地磁気を感じるバクテリア 【H26基礎ゼミ内容の紹介】

MS-1とよばれる走磁性バクテリア(http://www.calpoly.edu/~rfrankel/mtbphoto.html)

体内にナノサイズの磁鉄鉱(磁石)を有し、その磁石で地磁気を感じて、北半球ではS極に向かうように、南半球ではN極に向かうように泳ぎ、

海水や淡水の堆積物表面からもぐり、酸化還元境界付近を住処としている生物。

Richard B. Frankel名誉教授により精力的に研究された。スケールバーは1ミクロン。

2014年の東北大学の基礎ゼミでは、この生物を仙台市内の沼で採取し、顕微鏡・電子顕微鏡で観察することを試みた。

ナノサイズの磁石の形と配列を観察し、磁鉄鉱の配列が2重になっていることを見出し、走磁性バクエリアではまれにしか起こさない細胞分裂の

可能性を議論した。この成果は基礎ゼミは発表会において、担当学生さんが最優秀発表賞の栄誉に輝いた。

1)どこで採取した?

→ 仙台市与兵衛沼にて。みなさんがお住まいの地域のどこにいるかは、探してみてください。

基本的に堆積物に酸化還元境界がみられるところでは、どこにでもいるそうです。

2)どのように採取した?

→ 写真のような柄杓を使い、小川の砂質堆積物を深さ5cmほど掘り起し、堆積物の色が黄色・オレンジ色(酸化状態)から灰色(還元状態)に

変わる境界を含めて採取して、丸口びんに保存した。

3)どのように観察した?

→ 研究室に持ち帰り、丸口ビンの外側(堆積物の少し上)に、100均で購入したネオジム磁石(直径5mmほど)のS極がびんに向くようにセロテープで止めて、

3分ほど待つ。その後、100均で購入したスポイトとストローを利用して、ネオジム磁石の近くの水を吸い取り、スライドグラスに一滴たらす。

接眼レンズ10倍・対物レンズ20倍の顕微鏡で観察。できることなら、対物40倍ならなおよい。

下記が水滴の境界を観察した時の動画。ピクピク動く黒い点が走磁性バクテリアである。磁石を近づけると黒い点が動き始める。

とてもかわいい。

4)どのように観察される?

→ 下記動画参照 磁石で生物をコントロールできるよ。

基礎ゼミでは、水滴の境界に磁性細菌を集めて、自然乾燥し、炭素蒸着後、電子顕微鏡で観察した。

2本鎖の磁鉄鉱が観察できる。スケールバーは1ミクロンである。

一般的に磁鉄鉱は8面の三角形からなる正八面体の形を呈するが、走磁性バクテリア中のひとつひとつの磁鉄鉱結晶は長方形に近い形である。

これは生物が関与する鉱化作用の特徴と考えられている。同じような形をした微小な磁鉄鉱は、火星隕石(ALH84001をググれば面白いよ)からもみつかっている。

ここでは、基礎ゼミでおこなった実験の一部を、簡単に紹介した。

中学あたりの自由研究には適切かもしれません。なにせ見ていてかわいいです。