高裁の考え方をざっくりと・・・。
(以下は、正確性より解りやすさを優先した書き方になっています。詳細については、専門家による論文等をご参照下さい。)【弁護人】コインハイブはPCを壊したり情報を盗んだりはしない。
【控訴審】この規定は「PCを守り情報を保護するための規定」ではなく、一般人のプログラムへの信頼を守るための規定だから、その対象は「PCを壊したり情報を盗んだり」するプログラムに限られない。
【一審判決】実行されていると表示されなければ、それは意図に反するプログラムだ。
【控訴審】一般的にPCを使う人は、実行されるプログラムの全ての機能を認識しているわけではないが、特に問題のないプログラムが実行されることは許容しているといえる。だから「表示されない=意図に反する」は誤り。「表示されないけれど走らせて良い」と許容するプログラムもあるはず。そして「隠れてこんなものを走らせることは認めたくない」というプログラムだけが規制対象になりうる。
【弁護人】コインハイブはJavaScriptで書かれているが、JavaScriptは普通にサイトに仕込まれている。みんな承諾している。
【控訴審】JavaScriptだから良いとか悪いとかじゃなくて、どう機能するかが大事。 他人の金儲けのために自分のPCが無断で使われる、報酬は分配されない、表示されない、拒絶の機会がない・・・そんなことを(マニアに限られない)一般の老若男女ユーザーが聞いたときどう反応するかを「脳内妄想」してみると、許容しないことは明らかだと思うけど・・。(「意図に反する動作」(刑法168条の2、168条の3))
【一審判決】サイト設営者に金が入ればサイトが発展する、処理速度はあまり低下しない、他人のサイトをハッキングして設定したわけではない、隠れて採掘することは賛否両論だった、警察の事前警告がなかった、といったことを考えると、不正性に疑問がある。(「不正な指令」(刑法168条の2、168条の3))
【控訴審】隠れて意に反するプログラムを仕込んだ利益でサイトを発展させようなんてダメ。他人のサイトをハッキング云々は「もっと悪い奴もいるから自分は無罪」の理屈で通用しない。賛否両論と言うけれど半数が「否」のプログラムを隠れて仕込むのは良くない。警察に言われるまでは悪いことをしてよいとは言えない。「処理速度が低下しなければ何を仕込んでも許される」なんて理屈はない。
【弁護人】:コインハイブが罪になるとは思っていなかった。
【控訴審】:被告人はこのプログラムがどう動くか理解していたから犯罪の故意がある。麻薬を所持した外国人が「日本では麻薬所持が罪とは知らなかった」と言うのと同じで通用しない。
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高裁は、表示がないこと、閲覧者が知る機会がないことをもって、「意図に反する動作」「不正な指令」を認定する要素としているようです。そうであれば、先進的なスクリプトを実装しようとする場合、それが先進的であるが故に(マニアでない)一般ネットユーザーの「意図に反する」か反しないか、「不正」とされるかされないかについて確証が持てないときは、「こういう処理のためバックグラウンドでCPU使わせてもらいます」表示などで身を守る必要がありそうです。