今年も大学祭で照射食品の宣伝...東工大大学祭見学報告

2017 年 10 月 7 日(土)、毎年のように照射食品の宣伝が行なわれている東京工業大学の「工大祭」の見学に訪れました。北 1 号館の「先端原子力研究所」の研究室公開コーナーでは、原子力や放射線についての初歩的な説明のパネルの後、原子炉の 1/100 模型の展示と合わせて、中性子が原子核に衝突して核分裂を起こすことやプルトニウム増殖炉の原理などをゲーム化したパソコンゲームを来場者が楽しめるようにしてあり、原子力に親しめるようになっている反面、事故の危険性や放射線の有害性については

触れられていませんでした。

同じ部屋の片隅で、照射食品を宣伝している「ウイメンズ・エナジー・ネットワーク」の展示が行なわれていました。見学者はまず、将来どのようなエネルギーが使われるか、ということを選んで投票するという投票板に投票シールを貼るように促されます。研究室の学生たちが先行投票したせいか、原子力がもっとも多く投票されていましたが、福島第一原発の苦い経験をした国民の感情とは全くかけ離れていると思いました。

「ウイメンズ・エナジー・ネットワーク」の展示。

パネルには「食べ物から放射線が出ているのです」と題して天然放射性核種のカリウム 40 の説明、「わたしたちは毎日のくらしの中で常に放射線を受けています」と題して自然放射線の説明、「放射線についての基礎知識」と題して放射線と放射能の違いやガンマ線などの本質や利用分野等について説明がありました。テーブルにはガイガーカウンターが並べられ、塩化カリウムを含む代用塩などの放射線を図るようになっています。

これらの展示について、係の人に尋ねました。自然放射線のことが強調されているので、自然放射線が危ないと言いたいのか、自然放射線と比較したら原発事故の放射能汚染など大したことないと言いたいのか、展示の目的を聞くと、「こういうことを事実として伝えたいだけ」という答でした。放射線によって起こる影響としての発癌などを伝えないのか、と聞くと、「広島・長崎のデータから 100mSv 以下であれば明確な影響はない」と説明するので、発癌は確率的な影響であることを確認すると、「そういうことは承知していない」とのことでした。放射線の説明をするためにいる人が、その程度のことを知らないわけはないので、突っ込まれたらとぼける、という作戦のようです。話を変え、照射食品を宣伝した『わたしたちのくらしと放射線』のパンフが置かれていたの

で、放射線照射によって、食品に有害物質ができることについて聞いたところ、やはり「承知していない」ということでした。

今年は照射ジャガイモも配布しておらず、展示内容も照射食品を正面切って宣伝するものではありませんでしたが、照射推進団体が原子力工学の一部と連携して特に若い層に浸透を図っている様子がうかがわれました。

余談ですが、研究室の展示の中に汚染水からトリチウム(水素の放射性同位体=三重水素)を除去する技術についてのものがありました。学生に聞いたところ、教授が直々に説明に来られ、概要を説明してもらいましたが、100 倍、1000 倍に濃縮できるものということでした。福島第一原発ではトリチウムを含む汚染水が大量に溜まり、また青森県六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場では大量のトリチウムが海に流されていますので、大いに期待したいと言いたいところですが、逆に高濃度のトリチウムを製造することにもなるため、軍事転用の方が心配です。そのことを教授に尋ねると、政府が適切に管理しなければならない、とのことでしたが、原子力の負の遺産の処理の困難さを改めて感じました。

(報告=パルシステム東京・原)