東日本大震災・福島原発事故から3年 日本有機農業研究会の取組み

―会誌『土と健康』掲載事項を中心に―

2011年 ※敬称略

3月11日 大地震・大津波を日本有機農業研究会全国幹事会の会議中に知る(福井県越前市)

3月12~14日 第39回日本有機農業研究会大会総会「全国有機農業の集い in 越前市―“いのちを育む有機農業”」(福井県越前市) 3月12日、地元紙号外で「福島第一原発、炉心溶融―メルトダウン」報道。大会アピール時に、日本有機農業研究会、被災地への支援・義援金呼びかけ。12日夜の「環境と平和の語らい」を原発問題に変更、槌田劭、田坂興亜らのコメントを聴く。

3月13日 第39回日本有機農業研究会総会、「緊急アピール すべての原発を廃炉に!」を特別決議。「 有機農業は『いのちの原理』に基づく。だが、原子力発電は『いのちの原理』に反することがはっきりした。原子力と生きもの・人類は共存できない。ただちに原子力開発を中止し、すべての原子力発電所を廃炉にすべきであると訴える。」(要旨)

以降、関西の反原発集会(4月6日)など各地で同アピールを紹介、賛同募る。

3月21日 東日本大震災対策の会合開催(於本会事務所)。26日 日有研、会員向け「東日本大震災にあたって」(理事長)、支援呼びかけの文書発信。27日、日有研理事会、対策など検討。会員生産者・団体による被災地への有機野菜送付など支援活動始まる。海外有機農業関係者・団体からもお見舞いメール、義援金など届く。4月10~11日、日有研事務局(上杉幸康)が現地会員を訪問。4月15日 原子力発電の廃止・浜岡原発等の即時停止を菅直人内閣総理大臣に申し入れ。5月2~3日、日有研事務局、福島、仙台など訪問。DVD『それでも種を播く』撮影に協力。

5月17日 日有研副理事長らの呼びかけで、福島県有機農業研究会、福島県三春町で福島県会員集会開く。放射能汚染の苦悩などをそれぞれが訴え。関東の生産者が苗類を持参し、譲り渡す。

5月21日 理事会、大震災関係の対応について有機農業関係団体(全国有機農業推進協議会、IFOAMジャパン、本会など)で協力すべきところは協力していくことを確認。

5月25日 日有研会誌『土と健康』4・5月合併号で「東日本大震災と原発事故 被災地から」を特集、槌田劭「脱原発・共生の社会へ―放射能汚染の実態を直視して、支え合う道を」、大内信一「ほうれん草に励まされて」、橋本公一「作付け可でも深刻な影響」、魚住道郎「『提携』で培ってきた協同の力で―救援活動と原発のない社会を目指す」、日有研事務局「東日本大震災・原発事故への対応について」など掲載。

6月5日 河田昌東招き、緊急講演会「チェルノブイリからみた福島第1原発震災」を日有研青年部が開催。チェルノブイリ救援活動の経験を踏まえ、福島の現状、対策などについて話をきく。(会誌『土と健康』2011年8・9月合併号に掲載。後に『チェルノブイリと福島』刊行)

6月25日 会誌6月号「東日本大震災と原発事故 被災地から」(続き) 浅見彰宏「これから進むべき道は、はっきりしている」、北山弘長「自問自答、ジレンマの日々」掲載

7月25日 会誌7月号「東日本大震災と原発事故 被災地から」(続き) 菊池祐実子「顔をあげて」、矢部博和「放射能について学ぶ必要」など掲載。

8月3日 農林水産省「高濃度の放射性セシウムが含まれる可能性のある堆肥等の施用・生産・流通の自粛」通知について、説明会に出席。有機農業土壌の優位性研究を要請。(農林水産省、7月25日付で自粛要請、8月2日付で、肥料等の暫定許容値400Bq/Kgを通知)(会誌8・9月号)

8月6日 本会、二本松市有機農業研究会、船引有機農業研究会など訪問(並木芳雄理事、事務局、義援金などを渡し見舞う)。なお、義援金の使途について会誌8・9月号に報告。

8月27日 日本有機農業研究会設立40周年記念シンポジウム「大震災・福島事故を乗り超える有機農業」開催(於日本青年館国際ホール)。野中昌法新潟大学教授、日本史上最大最悪の公害と位置づけ、田中正造の文明観から話を始める。大内信一二本松有機農業研究会代表、「豊かな自然が破壊された。地産地消(学校給食への供給)は壊され、「提携」は半減。葉を広げたホウレンソウが降下する放射能から土を守ってくれた」。舘野廣幸、原木しいたけに被害。魚住道郎、有機農業土壌におけるセシウム固着、深耕による拡散など仮説を作物・土壌検査値を示して、乗り超える道を示唆(会誌12月号)。星寛治「有機農業がめざす脱原発と自給・共生社会」(会誌10・11月号)。

9月25日 母乳調査・母子支援ネットワーク(村上喜久子)「福島原発震災事故で、母乳からも放射性物質を検出」(検出値調査結果)を公表(会誌8・9月号)。

会誌8・9月号、「東日本大震災と原発事故 被災地から」(続き) 杉山親嗣「震災は、自立の見えない暮らし方への警告」掲載。

9月26日~10月5日 第17回IFOAM世界大会―オーガニック・イズ・ライフ(有機農業はいのち・くらし)(於 韓国・南揚市)で、日有研代表団報告・交流。本会議で魚住道郎副理事長、大震災お見舞いへのお礼、放射能汚染へのお詫び、決意「大震災を乗り超え、森里海・流域自給と提携、協同の精神で再生」を発表。他に「提携」分科会など主催(若島礼子、吉野馨子、本城昇、久保田)。

11月7~11日 農林水産省庁舎「消費者の部屋」有機農業展参加で、魚住副理事長、「放射能汚染と有機農業腐植がつなぐ森・里・海」について説明。

11月19~20日 「国際有機農業映画祭―それでも種を播く」に参加協力(会誌2012年1・2月号)。

11月25日 会誌『土と健康』特集「創立40周年に寄せて」発行。会員の多くが東日本大震災・福島原発事故についても寄稿。

12月3日 日有研公開研究会「放射能汚染と有機農業」開催(於 茨城県石岡市)魚住道郎、安部豊、布施大樹らが取組みを報告(会誌1・2月号)。

12月4日 「こどもたちを放射能から守れ 福島のたたかい」の上映と佐藤幸子さんの講演会開催(青年部)(会誌3月号)。

12月7日 「もうだまされない、未来を奪う原発、TPP」に参加。

12月11日 夏の幹事会での議論を踏まえ、「森・里・海流域自給放射能共同検査室」の設置を決める(常総生協が協力、Naiシンチレーションカウンター、Nai食品土壌放射能測定システム導入済み。2012年3月にゲルマニウム半導体検出器導入)。会誌12月号掲載。

12月25日 会誌12月号、魚住道郎「里山(雑木林)の落ち葉の放射能対策とその成果」掲載。

2012年

2月4~5日 「第19回火の国九州・山口有機農業の祭典 in くまもと」(同実行委員会主催)(於 熊本県)を日本有機農業研究会40周年記念行事の一環として開催。テーマ「どぎゃんすっと?! 『いのち』と『有機農業』」。(会誌4・5月号)

2月25日 青年部主催「有機農業入門講座2012」、舘野廣幸「汚染社会を有機農業で生き抜く」講演(会誌6月号)。

3月10~11日 第40回日本有機農業研究会大会総会「全国有機農業の集い in 西中国―あったかゆうき 本当の豊かさと協同を求めて」(於 広島県神石高原町)を開催。大会アピールで、広島から「世界の原発を廃炉に!」に向かって行動しようと呼びかけ。総会で「伊方原発再稼働反対!」決議。(会誌4・5月号) 分科会「原発事故・放射能と有機農業」(会誌6月号)。

3月25日 会誌3月号「東日本大震災と原発事故 被災地へ」(続き) 江原広美「岩手県大槌町での炊き出し」、大崎正治「宮城県気仙沼市の見聞報告」ほか掲載。本会生産部、「東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う損害賠償請求について」参考記事掲載(会誌3月号)。

5月5日 「海の見えるりんごの里で交流会」(主催 福島県有機農業ネットワーク)に参加。畠みつ子「新緑や鳥の声に励まされて、りんごの摘果作業」(会誌6月号)。

5月27日 「『東海第二原発訴訟』提起前 決起集会―重大事故の危険性が高まる東海第二原発の老朽化を問う」(主催 同原告団、共催 日本有機農業研究会)

7月25日 会誌7月号、星寛治「卒原発を地でゆく流れ 山形県のエネルギー戦略」、「森・里・海放射能共同検査室」発足のおしらせと賛同呼びかけを掲載。

7月29日 「難儀な時代をいかに生きるか!」、『土と健康』友の会が開催(於 大阪市)。大内信一「福島の現状と有機農業農家による真実の叫び」ほか。

9月9日 日本有機農業研究会夏のシンポジウム「今こそ、有機農業で脱原発社会を!」開催(於 東京都渋谷区) 講演1・津村昭人(元農林水産省農業環境技術研究所アイソトープ研究室主任研究官)「イネと土壌の放射性セシウム汚染―研究成果から 福島原発事故と有機農業を考える」(会誌11月号)、講演2・島村善行(島村トータル・ケア・クリニック院長)「食べものと健康―汚染社会を生き抜く」(会誌2013年3月号)、3・パネルディスカッション「福島と共に歩む」 大内信一、魚住道郎ほか(会誌12月号)。

9月25日 会誌8・9月号、菅野正寿「有機農業が拓く持続可能な地域づくりへの道」掲載。

10月7日 夏の幹事会での提案を踏まえ、理事会で「福島東北有機農業支援委員会」の設置を決める。同委員会は12月20日に発足(責任者魚住副理事長)。大震災・原発事故で破壊・汚染された田畑・山林、海で暮らす人々とつながり、一歩一歩進んでいくために、有機農業支援活動として具体的・実践的に力を必要とする現場に結集することが目的。第一回は、農作業(夏野菜の畑の片付け、植え付けなど)、また、深耕のためにプラソイラー・ロータリー耕作などの実施と農家との交流。なお、福島での農作業・放射能対策作業は、第一回以降、通称「猫の手」応援隊として、実施回数を重ねている。

11月7日~8日 日有研市民公開研究会・「福島東北有機農業支援活動」開始。二本松有機農業研究会で第1回「猫の手」応援隊(農作業と放射能対策、農家との交流)を開催 小出すま子「報告 福島・東北有機農業支援活動 農作業と放射能汚染低減対策、そして農家との交流」、渡辺文男「福島の苦しみを日本の社会全体で共有し、政治が責任を持つべき」ほか(会誌2013年1・2月号)。

11月25日 会誌11月号 吉永剛志(使い捨て時代を考える会)「福島の子どもたちの京都での春・夏保養キャンプ」掲載。畠みつ子「福島から」掲載。

2013年

3月2~3日 第41回日本有機農業研究会大会総会「全国有機農業者と消費者の集い in 静岡―いのち・食・土 オーガニックライフはステキ」(於 静岡県富士市)開催。分科会「放射能汚染の中での有機農業」、馬場利子(静岡市/プラムフィールド代表)「市民自ら測定を行い、放射能を観察する」ほか。第41回日有研総会、「いのち」「食と農」「土と自然」「平和」を大切にする社会へ―森・里・海の連携による「流域自給」と「提携」を協同の精神で―の活動方針決める(総会メッセージとして発表)(会誌4・5月号)

3月25日 会誌3月号、中屋敷宏「原子力社会からの脱却―個人主義文明を超えて」掲載。

3月31日 『福島第一原発事故が有機農業「提携」活動に与えた影響調査報告』(日本有機農業研究会・國學院大學経済学部協力)発表 有機農業と「提携」の特徴を踏まえたアンケートとヒアリングをとりまとめ(久保田裕子・吉野馨子・今井優子)

4月20日 第8回健康むら21ネット全国大会、大阪で開催 講演 橋本行則(橋本行生内科/熊本・近畿免疫療法研究会)「あなたこそ あなたの主治医―低線量内部被曝とダメージ・コントロール」(会誌8・9月号)。

5月25~26日 福島東北有機農業支援委員会、「春の福島二本松の有機農園に行きましょう!」(第2回「猫の手」応援隊の活動)開催 参加者の感想―村井和美「和綿の種を!」、吉川直子・榮一「国、東電の無責任な対応に怒り」、岩本真弓「江戸時代の蔵に歴史の重み」など(会誌8・9月号)

6月25日 会誌6月号、「オープン ふくしまオルガン堂」掲載

7月25日 会誌7月号、丹羽牧人「群馬県高崎市から 放射能汚染の実態とその対策」掲載。

8月18日 日本有機農業研究会夏のシンポジウム「田中正造の思想と有機農業の未来」(於 茨城県古河市)田中正造の足尾鉱山鉱毒事件との闘いを赤上剛(渡良瀬川研究会副代表・田中正造研究家)の講演の後、田中正造の思想と脱原発・脱農薬で築く未来についてパネルディスカッション 黒沢常道(有機農業ネットワークとちぎ副代表)、魚住、大石ほか。

9月8日 「原発事故後の課題と日本の未来を考える集い―いのちの原理と私たちの暮らし方」、全国健康むら21ネット・日本有機農業研究会『土と健康』友の会が開催(於 大阪市)。

小浜市明通寺中嶌哲演住職「若狭を第二の福島にしてはならない」講演(会誌2014年3月号)、槌田劭「いのちの原理で未来を拓こう」、村上真平「自然と共にあった福島県飯舘村の生活―原発事故が奪ったもの」講演。

10月19日 日有研市民公開研究会 田坂興亜「今、農薬問題とは」、トーク「有機農業運動と脱原発活動の新たな構築に向けて」。東海第二原発廃炉訴訟、福島東北有機農業支援活動など。

11月25日 会誌10・11月号、大内信一「福島二本松からのお礼と報告」掲載

12月4日~5日 第3回福島東北有機農業支援活動「猫の手」応援隊、人参収穫、秋作片付け(トンネル型支柱撤去等)など農作業実施。研修会にて「福島有機農学校」開設を提案、設置決める。

2014年

2月23-24日 第42回日本有機農業研究会大会総会「全国有機農業者と消費者の集い in 岩手―農業の未来を賢治の地イーハトーブで語ろう」(於 岩手県雫石町)開催。分科会「福島原発事故と有機農業の土の力」(野中新潟大学教授、菅野正寿福島県有機農業ネットワーク代表など報告)、「脱原発を地域住民運動から考える」(中屋敷宏弘前大学名誉教授、永田文夫・三陸の海を放射能から守る岩手の会、島津勢津子・岩手有機農業研究会・クランボンの会など報告)。分科会「出会う・つながる―共に学ぶ農と自給・環境」(大内信一「福島の夢と課題」―「提携で4割の人は残った。それを我々は支えにしながら、またその他全国から福島の農業を守りたいという人もいる、脱原発と農業を守る、それを車の両輪にして進まなければならない」、並木芳雄「3・11によって『安全』の再考が迫られた。環境すべてと世の中をみていく」、槌田劭「人間的な関係を基本に。共に歩む、多様性をだいじにするいのちの原理に立つ」など報告)

5月24~25日 「日本有機農業研究会 福島有機農学校」(「猫の手」)春の催し 田植え交流、ネギ畑草取り、キュウリ定植、ナス誘因など、学習会「ドイツの自然エネルギー」実施。

※各地の有機農業研究会がそれぞれ活動しています(本稿未掲載) ※会誌号数は、記事掲載あり。(久保田裕子記)