにはゆうに30キログレイ以上の照射を要し、10キログレイ程度の殺菌では残った菌が繁殖する可能性があると同時に、「照射済み」ということで取り扱い方に過信が生じることになるとすると、いっそう深刻な問題が発生しかねません。 また一般に、食品への放射線照射には、照射により特有の分解生成物であるシクロブタノン類の発ガン性や慢性毒性などの試験研究がなされていない(ドイツでの実験は、発ガン性増進についてのみ)ということがあり、これらをはじめとする安全性確認のためのデータは不足していることは、まさに、貴職(薬事食品衛生調査会規格部会及びその事務局)が2010年5月に認めているところです。
私たち消費者国民は、食べ物に電離放射線を照射することを認めません。原子力推進勢力と結びついたごくごく一部の「消費者」を語る人々が原子力推進のために行おうとする、このたびの「生レバーの放射線照射」の殺菌効果等の試験研究助成は、税金の無駄遣いの何ものでもありません。研究申請を採択したことに抗議し、ただちに採択を撤回し、試験研究への助成を中止するよう申し入れます。
この件について、文書にて回答をおねがいいたします。
【参考】 照射食品に反対する主な理由
1.人の健康を損なうおそれがある。
2.放射線照射生成物についての調査がなされていない。特に揮発性物質の慢性毒性、発がん牲、催奇形性実験など重要なものが行われていない。
3.照射臭やビタミン低下など食品の質を低下させる。
4.照射された食品の照射線量・回数を調べる方法(検知法)がない。
5.検知法が完成していないので有効な管理・監視ができない。
6.照射ベビーフード事件のような悪用・乱用の危険が回避できない。
7.雑菌が多いなどの不衛生な照射前の状態を照射で覆い隠すおそれがある。
8. 照射食品のニーズはほとんどなく、照射を認める緊急性も必要性もない。
9.世界の多くの国が照射食品から撤退している。米国では照射ひき肉は反対が大きく、実際には使われていない。
10.照射施設が多くできれば被曝事故が起きる。(士幌農協で被曝事故あり。)
11.照射施設の放射性物質は管理が甘く、テロの対象にされる危険がある。
12.消費者に利益のない照射食品を原子力産業界や一部の食品業者のために認めることは誤りである。
以上