厚労省試験研究で

放射線照射で牛レバ刺しに発ガン物質

シクロブタノン類」の発生を確認

2012年7月、厚労省は牛レバ刺しで病原性大腸菌、サルモネラ、旋毛虫等の寄生虫。E型肝炎などの危険から「牛レバ刺し」を禁止しました。しかし、照射推進派は「放射線で殺菌を」と厚労省に申し入れました。厚労省は平成25・26・27年度の報告書のうち25年と26年分を公表しました。

健康情報研究センター 里見 宏(Dr.P.H.)

●どのくらいの放射線を照射するのか

25グラムの牛肝臓とひき肉に4種類の菌を植え付けて90%が死んだ線量から、滅菌できる線量を7,000Gy前後と予測したと書いてあります。実験は25グラムの塊です。実際には5~6キロもある肝臓なら放射線量も増えます。「殺菌」に1万グレイから5万グレイ、「滅菌」には2万クレイから5万グレイの放射線が必要とされています。実験した研究者も「決定には確認実験が必要」としていました。

●照射で発ガン物質が増えていく

食物に放射線を当てると脂肪酸が変化して「シクロブタノン」と呼ばれる新しい発ガン物質ができます。今回も牛肝臓とひき肉で発ガン物質を確認。また、線量が増えると発ガン物質も増えていました。

●トランス脂肪酸の生成も確認

脂肪酸はトランス異性化が認められ増加した。トランス脂肪酸は血管に異常を起こすのでマーガリンなどトランス脂肪酸の規制が始まっています。照射はこのトランス脂肪酸も作っていました。

●照射臭あり

照射臭と呼ばれる変化は食品の重要な因子。照射による臭気成分はベンジルメルカプタン、フェニルエチルアルコール、スカトールが検出されました。食品のちょっとしたニオイが気になって食べられなくなったり、美味しくなくなったりします。スカトールは便の臭です。

■結論は―

この報告書でも照射で食品中に発ガン物質やトランス脂肪酸ができて食品の安全性が崩壊しています。照射により新しい物質ができて風味が変わり、食品としての価値も落ちています。推進派がデータを有利に解釈しても多くの消費者は受け入れないと考えます。

重要な誘導放射能について実験がなされていません。(説明;1943年、米陸軍は食品保存に放射線を照射する研究を開始した。しかし、一度許可になった照射ベーコンが禁止されるや(1968年)、照射食品の開発から手を引いていった。理由は照射食品から放射線が出ているためであった。莫大な照射食品の実験データは軍の機密とされた。)

今回の報告書から、食品殺菌技術として放射線照射は業界も受け入れないと判断できます。仮に業界が照射しても消費者は受け入れを拒否することは明確です。

説明

●CFU/ml

Colony Forming Unit の略称で菌量の単位。例として(コロニーを形成する能力のある単位数)20CFU/g または20CFU/mlとは1gまたは1ml中に菌が20個存在することを表している。

●殺菌と滅菌の違い

殺菌は菌を殺すこと。対象や程度を含まない概念である。滅菌はすべての微生物およびウイルスを死滅させるか除去する。確率的な概念からは菌数をゼロにすることはできないので、無菌性保証レベル(sterility assurance level:SAL)が採用される。 滅菌としての定義にはSAL≦10-6が国際的に採用されている。厚生労働省関係の研究所の研究者が米軍のデータの調査を実施(2002年から3年間)。その内容は大変重要なものである。

照射レバ刺しは危険

(厚労省報告より)

放射線を照射して殺菌すると―

1.レバ中にシクロブタノン(発ガン物質)ができる。

2.トランス脂肪酸ができる(心臓疾患)。

3.照射により照射臭が出る。生食に無理。

●報告に足りない確認事項

照射した食品から放射線が出るようになる(誘導放射能)

(説明;米陸軍の兵士に食べさせていた照射食品が禁止になる(1968年)。理由は照射食品から放射線が出ているため。莫大な実験データは軍の機密とされた。)

照射レバ刺しは、推進派がデータを有利に解釈しても、多くの消費者は受け入れないと考えられる。

平成25年度報告もくじ

1.諸外国における生食の生食実態に関する研究

国立医薬品食品衛生研究所

2.「畜産食品が原因の寄生虫性食中毒に関する調査研究」

岩手大学農学部 (畜産品中毒は馬のサルコシスティス、魚はアニサキス属、クドア、旋尾線虫、ウエステルマン肺吸虫など。2011年患者500名)

3.「放射線照射による微生物除去」

独)農研機構 食品総合 研究所(26、27年度分)

4.牛肝臓内の大腸菌の分布とその殺菌法の検討

大阪府立大学

5.高圧処理による牛肝臓中のEscherichia coli の不活化に関する検討

日本大学

6.高圧処理による牛肝臓の形態学的変化に関する検討

国立医薬品食品衛生研究所

委託;海外の食肉や内臓肉の生食実態に関する基礎的情報の収集支援業務報告書

三菱総研

平成26年度報告もくじ

1.海外における生食用食肉製造時の衛生管理実態に関する研究

国立医薬食研究所

2.畜産食品が原因の寄生虫性食中毒に関する調査研究

遺伝子検査法の検証とエゾシカ肉中の住肉胞子虫汚染調査

岩手大学農学部(50匹中48匹が陽性。下痢等を起こす)

3.牛消化管内の大腸菌群の分布状況

大阪府立大

4.「放射線照射による微生物除去」

独)農研機構 食品総合研究所(26、27年度分)

5.高圧処理による牛肝臓中のEscherichia coli の不活化に関する検討

日本大学

委託;海外の食肉や内臓肉の生食実態に関する基礎的情報の収集支援業務(その2)報告書

三菱総研