2013年6月21日

内閣府特命担当大臣

(消費者及び食品安全、少子化対策、男女共同参画)

森 まさこ 様

照射食品反対連絡会

代表世話人 和田 正江 (主婦連合会)

同 飛田 恵理子(東京都地域婦人団体連盟)

同 真下 俊樹 (日本消費者連盟)

同 里見 宏 (食品照射ネットワ-ク)

食品安全委員会報告書

「アルキルシクロブタノン類を指標とした照射食品の安全性解析」で削除された根拠データ実験の公開申し入れ

私たちは再三にわたり、大阪府立大学から提出された報告書「アルキルシクロブタノン類を指標とした照射食品の安全性解析」の全面公開を要求してきました。

2013年3月6日、食品安全委員会事務局の新本課長より「3月15日(金)に食品安全委員会のホームページに報告書を掲載します。それをもって公開とします。」旨の連絡がありました。しかし、公開された報告書はすでに国会議員に提出された報告書(6部236ページ)のうち最初の第1部にあたる(81ページ)だけで、それに2012年7月23日に「食品健康影響評価技術研究課題の事後評価結果について」と題された資料の1ページ目を研究要旨として添付したものです。

問題はこの「まとめ」の根拠となる残り5部の実験報告書をすべて割愛し、正式報告書としていることです。

これまでの経過からみて必要以上に情報を隠す食品安全委員会事務局の判断に消費者は大きな疑惑を感じ、公開の申し入をしてきました。(注1)

また、食品安全委員会は実験報告データを公表しない理由として「研究者が学会誌等に公表するまで」としてきました。研究者の利益をここまで優先する態度は、国民の健康を守るという本来の食品安全委員会の目的とかけ離れたものです。(注2)

食品安全委員会は4千万円もの研究費を出したのに欠陥のある報告書を国民に信じろという姿勢はあまりにも非科学的で納得できません。

私たちはこの食品安全委員会の報告書の件についてはすでに厚生労働省とは話し合いをいたしておりますが、基本は食品安全委員会がすべてを公表し国民の評価を受ける必要があると考えております。

食品安全委員会の「国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識のもと」という設立趣旨に反しているだけでなく、特に、本研究のテーマである発ガンという重要な問題を打ち消すという実験データであるのに、根拠データを公開しないまま、正式な報告書とする非科学的なやり方を国民は認めません。よって下記のように申し入れをいたします。

―――――――― 記 ――――――――

1.大阪府立大学から提出された報告書「アルキルシクロブタノン類を指標とした照射食品の安全性解析」で割愛された実験報告書をすべて公表するよう、担当大臣として指示してください。

2.報告書の再吟味を行ない、誤りについては正誤表を付け、なぜそのような間違いを犯したか公表してください。

3.大臣として事実確認の上、なぜ、このような情報隠蔽が行なわれたか調査のうえ、二度とこのような隠蔽が起きないよう事務局をご指導ください。

(注1)この報告書は食品安全委員会が3年間で約4千万円の研究費を出し、2012年3月に提出された。食品安全委員会は調整会議で検討後公表するとしていたが、国会議員や消費者団体に出された報告書は236ページ中127ページ(53.8%)が黒塗りという異常なものでした。黒塗りの理由が特許などという理由でなく「学会誌にこの研究が掲載可能になるまで」という研究者の個人的な理由であった。

国の研究費を使って行われた研究が、食品安全委員会事務局の裁量で研究者個人の業績に便宜をはかることは食品安全委員会の設立趣旨からも逸脱している。

(注2)他の研究者の実験を追試し、しかも否定する結果となった場合、権威あるとされる専門誌は査読が厳しくなる。しかも、今回の大阪府立大学の実験は発がん物質を与える方法(順序)がパスツール大学の実験と異なっており、追試と認められない可能性が高い。こうした問題を含む論文が権威ある雑誌に掲載されるまでということになると、公開されないかもしれないと食品安全委員会の事務局担当者は当会との会議で発言している。これは税金を使い食品安全委員会が委託した本質を逸脱しており、事務局のこうした偏った裁量は国民の安全を守る立場と相容れないものであり、法的にも問題があると考えられる。